ハラスメントの種類とは?一覧表で紹介|2024年最新版
ハラスメントとは、「嫌がらせ」や「いじめ」などを意味する言葉です。
代表的なハラスメントに、パワハラやセクハラ、マタハラがあります。
これらのほかにも、「〇〇ハラ」と呼ばれる言葉はたくさんあるため、この記事でご紹介します。
この記事では、各ハラスメントの分類や、詳しい概要について、ハラスメント問題に詳しい弁護士が詳しくお伝えします。
目次
ハラスメントの種類
ハラスメントの種類の一覧表
ハラスメント(harassment)の、英語の本来の意味は、「嫌がらせ」や「いじめ」などです。
このようなハラスメントには種類があり、「〇〇ハラスメント(〇〇ハラ)」と呼ばれるものには、以下の一覧表のようなものがあります。
ハラスメントの名称(略称) | 内容 |
---|---|
セクシャル・ハラスメント(セクハラ) | 性的な言動により、相手に対して不快感を与える嫌がらせ |
パワー・ハラスメント(パワハラ) | 職場における優越的な関係を背景とした言動により、労働者の労働環境を害する嫌がらせ |
マタニティ・ハラスメント(マタハラ) | 妊娠・出産・育児に関する言動により、女性労働者の就業環境を害すること嫌がらせ |
パタニティ・ハラスメント(パタハラ) | 男性が育児時短や育休を取得したことで受ける不利益や嫌がらせ |
アルコール・ハラスメント(アルハラ) | 飲酒に関する嫌がらせや迷惑行為 |
スモーク・ハラスメント(スモハラ) | 非喫煙者にたばこを勧めたり、不可避的にたばこの煙にさらしたりする嫌がらせ |
モラル・ハラスメント(モラハラ) | 人格否定など倫理や道徳に反した嫌がらせ |
カラオケ・ハラスメント(カラハラ) | カラオケに関する嫌がらせ |
スメル・ハラスメント(スメハラ) | 臭いにより人を不快にすること |
リモート・ハラスメント(リモハラ) | リモートワークにまつわる嫌がらせ |
テクノロジー・ハラスメント(テクハラ) | IT に関する知識に乏しく、IT 機器やネットワークなどの取り扱いが不得手な人に対して行われる嫌がらせ |
時短・ハラスメント(ジタハラ) | 労働時間を減らすことを現場に求めながらも、具体的な提案はなく、現場に丸投げする嫌がらせ |
リストラ・ハラスメント(リスハラ) | 辞めてほしい(リストラしたい)労働者に対して嫌がらせを行い、自主退職を促すこと |
カスタマー・ハラスメント(カスハラ) | 顧客が企業に対して理不尽なクレーム・言動 |
エンジョイ・ハラスメント(エンハラ) | 楽しさを押し付ける嫌がらせ |
就活終われ・ハラスメント(オワハラ) | 企業の採用において、自社に来てほしいため、求職者に就職活動を終えるよう誘導・強制する嫌がらせ |
エイジ・ハラスメント(エイハラ) | 年齢や世代が違うという理由による嫌がらせや差別的な言動 |
ケア・ハラスメント(ケアハラ) | 働きながら介護を行う人々に対する嫌がらせ |
ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ) | 正当な行為をハラスメントだと主張する嫌がらせ |
アカデミック・ハラスメント(アカハラ) | 大学職員・研究者が職員・学生に行う嫌がらせ |
マッチング・ハラスメント(マチハラ) | 婚活アプリの利用者に対する嫌がらせ |
ワクチン・ハラスメント(ワクハラ) | 各種ワクチンの接種を強要する嫌がらせ |
事後・ハラスメント(ジゴハラ) | ハラスメント調査終了後、当事者に向けられる嫌がらせ |
ロジック・ハラスメント(ロジハラ) | 形式的な正論により相手を追い詰める嫌がらせ |
セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)
セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)とは、他の者を不快にさせる職場における性的な言動、職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動を指します。
「性的な言動」とは、性的な関心や欲求に基づくものをいい、性別により役割を分担すべきとする意識に基づく言動や、性的指向や性自認に関する偏見に基づく言動も含まれます。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントとは、職場において行われる、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、のことをいいます。
上記の①から③までの3つの要素を全て満たすものがパワハラに該当します。
