就業規則は、具体的にどのようなことを規定するべきですか?
就業規則を策定したいと考えていますが、具体的にどのようなことを規定しなければなりませんか?
就業規則では、労働時間等の絶対的必要記載事項のほか、相対的必要記載事項、任意記載事項を規定します。
就業規則に規定する事項
就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)、その制度を置く場合は就業規則に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)、記載するか否かが自由な事項(任意記載事項)があります。
絶対的必要記載事項
以下の項目は、必ず就業規則に定めなければなければなりません。
・始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
・賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
・退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
絶対的必要記載事項
分類 | 記載事項 | 説明 |
労働時間 休日 休暇関係 |
始業及び終業の時刻 | 当該事業場における所定労働時間の開始時刻と終業時刻。
例えば、「1日8時間」というような規定では違反となる。また、始業等の繰り上げや繰り下げが行われる場合はその旨を記載する。 |
休憩時間 | 休憩時間の長さ、与え方(一斉に与えるか、交替で与えるか等)について具体的に規定する。また、休憩時間の繰り上げや繰り下げが行われる場合はその旨を記載する。 | |
休日 | 休日の日数、与え方(1週1回、または1週の特定日(例えば「日曜日」)等)、休日の振替・代休等の制度がある場合はその旨記載する。 | |
休暇 | 労基法上の年次有給休暇、産前産後の休暇、生理日の休暇、育児・介護休業法に基づく休暇、労基法37条3項の休暇(代替休暇)、事業場が任意に定める特別休暇(年末年始休暇、夏季休暇、慶弔休暇等)等 | |
就業時転換に関する事項 | 労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合は、交替期日や交替順序に関する事項。 | |
賃金関係 | 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定・計算 | 賃金額ではなく、学歴、資格、経験年数等の賃金の決定要素、又は賃金体系をいう。 |
賃金の支払方法 | 月給制、日給制、出来高払い制等の支払いの方法をいう。 | |
賃金の締切り及び支払の時期 | 例えば、月給制の場合は「月末締めの翌月20日払い」など。 | |
昇給 | 昇給期間、昇給率、その他昇給の条件等をいう。 | |
退職関係 | 退職に関する事項(解雇事由を含む。) | ここでいう「退職」とは解雇を含めて労働契約が終了するすべての場合をいう。したがって、任意退職、定年退職、契約期間満了による退職、解雇等、労働者が身分を失うすべての場合に関する事項を記載する。 |
相対的必要記載事項
以下の項目は、その制度を置く場合は就業規則に記載しなければなりません。
退職手当の定めをする場合
適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合
これに関する事項
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合
これに関する事項
安全及び衛生に関する定めをする場合
これに関する事項
職業訓練に関する定めをする場合
これに関する事項
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合
これに関する事項
表彰及び制裁の定めをする場合
その種類及び程度に関する事項
上記の他に当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合
これに関する事項
相対的記載事項
記載事項 | 説明 |
退職手当 | 退職手当制度は、必ず設けなければならないものではなく、制度があれば、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項を記載する。
例えば、勤続年数、退職事由等の退職手当額決定のための要素、算定方法、一時金で支払うのか年金で支払うか等の支払い方法をいう。 |
臨時の賃金 最低賃金額 |
臨時の賃金等の制度があれば、その支給条件、支給額の計算方法、支払期日等を明確に記載する。 |
食費、作業用品、その他の負担 | 「その他」の負担とは、社宅費、共済組合費等をいう。これらを負担させる場合はその金額を記載する。 |
安全 衛生 |
「安全及び衛生に関する事項」とは、労働安全衛生法等に規定されている事項のうち、当該事業場において特に必要な事項の細目、法令に規定されていない事項であっても、当該事業場の安全衛生上必要なもの等をいう。 |
職業訓練 | 職業訓練の種類、内容、期間、訓練を受けることができる資格、訓練中の労働者に特別の権利義務を設定する場合にはそれに関する事項、訓練終了者に対して特別の処遇をする場合にはそれに関する事項を記載する。 |
災害補償 業務外の傷病扶助 |
災害補償及び業務外の負傷や病気の扶助に関する事項を記載する。 |
表彰及び制裁 | 表彰については、その種類及び程度に関する事項を記載する。
制裁については、懲戒処分の事由・種類・程度・手続等を記載する。なお、制裁は法令に違反するもののほか、公序良俗に反するようなものは認められない。 |
任意記載事項
上記の他に、任意記載事項として、自社の経営の考え方(企業理念等)、就業規則の目的、労働能率の維持・向上に関する事項、法令に定められている事項の確認規定等について、記載することがあります。
実務上の留意点
最低限、絶対的必要記載事項及び相対的記載事項については就業規則に明記しましょう。
また、マネジメントの観点から企業理念等の任意記載事項についても、できれば記載したほうがよいでしょう。
就業規則は一度策定したら終わりではいけません。就業規則でよく見受けられる不備は、最新の法令に対応していないものです。
労働関係法令は、社会状況の変化に合わせて絶えず改正されています。従業員の労働条件に関する法令の新設・改正が行われたら、そのたびごとに就業規則の内容を変更するようにしましょう。
就業規則について、詳しくは労働問題に詳しい弁護士へご相談ください。
当事務所の労働弁護士は、使用者側専門であり、企業を護る就業規則の策定をサポートしています。
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