カスハラとは?事例や対応の注意点・撃退法を解説

監修者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、一言でいえば、顧客などカスタマー(Customer)から店舗の店員等に対して行われるハラスメントのことを指します。

以下のような顧客の行動は、カスハラ行為に該当します。

  • 身体的な攻撃
  • 精神的な攻撃
  • 威圧的な言動
  • 土下座の強要
  • 繰り返される、しつこい言動
  • 拘束的な行動
  • 差別的な言動
  • 性的な言動
  • 従業員個人への攻撃・要求

この記事では、労働問題に詳しい弁護士が、カスハラの意味や、具体的な事例、対応の注意点や撃退法などについて、お伝えしていきます。

カスハラとは?

カスハラの意味

「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、一言でいえば、顧客などカスタマー(Customer)から店舗の店員等に対して行われるハラスメントのことを指します。

企業や業界により、顧客などへの対応方法や基準は異なることが想定されることから、カスタマーハラスメントの意味を一義的に定めることは困難です。

ただし、令和3(2021)年に厚生労働省が作成した、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」には、カスタマーハラスメントの定義について以下のように規定しています。

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」

「顧客等」には、実際に企業の商品やサービスを利用した者だけでなく、今後利用する可能性がある潜在的な顧客も含まれます。

顧客等の要求の内容が著しく妥当性を欠く場合には、その実現のための手段・態様がどのようなものであっても、「社会通念上不相当」となる可能性が高まります。

他方で、顧客等の要求の内容に妥当性がある場合であっても、その実現のための手段・態様の悪質性が高い場合には、やはり社会通念上不相当となる可能性が高まります。

「労働者の就業環境が害される」とは、労働者が人格や尊厳を侵害する言動により身体的・精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業するうえで見過ごすことができない支障が生じることです。

 

カスハラとクレームの違い

カスハラと区別するのが難しいものに、顧客からの「クレーム」があります。

一般的に、「クレーム」とは顧客からの苦情や改善要求を指します。

正当なクレームに耳を傾けることは、企業の商品・サービスの改善や企業成長、販路拡大・リピーターの獲得など、企業のメリットにつながる可能性があります。

ただし、クレームの中には、「悪質・不当なクレーム」も存在しています。

クレームの中でも、企業や従業員に対して行き過ぎた要求をするものは「不当クレーム」と言えるでしょう。

不当クレームは、あくまでクレームであるため、その根底には企業側への「一定の要求」が存在しています。

しかし、その要求内容やその要求方法が適切ではないため、不当クレームとなります。

一方で、カスハラは、その本質は「嫌がらせ」であると言えます。

カスハラには「要求」が含まれているものも多くありますが、「要求」が含まれていないものも存在しています。

そのため、カスハラのうち何らかの「要求」を伴うものを不当クレームと分類することができるのです。

以上より、顧客からのクレームには、「正当なもの(正当クレーム)」と「不当なもの(不当クレーム)」に分類することができ、不当クレームに該当するものをカスハラに該当します。

したがって、クレームの中でも一部の悪質なものだけが、カスハラに該当することになります。

 

カスハラが増加している背景

厚生労働省は、令和2(2020)年10月に職場のハラスメントに関する実態調査を行いました。

この実態調査によると、過去3年間に「カスハラを一度以上受けた」と回答した従業員は、パワハラ(48.2%)、セクハラ(29.8%)に続いて、19.5%にのぼります。

また、過去3年間の相談件数の推移については、カスタマーハラスメントのみ「件数が増加している」の割合(3.8%)の方が、「減少している」の割合(2.2%)よりも高いという結果になっています。

さらに、過去3年間に各ハラスメントの相談があった企業のうち、カスタマーハラスメントに該当する事案があったとする企業の割合は92.7%と最も高く、過去3年間の該当件数の推移については、相談件数と同様「件数が増加している」の割合(19.4%)の方が、「減少している」の割合(12.1%)よりも高くなっています。

こうした調査結果を見ると、近時、カスタマーハラスメントの問題が増加していることがわかります。

それでは、なぜカスタマーハラスメントは増加傾向にあるのでしょうか。

カスハラ行為が増えた1つの要因として、十分な法整備が整っていないということが挙げられます。

セクハラ、パワハラ等について法律で義務付けられている相談対応や事後対応は、カスハラについては現時点では義務とはされていません。

サービス、流通産業等における産業別労働組合であるUAゼンセンが2020年にまとめた、サービス業に従事する加盟労組の組合員に対する調査によると、カスハラについて自社で「特に対策はなされていない」という回答が43.4%であり、対応が進んでいない企業も少なくありません。