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、女性労働者が、職場において、妊娠・出産・育児に関し、
- 妊娠・出産したこと
- 産前産後休業・育児休業などの制度利用を希望したこと
- これらの制度を利用したこと
などを理由として、同僚や上司等から嫌がらせなどを受け、就業環境を害されることをさします。
パタニティハラスメント(パタハラ)
パタニティハラスメント(パタハラ)とは、男性が育児時短や育休を請求したり取得したりすることで不利益な扱いや、嫌がらせを受ける行為、言動をさします。
出産・子育てに関して、女性が受けるハラスメントを「マタハラ」、男性が受けるハラスメントを「パタハラ」と区別することができます。
男性が育児に参加するための育休取得や短時間勤務制度の利用、フレックスタイム制度の活用に対して、妨害や嫌がらせをすることは、マタハラにあたります。
アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲酒にまつわる嫌がらせ行為のことです。
以下のような行為はアルハラに該当する可能性があります。
- 飲酒の強要
- イッキ飲ませ
- 意図的な酔いつぶし
- 飲めない人への配慮を欠くこと
- 酔ったうえでの迷惑行為
- スモークハラスメント(スモハラ)
スモークハラスメントとは、望まない喫煙・受動喫煙により、喫煙者が非喫煙者に対して健康被害や健康不安を生じさせる行為のことです。
以下のような行為は、スモハラに該当する可能性があります。
- 上司から喫煙を強要される
- 打ち合わせや飲み会の場で上司・同僚が喫煙し、たばこの煙を吸わされる
- 喫煙者が休憩から戻った際、タバコの臭いを充満させる
- たばこの煙を吹きかけるという嫌がらせ行為を受ける
- モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメントとは、道徳や倫理に反する嫌がらせ行為です。
言葉や態度によって相手の心を傷つける精神的な嫌がらせはモラハラに該当します。
無視する、暴言を吐く、嫌みを言うなどの言動はモラハラにあたります。
カラオケハラスメント(カラハラ)
カラオケハラスメントとは、歌うことが苦手な人に強制的に歌わせる行為によって、不快感を与えることです。
会社のイベントなどで、上司から若手社員が受けるおそれがあるハラスメントです。
スメルハラスメント(スメハラ)
スメルハラスメントとは、臭いに関して周囲の人に不快感を与える行為のことをさします。
リモートハラスメント(リモハラ)
リモートハラスメントとは、リモートワーク環境で起きるハラスメントの総称です。
以下のような行為は、リモハラに該当する可能性があります。
- メイクや髪型、体型・服装について言及する
- webカメラに全身を映すように要求する
- 執拗に業務外の連絡を繰り返す
- 家族や恋人などの同居人に関することを聞く
- バーチャル背景の利用を禁止され部屋の中を見せるよう言われる
- テクノロジーハラスメント(テクハラ)
テクノロジーハラスメントとは、ITの知識があまりなく、パソコンやスマホなどのデジタル機器をうまく使いこなせない人に行われるいじめや嫌がらせです。
ITリテラシーの高い人が低い人に対し、侮辱したりわざとPC操作が必要な業務を割り振ったりするなどの行為が該当します。
時短ハラスメント(ジタハラ)
時短ハラスメントとは、残業の削減に関する具体的な方策がないまま、上司が部下に対して定時退社を強要することなどを指します。
具体的な対策がないまま退社を強要すると、従業員の持ち帰り業務などのサービス残業が増え、業務が遅延するおそれもあります。
リストラハラスメント(リスハラ)
リストラハラスメントとは、リストラの対象となっている人に対して、主に自主退職するように仕向ける嫌がらせのことです。
リストラ対象者の上司や、周囲の同僚が理不尽な振る舞いをしたり、突然仕事を取り上げて何もやらせないなどの行為は、リスハラに該当する可能性があります。
カスタマーハラスメント(カスハラ)
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先などからのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容が妥当性を欠いているもの、また当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当であり、それらによって従業員の就業環境が害されるものをいいます。
エンジョイハラスメント(エンハラ)
エンジョイハラスメントとは、本人の意思を無視して、仕事などを楽しむよう強要してしまうことをいいます。
就活終われハラスメント(オワハラ)
