給料とは?給与との違いや計算方法をわかりやすく解説

監修者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


給料とは、会社が従業員に対して、労働の対価として支払う報酬のことをいいます。

一見すると単純な定義に見えますが、厳密にいうと、「給料」と「給与」や「賃金」とは違いがあります。具体的に何が違うのかというと、正しく説明できる人は多くないかもしれません。

実際、一般的な日常会話においては、これらの区別を意識せずに混同して用いられることもよくあります。

給料は、厳密にいえば基本給のみのことをさしています。

ただし、特に会社の労務担当者の方などであれば、給料計算の事務を正確に行うためにも、これらの用語を正しく理解しておく必要があります。

そこで、この記事では、「給料」の意味や、「給与」や「賃金」との違い、給料計算の方法などについて、弁護士が解説します。

「給料とは何か」について、 改めて考える機会を持つことも少ないかと思いますので、この記事を通じて理解を深めていただければと思います。

給料とは

給料とは、会社が従業員に対して、労働の対価として支払う報酬のことをいいます。

厳密には、「給料」とは労働に対する報酬の中でも基本給のみを指し、残業代や各種手当は「給料」に含まれません。

日常会話の中ではそこまで厳格な定義を意識せずに用いられることも多いですが、人事労務などの業務に携わる方であれば、正確な意味を知っておくことが重要です。

以下では「給料」の意味について、「給与」や「賃金」といった類似の概念と比較しながら、深く掘り下げて解説していきます。

 

給料の意味

給料とは、会社が従業員に対して、労働の対価として支払う報酬のことをいいます。

後ほど違いを解説するとおり、給料と似た概念として、給与や賃金といった言葉もあります。

これらの中には、日常用語の範疇でさほど厳格に使用されないものから、もう少し意味が限定された固い表現まで、いくつかのパリエーションが存在します。

「給料」は、「労働に対する報酬」といった程度のぼんやりとしたニュアンスで使われることも多く、前者のイメージに近い言葉といえます。

給料の意味

 

給料は英語で何という?

給料は英語で「サラリー (Salary)」といいます。

会社員などの給与所得者のことを「サラリーマン」と表現するのは、これが語源です。

なお、「サラリーマン」は和製英語であり、実際の英語では「ビジネスパーソン」や「オフイスワーカー」といった表現になります。

 

給料と給与との違い

給料と給与の違いは、基本給だけに限るのか、それとも諸手当までをも含むのかという点です。

「給料」は基本給、すなわち所定労働時間に対する報酬のみを指し、手当等はここに含まれません。

これに対して「給与」は、「給料」に加えて、残業代や賞与、扶養手当や通勤手当などの各種手当までをもすべて含めた、労働の対価を総称する表現となります。

つまり、「給料」は「給与」の一部ということができます。

このような意味の違いは、法律などによって定義されているわけではありませんが、実務における一般的な理解として広く定着しています。

ただし、日常的な用語としては、必ずしも厳格な区別が徹底されているわけではありません。

日常会話であれば、手当等を含めたものを指して「給料」ということも誤りとはいえないでしょう。

 

給料と賃金との違い

給料も賃金も、労働に対する報酬という点では共通しています。

もっとも、「給料」が一般的・日常的な表現であるのに対し、「賃金」は法律の条文で用いられる法的な表現となります。

たとえば労働基準法では、賃金は「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています(労働基準法11条)。

参考:労働基準法|電子政府の総合窓口

「賃金」は、「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」とされていますので、言葉が指している範囲としては、基本給に限定される「給料」よりも、手当や賞与などをすべて含めた「給与」に近いといえます。

 

給料と所得との違い

「所得」とは、「収入」から必要経費を差し引いたものを指す税務上の概念です。

たとえば、自営業者で考えますと、総売り上げ(収入)がそのまま利益となるわけではなく、事業活動に伴って諸々の必要経費が発生していますので、収入からこれを差し引いて、その残りが「所得」となります。

自営業者であれば、業態によって発生する経費の額も種類もさまざまですので、実際にかかった経費を計算し、所得を確定申告することになります。

一方、会社員の場合は、会社に勤務するためにたとえばスーツ代のような経費がかかるとしても、個人間の差はそこまで大きくないであろうと考えられます。

そこで、「給与所得控除」という制度が設けられており、給与から所定の額を差し引くことによって「所得」が算出されます。

所得計算の基礎となる「収入」は、手元に入ってくるお金を広く指し、給料に限りません。

「収入」の原因が会社からの得た労働の対価であれば、所得の種別は「給与所得」になりますが、収入の原因が事業による場合や、物品等の譲渡による場合であれば、「事業所得」や「譲渡所得」となります。