さらにいえば、カスハラに関する法的な研究や実務解説等もまだあまり見られないという状況が、カスハラ問題への対策が遅れている原因であると考えられます。

顧客によるカスハラが増加する他の原因として、インターネットを通じた顧客の発信力の増大が考えられます。

X(旧Twitter)やInstagram、TiktokなどのSNSを通じて、顧客が企業の商品・サービスを容易に批評できるようになりました。

このようなインターネットを通じた口コミの影響力・発信力が増大した結果、企業側の丁寧なカスタマーサービスを行う必要が生じています。

企業が顧客対応に力を入れるようになった結果、悪質なクレームや嫌がらせ行為に対しても、従業員が対応を迫られるようになりました。

このように、企業側が顧客への丁寧な対応に力を入れるようになった結果、一定の割合でカスハラ問題が発生するようになったと考えられています。

さらに、カスハラが社会問題化したことには、ハラスメントを強く問題視する近年の潮流も寄与しています。

カスハラに相当する行為は以前から行われていましたが、さまざまな種類のハラスメントが問題視される流れの中で、新たなハラスメントの類型としてカスハラが取り上げられるようになったものと考えられます。

以上のような背景・理由によって、カスハラに当たる行為が増えたと考えられています。

 

 

これってカスハラ?事例でチェック!

カスハラに該当する行為とは

カスハラの定義は、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」です。

カスハラのうち、顧客からの要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いものに、以下のようなものがあります。

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫・中傷・名誉毀損・侮辱・暴言)
  • 威圧的な言動
  • 土下座の強要
  • 繰り返される、しつこい言動
  • 拘束的な行動(不退去・居座り・監禁)
  • 差別的な言動
  • 性的な言動
  • 従業員個人への攻撃・要求

カスハラのうち、顧客からの要求の妥当性に照らして不相当とされる場合があるものに、以下のようなものがあります。

  • 過剰な商品交換の要求
  • 過剰な金銭補償の要求
  • 謝罪の要求(土下座を除く)
  • タイプ別によるカスハラ事例

 

時間拘束型カスハラ

時間拘束型とは、1時間を超える長時間にわたり特定の顧客に対応するために従業員が拘束されたり、顧客が店舗・事務所に居座ったりするタイプのカスハラ行為です。

長時間にわたる電話についても、この時間拘束型に該当します。

  • 「返品/返金してくれるまでは帰らない」
  • 「納得できる説明をしろ」

また、年配の顧客に多い「説教型」のクレームについては、カスタマーサポートやお客様相談センターの従業員が長時間拘束されてしまう傾向があります。

自分が正しいこと・正論を言っていると信じて疑わない顧客の場合には、時間が経過するにつれてヒートアップしていくおそれもあります。

さらに、長時間拘束型のカスハラを行う顧客の中には、「文句をいえば商品を無料で貰える」「ストレスの捌け口として誰でもよいから怒鳴り散らしたい」といった理不尽な動機・目的の人も存在します。

1時間以上といったあまりにも長時間、暴言や罵倒を浴びせられると、従業員が精神的ダメージを受けてしまいますし、本来的な業務に対応できなくなってしまいます。

 

リピート型カスハラ

リピート型とは、頻繁に店舗や事務所にやってきて、そのたびにクレームを行ったり、度重なる電話や、複数部署にまたがる複数回のクレームを行うタイプのカスハラ行為です。

断ったにもかかわらず、「何度も返品・返金の要求をしてくる」、「何度も面会の要求をしてくる」顧客は、リピート型のカスハラに該当する可能性が高いでしょう。

何度も繰り返し問い合わせをしてくる場合には、連絡先を取得し、理不尽な問い合わせであることを指摘・注意し、次回は対応できない旨を伝えることが重要です。

いったん電話やメールで必要な説明をした後は、「すでにご説明した通りご要望には応じられません。」と伝えて、それ以上の対応を断ることが必要です。

電話であれば、「すでにご説明した通りご要望には応じられませんので、電話を切らせていただきます。失礼します。」といって電話を切ることも必要です。

また、メールであれば、「すでにご説明した通りご要望には応じられません。今後は、メールをいただいても返信は致しません。」と通知することも必要です。

 

暴言型カスハラ

暴言型とは、大声や暴言で執拗にオペレーターを責め立てたり、店内で大きな声をあげて店内の秩序を乱したり、大声で恫喝・罵声・暴言を繰り返したりするタイプのカスハラ行為です。

