正社員の就業規則しか作成しておりませんが問題はありますか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


解説する弁護士のイメージイラストわが社には正社員のほか、パートタイマーや契約社員もおりますが、正社員の就業規則しか作成しておりません。この場合にも問題がありますか?

 

Answer

弁護士森内公彦イラスト就業規則の作成義務がある事業場は、正社員のみならず、パートタイマー等の非正規社員についても就業規則の作成義務があり、作成しないと労働基準法違反として労基署から是正指導される可能性があります。

 

就業規則の作成・届出義務がある事業場

就業規則を作成する義務があるのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者です(労基法89条)。

 

 

就業規則の記載内容

雇用形態就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)、その制度を置く場合は就業規則に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)、記載するか否かが自由な事項(任意記載事項)があります。

絶対的必要記載事項には、労働時間関係(始業及び終業の時刻、休憩時間等)、賃金関係(賃金の決定方法等)、退職に関する事項があります。

正社員とパートタイマー、契約社員は、通常、これらの労働条件が異なります。

したがって、就業規則の作成義務がある事業場は、正社員のみならず、パートタイマー等の非正規社員についても就業規則の作成義務があり、作成しないと労働基準法違反として労基署から指摘される可能性があります。

なお、就業規則の作成の仕方としては、次の2つがあります。

①正社員用の就業規則とは別に、パートタイマー用、契約社員用の就業規則を作成する方法
②1つの就業規則に、正社員、パートタイマー等すべての労働者のことを記載する方法

いずれでも構いませんが、従業員の確認のしやすさや、今後の改訂(就業規則の変更)作業等の管理の利便性を考えると、①の方法の方がよいと思われます。

 

実務上の留意点

悩み仮に、正社員用の就業規則しか作っていない場合、就業規則の最低基準効の問題で、労使トラブルに発展する可能性も考えられます

就業規則の最低基準効とは、労働契約を締結する際、個別合意で定めた労働条件が就業規則で定める基準に達しない場合、その個別合意の労働条件ではなく就業規則で定める基準が契約内容となることをいいます(労契法12条)。

例えば、就業規則に定める賃金とは異なる低額の報酬支払を合意する場合、就業規則に定める賃金が労働契約の内容となると考えられます。

このことから、例えば、契約社員の就業規則が作成されていない場合、契約社員から、労働条件について、「正社員の就業規則に定める基準が契約内容になる(例えば、本来は賞与の支給対象ではないが、正社員と同様に賞与の支給対象となるなど)」などと主張されるリスクがあります。

このような労使トラブルを防止する観点からも、すべての労働者の就業規則を作成しておくべきです。

弁護士竹下龍之介イラスト就業規則について、詳しくは労働問題に詳しい弁護士へご相談ください。当事務所の労働弁護士は、使用者側専門であり、企業を護る就業規則の策定をサポートしています。

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