就活終われハラスメントとは、企業が新卒採用において内々定を出した学生に、以降の就職活動を終えるよう働きかける行為や、内定を出す条件として長期的に学生を拘束する行為のことを指します。
エイジハラスメント(エイハラ)
エイジハラスメントとは、年齢や世代が違うことを理由にした差別的な言動や嫌がらせのことを指します。
ケアハラスメント(ケアハラ)
ケアハラスメントとは、介護休業や、介護時短制度の取得にまつわる嫌がらせや不利益取扱いのことを指します。
ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
ハラスメントハラスメントとは、正当な行為に対して「ハラスメントだ」と、主張する嫌がらせ行為のことを指します。
上司が部下を指導したり、注意したりすることに対して、部下がハラスメントだと訴えるケースなどは、ハラハラに該当する可能性があります。
アカデミックハラスメント(アカハラ)
アカデミックハラスメント(アカハラ)とは、大学を始めとした教育機関にて、所属する職員が自身の権力を不当に公使することで、ほかの職員や学生に対し精神的または肉体的苦痛を与えることをいいます。
マッチングアプリハラスメント(マチハラ)
マッチングアプリハラスメント(マチハラ)とは、職場環境などにおいて、他者の恋活・婚活アプリの利用にかかわる情報を周囲に言いふらしたり、プロフィールを許可なく第三者に広めるなど、利用者または利用検討者に対し、苦痛や不快な思いをさせる行為をいいます。
ワクチンハラスメント(ワクハラ)
ワクチンハラスメント(ワクハラ)とは、新型コロナウイルスのワクチンなどを未接種の人に対して接種を迫ったり、接種しないことを責めるような言動を取ったりすることをいいます。
事後ハラスメント(ジゴハラ)
事後ハラスメント(ジゴハラ)とは、ハラスメント調査後に回答内容次第で不利益な取り扱いをする嫌がらせのことをいいます。
ロジックハラスメント(ロジハラ)
ロジカルハラスメント(ロジハラ)とは、正論を盾に相手を追い詰める言動・嫌がらせのことをいいます。
厚生労働省が重要視するハラスメント
厚生労働省が対策を強化しているハラスメントとして、以下のようなものがあります。
- パワハラ
- セクハラ
- マタハラ
- カスハラ
令和2年6月1日に改正・施行された、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法により、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。
また、職場のセクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です。
さらに、カスタマーハラスメントの防止対策については、厚生労働省をはじめとして、「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」で議論を行うとともに、対策マニュアルが作成されています。
職場で多いハラスメント
ハラスメントの中でも、職場で発生しやすいものとしては、次のようなものがあります。
職場で起こりやすいハラスメントについては、以下の記事で詳しく解説しております。
パワハラの種類とは?
パワハラには、以下の6類型があるといわれています。
- ① 身体的な攻撃(暴行・傷害):殴る、蹴るなどの暴行、髪を引っ張る、相手に向かって物を投げる
- ② 精神的な攻撃(侮辱・暴言・脅迫・名誉毀損):複数の人がいる前で大声で怒鳴る、「お前は新入社員以下だ」や「〜大学を卒業しているのにそんなこともできないのか」などと言う
- ③ 人間関係の切り離し(隔離・仲間はずれ・無視):合理的な理由もないにもかかわらず、話しかけられても無視をする、業務上の必要性がないにもかかわらず、個室で一人で仕事をさせる
- ④ 過大な要求(業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことを強制する等):同レベルの能力の社員では処理することが不可能な仕事の量を与える、あり得ない営業ノルマを課す
- ⑤ 過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事しか与えない等):専門職の資格者に対して、事務作業ばかりやらせる、簡単な仕事のみを与え、その社員が仕事を終わらせたとしてもそれ以上の仕事を何も与えず暇をさせる
- ⑥ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入る):プライベートな話を何度も聞く、つきまとう
なお、パワハラに関する詳しい解説は以下の記事を参考にしてください。
セクハラの種類とは?