たとえば「死ね」「クズ」といった過激な発言や「土下座しろ」「今すぐ家までもってこい」といった無理な要求をするケースはこのタイプにあたります。

衣料品チェーン店を利用した顧客が、購入したタオルケットに穴が開いていたとして、店員に詰め寄り土下座させた写真をSNSに投稿したうえ、自宅まで謝罪に来るように要求した事例がありました。

顧客が従業員に無理やり土下座をさせる行為は、暴行・脅迫によって「他人に義務のないことを行わせる」または「権利の行為を妨害する」として、強要罪に該当します。

店側から被害届が出されたことで、この顧客は強要罪で警察に逮捕され、略式起訴され罰金刑が科されています。

このように、あまりにも不当な暴言や要求は、従業員へ大きな精神的負担を与えることになります。

 

対応した担当者への揚げ足取り型カスハラ

揚げ足取り型とは、電話や対面での対応において自らの要求を繰り返し、要求が通らない場合に、担当した従業員の言葉尻を捉えて責め立てたり、同じ質問を繰り返し対応のミスが出たところを責め立てたりするタイプのカスハラ行為です。

一方的に企業側の落ち度を攻撃してきたり、当初の話からはすり替えて執拗な攻め立てを行ったりする行為もこのタイプに含まれます。

例えば、従業員が「・・・と思います」と言ったことに対して、「『思います』とは何だ!お客に向かって単なる憶測で話すとは何事だ」や、件数の多い・少ないに対して「具体的に何件か言ってみろ」「全体の何%か答えろ」などと、些細な言葉尻を捉えて攻め立てる行為が該当します。

 

威嚇・脅迫型カスハラ

脅迫的な言動や反社会的な言動を行ったり、物を壊し、SNSやマスコミへの暴露を仄めかして要求を通そうとするタイプは、この威嚇・脅迫型のカスハラに該当します。

度を越した要求や威嚇行為をともなった暴言や金品の請求などは、脅迫や恐喝罪、強要罪や威力業務妨害罪などにあたります。たとえば「SNS上で動画アップしてやるぞ!」「お前じゃ話にならないから上を呼べ!」「迷惑料を払え!」など。

新人スタッフや外国人従業員がこのような威嚇的なカスハラに耐えきれず、離職してしまうのも少なくありません。深刻な人材不足の原因にもなりえるのです。

 

権威型カスハラ

権威型とは、正当な理由なく、権威を振りかざし要求を通そうとしたり、お断りしても執拗に特別扱いを要求したりするタイプのカスハラ行為です。

また、文書等での謝罪や土下座を強要する場合も権威型カスハラに該当する可能性があります。

 

店舗外拘束型カスハラ

店舗外拘束型とは、クレームの詳細が分からない状態で、職場外である顧客の自宅や特定の喫茶店などに従業員や責任者を呼びつけるタイプのカスハラ行為です。

このタイプのカスハラ行為者は、個々の従業員を個別に攻め立てれば要望が通ると考えている可能性があり、従業員が単独で対応するのは危険です。

事前に返金等に対する一定の金額基準、時間・距離、購入からの期間などの制限について基準を設けて対応する必要があります。

 

セクシャルハラスメント型カスハラ

セクシャルハラスメント型とは、従業員の身体に触る、待ち伏せする、つきまとう等の性的な行動や、食事やデートに執拗に誘う、性的な冗談を言うといった「性的な内容の発言・行動」を行うタイプのカスハラ行為です。

なお、カスハラの具体的な事例については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にされてください。

 

 

会社がカスハラを放置するリスク

カスタマーハラスメントによって生じるさまざまな悪影響は、直接の被害者である従業員に対してのみならず、企業自身や他の顧客に対しても生じる可能性があります。

ここでは、カスタマーハラスメントを会社が放置した場合に、従業員・企業・他の顧客などに与えるリスクについて解説していきます。

会社がカスハラを放置するリスク

従業員の士気が低下

会社がカスハラを放置すると、従業員の士気が低下するリスクがあります。
カスタマーサポートやお客様相談センターを担当している従業員が、長時間にわたって特定の顧客の対応のために拘束された場合には、本来対応すべき顧客に割く時間がなくなり、十分な業務を行えなくなるおそれがあります。

従業員が顧客からの暴言や脅迫行為を受け続けると、仕事に対するやりがいや意欲が低下してしまい、十分なパフォーマンスを発揮することは難しくなります。

また、カスハラは対応した従業員個人に大きな精神的ダメージを与える可能性が大きいため、頭痛・睡眠不良・精神疾患・耳鳴りなどの健康不良を引き起こす可能性もあります。

そのようなカスハラに対して何らの対処をせずに、現場の対応に任せっきりにしてしまうと、従業員が現場対応に対して恐怖・苦痛を感じるようになるというリスクがあります。

カスハラによる健康不安や精神疾患になった結果、従業員が配置転換や休職、退職せざるを得なくなる可能性があります。

 