まとめますと、「所得」は、収入の原因が労働の対価に限られない点と、必要経費を差し引いている点で、「給料」とは異なります。

 

給料と手取りとの違い

「手取り」とは、給与のうち、従業員に対して実際に支払われる額のことをいいます。

本来、給料は従業員に対して全額を支払うべきものとされ、これを「賃金全額払いの原則」といいます(労働基準法24条1項本文)。

参考:労働基準法|電子政府の総合窓口

これは、会社が口実を設けて従業員に給料の一部しか支給しないといった形の搾取を防ぐためのルールです。

ただし、この原則には例外があり、法律で認められた税金や社会保険料のほか、労働組合と書面で合意した費目については、給与から控除して支給することができるとされています(同項ただし書)。

実際に、多くの企業では税金や社会保険料を差し引いた形で給与を支給しています。

このように、本来の給与から税金などが天引きされ、実際に従業員に支払われる額のことを、従業員が手に取るものという意味で「手取り」といいます。

なお、「手取り」に対して、そのような天引きを行う前の給与は、「総支給額」「給与総額」「額面給与」などと表現されます。

 

【ワンポイント:「所得」と「手取り」の違いについて】

「所得」と「手取り」のいずれについても、控除、すなわち給与から所定の金額を差し引くことによって計算しますので、両者の違いが分かりにくいかもしれません。

「所得」は税務上の概念であると解説したとおり、従業員に所得税を課す際の基礎となる「課税所得」を明らかにするために計算します。

給与所得控除は、あくまで課税所得を求める上でのひとつの計算プロセスにすぎませんので、従業員に給与を支給する際に、その額を差し引いて支給するわけではありません。

他方で、税金や社会保険料の控除は、会社が従業員に代わって国に納付しますので、給与支給の際に実際にその額を差し引いて支給することになります。

このように、所得と手取りでは同じ「控除」といっても目的や位置づけが大きく異なりますので、給料支給の事務においては、両者の違いを正しく認識しておく必要があります。

 

 

給料の計算方法とは?

給料支給の際は、従業員に給与の支給総額をそのまま支払うわけではなく、税金や社会保険料を控除した金額を手取り額として支払うことになります。

従業員に誤りのない額を支給するためには、給料計算という事務によって、それぞれの従業員の手取り額を正確に計算しなければなりません。

給料の計算方法は、次のようになります。

総支給額 – 税金等の控除 = 手取り額

賃金全額払いの原則があるため、給料から控除できるのは、税金や社会保険料等の例外的に認められたものに限られます。

そのため、給料計算の考え方自体は、総支給額からそのような例外に当たるものを差し引いて手取り額を求めるという、シンプルなものになります。

ただし、総支給額を計算するためには従業員の残業時間や手当の支給条件などを正確に把握する必要がありますし、控除額の計算においても、税や社会保障制度の正しい理解が不可欠です。

もし給料計算に疑問点があるようでしたら、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

給料の支払いは従業員との間でトラブルになることも多いため、疑問を解消せずに、あやふやな理解に基づいて給料計算を進めるのは、リスクの高い行為といえます。

給料計算は専門性が要求される事務ですので、弁護士の助言や下記の記事なども参考にしながら、正確に行っていただきたいと思います。

 

 

この記事では給料について、「給料」の意味や、「給与」や「賃金」との違い、給料計算の方法などについて解説しました。

記事の要点は、 以下のとおりです。

  • 「給料」は、労働の対価として会社が従業員に支払う報酬のことである。
  • 「給料」は基本給を意味し、諸手当を含まない点で「給与」と異なるが、一般的な用語としては両者を厳密に区別しないことも多い。
  • 給料計算では、総支給額から税金等を控除して手取り額を計算する。
  • 給料計算において疑問があるときは、労働問題に強い弁護士に相談することが有益である。

当事務所では、労働問題を専門に扱う企業専門のチームがあり、企業の労働問題を強力にサポートしています。

Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。

給料に関する問題については、当事務所の労働事件チームまで、お気軽にご相談ください。

この記事が、労働問題にお悩みの企業にとってお役に立てれば幸いです。

まとめ

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