セクハラに該当する行為には、以下のような種類があります。
肩や髪など身体に意図的に触れる行為はセクハラに該当する可能性が高いでしょう。
また、会社内で性的な関係を強要して従わない場合には、解雇や罰を与えるような行為もセクハラの典型です。
なお、セクハラに関する詳しい解説については、以下の記事を参考にされてください。
その発想はなかった!面白い種類のハラスメント
お菓子ハラスメント(オカハラ)
お菓子ハラスメントとは、特定の人にだけお菓子やお土産を配らず、不快な思いをさせてしまうことです。
また、旅行に行ったときに会社へのお土産購入を強要することも、お菓子ハラスメントにあたります。
エアコンハラスメント(エアハラ)
エアコンハラスメント(エアハラ)とは、エアコンの温度設定による嫌がらせのことを指します。
社内でエアコンを使用する際、体感温度の違いから温度設定をめぐって人間関係に不調和が起き、温度設定が身体に合わず我慢を続けたため体調を崩してしまうことがエアハラにあたります。
フォトハラスメント(フォトハラ)
フォトハラスメント(フォトハラ)とは、スマホなどで撮影した写真を無許可でSNSにあげられ、相手に不快な思いをさせることをいいます。
社内や知人同士でイベントなどを開催するときには特に注意が必要です。
イベント後に活動報告をSNSでシェアするケースもあるかもしれませんが、「写真を撮られて問題のある方はお申し付けください」と一言断りを入れることがフォトハラ防止のためには大切です。
ハラスメントの種類についてのQ&A
三大ハラスメントとは何ですか?

職場のハラスメントには主に、パワーハラスメント(パワハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、 妊娠・出産に関するハラスメント(マタハラ)があり、3大ハラスメントとも呼ばれています。
これらのハラスメントは、企業にとっても、職場環境の悪化や生産性の低下、 人材流出などを招く可能性があるため、大きな損失につながるリスクがあります。
ハラスメントの種類の数は?

中でも主なハラスメントの種類は以下のとおりです。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
- モラルハラスメント(モラハラ)
- マタニティーハラスメント(マタハラ)
ハラスメントに該当するか否かは、その定義に該当しているかどうかを確認することが重要です。
ハラスメントの種類は多すぎでしょうか?

なお、厚生労働省は職場におけるハラスメントについて、
- ① 優越的な関係を背景とした言動
- ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- ③ 労働者の就業環境が害されるもの
この3つすべてを満たすものと定義しています。
したがって、この定義に該当する行為は、ハラスメント問題に発展するおそれがあります。
重要なのは、他人を不快にさせる・嫌がる行為をしない/させない環境を作るということです。
まとめ
この記事では、各ハラスメントの分類や、詳しい概要についてお伝えしてきました。
企業には各種ハラスメントトラブルに対して適切な理解及び対応が求められています。
どのような行為がハラスメントに該当するのか、実際に発生したハラスメント問題に会社がどのように対処・対応すればよいのかについては、専門家である弁護士に相談されることがおすすめです。
弁護士によるハラスメント研修などを実施することで、ハラスメント問題を事前に予防することができます。
また、実際に発生したハラスメント問題に対する適切な対応についても、弁護士から適切なサポートやアドバイスを受けることができます。
デイライト法律事務所は、会社側のハラスメント問題の経験豊富な労働事件チームがあります。
ZoomやGoogleMeet等を用いたオンライン相談も承っており、全国対応をしておりますので、経営者や人事担当者の方はぜひ一度デイライト法律事務所にご相談ください。
