マタハラについて、会社が注意するべき点はありますか?
女性労働者へのマタハラについて、会社はどのような点に注意しなければなりませんか?
妊娠、出産に関するハラスメントについては、相談窓口をあらかじめ定めること、具体的な事案に関して事実関係を迅速かつ正確に確認することなどの措置を講じる必要があります。
妊娠、出産、育児休業に関するハラスメント
平成28年8月、事業主が職場における妊娠、出産、育児休業(以下、「妊娠、出産等」という。)に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての13の指針が公布されました。
平成29年1月1日から、事業主は、この指針に従い、妊娠等に関するハラスメント防止措置を適切に講じなければなりません(均等法11条の2、育児・介護休業法25条)。
妊娠、出産等に関する指針
1 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(1)①妊娠、出産等に関するハラスメントの内容、②妊娠、出産等に関する否定的な言動が妊娠、出産等に関するハラスメントの背景等となり得ること、③妊娠、出産等に関するハラスメントがあってはならない旨の方針、④妊娠、出産等に関する制度等の利用ができる旨を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2)妊娠、出産等に関するハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
2 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)相談窓口をあらかじめ定めること。
(4)相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに該当するか否か微妙な場合等であっても、広く相談に対応すること。
(5)その他のハラスメントの相談窓口と一体的に相談窓口を設置し、相談も一元的に受け付ける体制の整備が望ましいこと。
3 職場における妊娠、出産等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
(6)事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(7)事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
(8)事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
(9)再発防止に向けた措置を講ずること。(事実確認ができなかった場合も同様)
4 職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
(10)業務体制の整備など、事業主や妊娠した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講ずること。
(11)妊娠等した労働者に対し、妊娠等した労働者の側においても、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を周知・啓発することが望ましいこと。
5 1から4までの措置と併せて講ずべき措置
(12)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
(13)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
実務上の留意点
近年、セクハラだけではなく、マタハラが問題視されるようになっており、上記のとおり、法律によって相談窓口の設置が義務付けられ、ハラスメントの発生を防止するための措置を講じなければならなくなりました。
この措置を怠り、実際にハラスメントが発生した場合、会社は被害者に対して賠償責任を負うおそれがあります。
また、この種の問題は、マスメディアに取り上げられることが多いため、報道された場合、企業の社会的信用が失墜し、その場合の影響は計り知れません。
しかし、多くの企業は、労働問題に詳しい人材が不足しているため、相談窓口の設置すら困難な状況です。そのような場合、自社内部ではなく、外部の法律事務所(顧問の弁護士等)をハラスメントの相談窓口として設置する方法があります。
労働問題に詳しい弁護士であれば、ハラスメントの相談に対して的確に対応するだけではなく、そもそもハラスメントを未然に防止するためのサポートを行ってくれることが期待できます。
女性労働者の労務問題については、労働問題に詳しい専門家にご相談ください。
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