労働災害が発生した際の労基署に対する対応を教えて下さい。
労働災害が発生した際、労働基準監督署との関係でどのような対応をすればよいでしょうか?
事故によっては、事故報告書、労働者死傷報告書を労働基準監督署に提出する必要があります。労働基準監督官による現場検証や事情聴取がされる場合もあり、その際には誠実な対応が求められます。
企業の対応
労働災害が発生した場合には、まず被災労働者の救護と二次災害を防止するための安全確保に努めなければなりません。その後の対応としては、下図のような流れになります。
事故現場の保存
工場内など企業の管轄範囲内において、労働災害が発生した場合には、現場は災害発生時のまま保存しておく必要があります。
重大事故である場合には、事故後に警察や労働基準監督署の現場検証がされる可能性があるからです。労働災害が発生してしまった以上、警察や労働基準監督署に協力することは必須です。事情聴取などにも誠実に対応することが求められます。
労働基準監督署への届出
労働災害が発生した場合には、労災事故報告書と労働者死傷病報告書を労働基準監督署に提出しなければなりません。
労災事故報告書は、火災、爆発、建設物の倒壊、遠心機械の破裂事故、ボイラーの破裂等の事故が起きた場合に提出しなければなりません。
労災事故報告書には、被災労働者に関する情報、災害の発生状況、受傷の内容・程度、受診した病院などを記載することになります。
災害の発生状況に関しては、できる限り具体的に記載する必要がありますが、絶対に虚偽の事実を記載してはいけません。虚偽の報告をした場合や報告をしなかった場合には、50万円以下の罰金に処せられることになります(安衛法120条5号、同法100条、安衛則96条、)。
労働者死傷病報告書は、労働者が業務中等に負傷し、又は中毒や疾病にかかったことにより、死亡もしくは休業した場合に、労働基準監督署に提出しなければなりません。
災害発生後、「遅滞なく」提出しなければならず、概ね1週間から2週間以内には提出しなければなりません。
災害発生から概ね1カ月を経過している場合は、提出が遅れた理由について書面で提出を求められることがあります。労働者死傷病報告書を提出しなかったり、虚偽の報告をした場合には、事故報告書の場合と同様の刑事処分が科されることになります。
再発防止の検討・実施
企業としては、同様の労働災害を発生させないためにも、災害が発生した原因を十分に調査し、災害発生防止のために具体的な改善策を検討し実施していかなければなりません。
例えば、設備のメンテナンスに原因があったのであれば、メンテナンスの方法・頻度について見直す必要があるかもしれません。
作業手順に問題があったり、あるいは、従業員の安全への意識が欠如していたことにより災害が発生したのであれば、手順を再検討した上で、従業員に周知し、社内で安全教育を実施する必要があるでしょう。
また、安全衛生管理体制を整備するにあたっては、現場の従業員の意見を参考にすることも大切です。
作業中に危険に感じた事例を報告・提案する制度を設けて、労働災害が発生する前に危険因子を除去することも検討すべきです。
職場の安全パトロール員や安全ミーティングの進行役を当番制で全従業員に担当させるといった制度を実施することも従業員の安全への意識を高めるためにも有効な方法といえるでしょう。
コンプライアンス(法令遵守)を意識
労働安全衛生法では、労働者の安全を守るために様々な規制がされています。こうした規制を確認して、自社の作業工程に違反がないか十に検討することも必要です。
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