定期監督の流れと、労基署の調査の件数の状況を教えて下さい。
対象とする事業場を決定した上で、抜打調査を行うか、事前通知の上で立入調査に入るかといった調査方法を決定して、書類確認や事情聴取といった調査を行っていきます。
平成27年は13万31116件の調査が実施されています。
定期監督の流れ
厚生労働省の地方労働行政運営方針及びこれに基づいて作成される各都道府県の労基署の監督計画に基づいて、調査をする事業場を決定します。
そして、決定した事業場に対して、どのような形で調査を行うのかを検討します。すなわち、抜打調査にするのか、事前に通知した上で事業場に立入調査に行くのか、事業場の担当者を労基署に来署してもらう形で行うのかという方法を選択します。
抜打調査以外の場合には、文書により通知するケースが多いですが、事業場に電話をしてアポイントをとることもあります。
そして、実際の調査では、就業規則や労働者名簿、賃金台帳や雇用条件通知書、36協定などの各種労使協定届といった書類の点検や事業場で勤務する労働者や代表者からの聞き取りを行って、労働法令違反の事実がないかどうかをチェックしていきます。
定期監督の実施状況
平成27年に全国の労基署で行った監督の件数は、下図のとおり、16万9236件にのぼり、定期監督(災害時監督を含む。)はそのうち13万3116件を占めています(78.7%)。
調査対象業種ですが、建設業が4万5424件(34.1%)、製造業が3万5713件(26.8%)、商業1万7676件(13.3%)、保健衛生業8414件(6.3%)、接客接待業6480件(4.9%)となっています(下図)。
災害時監督を含めていることもあるとは思いますが、建設業や製造業といった業種で全体の60%を占めていることがわかります。平成26年と平成27年では対象業種の比率に大きな差異はありません。
監督件数と内訳(平成26年、平成27年)
平成26年
定期監督(災害時監督を含む) | 12万9881件(78.0%) |
申告監督 | 2万2430件(13.5%) |
再監督 | 1万4138件(8.5%) |
合計 | 16万6449件 |
平成27年
定期監督(災害時監督を含む) | 13万3116件(78.7%) |
申告監督 | 2万2312件(13.1%) |
再監督 | 1万3808件(8.2%) |
合計 | 16万9236件 |
調査対象業種(平成26年、平成27年)
平成26年
建設業 | 4万5837件(35.3%) |
製造業 | 3万3512件(25.8%) |
商業 | 1万8346件(14.1%) |
保健衛生業 | 7523件(5.6%) |
接客娯楽業 | 6696件(5.2%) |
平成27年
建設業 | 4万5424件(34.1%) |
製造業 | 3万5713件(26.8%) |
商業 | 1万7676件(13.3%) |
保健衛生業 | 8414件(6.3%) |
接客娯楽業 | 6480件(4.9%) |
違反状況
こうした定期監督によって、何らかの労働法令違反の違反が発見されるケースが平成27年は9万2034件に上っています。この数字は、定期監督の全調査件数の69.1%に当たります。平成26年は、69.4%です。
つまり、調査を受けた事業場の7割近くの事業場で違反が発見され、指導や是正勧告を受けているということになります。
指摘される違反の内容ですが、下図のとおりとなっています。労働時間についての違反が最も多くなっています。
これは、時間外労働に当たって36協定を締結していないというのが典型的な違反になります。
また、健康診断についての違反としては、年に1回の定期健康診断を受けさせていない場合が考えられます。
労働条件の明示の違反は、雇用契約書や労働条件通知書の未交付が挙げられます。
違反の主な内容(平成26年、平成27年)
平成26年
労働時間についての違反 | 30.4% |
安全基準についての違反 | 28.4% |
割増賃金についての違反 | 22.1% |
健康診断についての違反 | 20.8% |
労働条件の明示についての違反 | 16.8% |
就業規則についての違反 | 12.7% |
平成27年
労働時間についての違反 | 30.0% |
安全基準についての違反 | 27.7% |
健康診断についての違反 | 21.9% |
割増賃金についての違反 | 21.1% |
労働条件の明示についての違反 | 16.9% |
就業規則についての違反 | 11.6% |
このように、これまでの定期監督の実施状況を分析していくことで、調査によってどのような点の違反が判明しているかがわかるとともに、労基署がチェックしている点も明らかになってきます。
それぞれの労務問題についての具体的な対応策は労働問題を専門的に取り扱う弁護士に相談すべきです。当事務所では、企業法務チームの弁護士が企業のご相談に対応いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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