労基署はどのような場合に法定休日付与義務違反を指摘しますか?
労基署から、法定休日の付与義務に違反したと指摘されるのは、どのような場合ですか?
例えば、週に1日も休日を与えなかった場合が、これにあたる可能性があります。
労働基準法第35条(休日原則)
週休制の原則
労働基準法第35条第1項は、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。」と規定しています(週休制の原則)。
そのため、同規定違反は、原則として法定休日の付与義務違反にあたります。
法定休日は、就業規則等で特定の曜日を定めていればそれに従います。しかし、そうでなければ1週間のうちどの曜日にしても、週によって曜日を変えることも可能ですので、ある週については日曜日、またある週については土曜日とすることも可能です。
もっとも、行政監督上は、就業規則において、休日をできるだけ特定させるよう指導するという方針がとられています(昭和63年3月14日基発150号)。
また、休憩時間と異なり、休日を一斉に与えることは法律上、要求されていません(昭和23年3月31日基発第513号)。
なお、休日の与え方について、1暦日(午前0時から午後12時までの24時間)の24時間であるか、継続24時間(例:ある日の午前8時から翌日の午前8時まで)で足りるかという問題があります。
例えば、労働と非番を繰り返す、1昼夜交代勤務の場合に問題となります。この点について、行政解釈では、原則として1暦日の考え方(暦日休日制)をとっています(昭和23年4月5日基発535号)。
具体的には、下図(休日の与え方)の場合においては、7日目の午前0時から継続した24時間が休日となります。
なお、番方編成による交替制の場合、行政解釈上、
ⅰ.交替制によることが就業規則等により定められて制度として運用されていること
ⅱ.各番方の交替が規則的に定められているものであって、勤務割表等により、その都度設定されるものでないこと
の各事項を満たす場合は、休日は暦日ではなく、継続24時間を与えれば差し支えないとされています(昭和63年3月14日基発第150号)。
変形週休制
労働基準法第35条第2項は、「前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。」と規定しています(変形週休制)。
これは、特定の4週間のうち4日以上の休日を与える場合には、同法第1項の適用を受けないというものです。
この変形週休制を採用するには、就業規則において単位となる4週間(またはそれより短い期間)の起算日を定める必要があります(労基則第12条の2第2項)。この場合、事前に休日を特定することまでは必要ありません。
休日振替え
問題の所在
労基法35条との関係で、休日振替えができる場合が問題となります。例えば、就業規則上で休日を「日曜日」と定めている場合に、使用者がある週については、その代わりに「水曜日」を休日に変更する措置(休日振替命令)をとることができるかという問題です。
休日振替えには、事前の振替え(あらかじめ別の労働日を休日として、特定の休日を労働日とすること)と事後の振替え(ある休日に労働させた後に、別の労働日を休日とすること)があります。
事前の振替え
事前の振替えについては、労働者の個別的同意を得るのが原則ですが、一定の要件を満たす場合には、これを要しないと解されています。
この点について、三菱重工横浜造船所事件(横浜地判昭55.3.28労判339号20頁)は、事前の振替えについて、
「一定の条件のもとに就業規則所定の休日を他に振替えることができることになつているのであるから、所定の休日は振替のありうることが予定されたうえで特定されているものというべきであり、右の定めは就業規則によるものであることから、その性質上、労働契約の内容をなしているものと解されるので、使用者は、前記の条件が満たされるかぎり、特定された休日を振替えることができるものというべく、たとえ、個々の振替の際に労働者の同意、了解がなくとも、そのことの故に直ちに休日振替が違法、無効となるいわれはないものと解するほかはない。」と判示しました。
つまり、就業規則上、業務上の必要により就業規則で定める休日を他の日に振り替えることができる旨の規定がある場合、当該規定に従った休日振替命令は適法、有効となります。
そして、この場合、本来の休日は労働日における労働となるため、休日労働に伴う36協定の締結・届出(労基法第36条)や割増賃金の支払い(同法第37条)は求められません。ただし、1週40時間労働等、他の制約に服することはあり得ます。
事後の振替え
ある休日に労働させた後に、別の労働日を休日とする場合(事後の振替え)は、その日における労働は休日労働と評価されます。そのため,36協定の締結・届出や割増賃金の支払いが必要になります。
また、事後の振替えは休日労働と評価されるため、仮に代休を事後に付与したとしても、36協定に基づかない休日労働をさせたことになるため、労基法第35条違反となる可能性があります。
休日原則の適用除外
労働基準法第41条
労働基準法第41条は、労働時間等に関する規定の適用除外について規定しています。
そして、休日原則の適用除外となる場合は、
「別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者」(同条1号、農業・畜産・水産業に従事する者)、
「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」(同条2号、管理監督者および機密事務取扱者)、
「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」(同条3号、監視・断続的労働従事者)
であり、これらの者については休日に関する規定は適用されません。
休日原則の適用除外
① 農業・畜産・水産業に従事するもの
② 管理監督者、機密事務取扱者
③ 監視労働従事者、断続的労働従事者
各号の具体的内容
ア.第1号に規定されている産業は、天候・季節等の自然に影響を受けやすいため、適用除外となっています。
イ.第2号に規定されている管理監督者は、例えば、支店長がこれに該当する可能性があります。
同じく第2号に規定されている機密事務取扱者とは、秘書その他職務が経営者または監督もしくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者をいいます(昭和22年9月13日発基17号)。
ウ.第3号に規定されている監視・断続的労働従事者については、通常の労働者と比較して労働密度が薄いとされていることから適用除外とされています。
監視に従事する者とは、一定部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体または精神的緊張の少ないものをいいます。
また、断続的労働に従事する者とは、休憩時間は少ないが手待時間が多い者をいいます。手待時間が多いかどうかは、それが実作業時間を超えるかまたはそれと等しいことが目安とされています。
監視・断続的労働従事者は、例えば、守衛、小・中学校の用務員、団地管理人、隔日勤務のビル警備員がこれにあたる可能性があります。
なお、労働基準法施行規則第34条により、監視・断続的労働従事者については、従事する労働の態様および員数について、同規則様式第14号により、所轄労働基準監督署長の許可を受けなければなりません。許可申請書は下図のとおりです。
監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請書 様式第14号(第34条関係)
求められる対応
法定休日違反の問題は、未払賃金の違反、労働時間の違反に直結する問題です。そして、両違反とも、労基署が定期監督を実施し違反を指摘した事項の上位に挙がっています。
会社としては、就業規則の確認、見直しを行ったり、休日を与えたつもりでも法律上与えていない場合に該当していないかの確認を行う必要があります。
当事務所は、労働問題に関するご相談を多数いただいております。
法定休日違反の問題や就業規則の見直し等でお悩みの方は、是非ご相談ください。