企業の生産性が下がる

カスハラを放置すると、企業の生産性が低下するリスクもあります。

カスハラへの有効な対処法を整備していない場合には、クレームに対する現場での対応や電話対応したり、謝罪のために顧客のもとを訪問し、社内でのカスハラへの対応方針を検討したりする必要に追われ、業務を遂行すべき時間を浪費してしまうことになります。

従業員が特定の顧客のカスハラに対応している時間は、その従業員は他の重要な業務を行うことができず、会社の機会損失につながります。

また、カスハラを放置した結果、従業員の離職が増えた場合には、新規採用や教育費用などの人員確保のためのコストが発生することになります。

さらに、カスハラ顧客の要求に応じていると、商品・サービスを値下げ・代替品の提供、迷惑料・慰謝料の支払いに対応したりすることで、金銭的な損失も拡大するリスクがあります。

 

会社のブランドイメージが悪化する

さらに、カスハラを放置し続けると、会社のブランドイメージが悪化するリスクがあります。

カスハラを放置すると、来店する他の顧客の利用環境や雰囲気が悪化する可能性があります。

また、カスハラへの対応に追われた結果、他の業務が遅延してしまい、他の顧客がサービスを受けられないという事態が起こる可能性もあります。

このように、企業の利用環境やサービスの低下・悪化によって、店舗や企業のブランドイメージが悪くなってしまうというリスクも懸念されます。

 

 

カスハラ行為者の法的責任とは?

カスハラを行った顧客は、会社や従業員に対して法的責任を負う可能性があります。

カスハラ行為者が負うものとして、刑法上の責任・民法上の責任がありえます。

 

刑法上の責任

カスハラの対応によっては、その言動を行った顧客等が刑法上の罪に問われる可能性があります。

カスハラが該当し得る刑法上の主な罪は次のとおりです。

  • 傷害罪(刑法204条):人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 暴行罪(同208条):暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
  • 脅迫罪(同222条):相手やその親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
  • 恐喝罪(同249条1項):人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役
  • 強要罪(同223条):生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて人に義務のないことを行わせ又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役
  • 信用毀損及び業務妨害(同233条):虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 威力業務妨害罪(同234条):威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条(233条)の例による
  • 不退去罪(同130条):正当な理由がないのに人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金
  • 民法上の責任

カスハラは、民法上の不法行為に該当する可能性があります。

被害者個人や被害を受けた企業は、加害者である顧客に対し、不法行為を理由として損害賠償を求めることができます。

実際に従業員が顧客を訴えた事案は多くはありませんが、カスハラ行為者は被害者に対して民法上の賠償責任を負う可能性があります。

 

 

カスハラ対応の2つの注意点

カスハラ対応の2つの注意点

カスハラで警察は動いてくれない!?

悪質なカスタマーハラスメントは、犯罪に該当する可能性があります。

カスハラが犯罪に該当する場合には、警察に相談することができます。

カスハラ行為は前述のとおり、以下のような犯罪行為に該当する可能性があります。

  • 傷害罪(刑法204条)
  • 暴行罪(同208条)
  • 脅迫罪(同222条)
  • 恐喝罪(同249条1項)
  • 強要罪(同223条)
  • 信用毀損及び業務妨害(同233条)
  • 威力業務妨害罪(同234条) など

上記のような犯罪に該当する場合には、警察に被害届・刑事告訴することで刑事事件として立件され、捜査や容疑者の逮捕に動いてくれます。

しかし、カスハラ行為のすべてが犯罪行為に該当するとは限りません。

例えば、返金や返品などの一定のサービスを要求する行為であっても、大声でわめき立てたたり、何度も繰り返し要求したりする行為は、カスハラに該当する可能性がありますが、必ずしも犯罪に該当するとは言い切れないものです。

そのため、刑事事件に該当しないと判断された場合には、警察に相談しても対応してもらえないおそれがあります。

カスハラ行為によって、会社や従業員が損害を被ったという場合であっても、刑事事件に該当しない場合には、警察は動けません。

警察には、民事不介入の原則があります。

民事不介入の原則とは、個人の財産権の行使・親族権の行使・民事上の契約などは個人間の私的関係たるに止まり、その権利の侵害・債務の不履行などに対する救済は、もっぱら司法権のつかさどるところで、警察権の関与すべき事項ではない、という考え方です。

つまり、警察が、会社と顧客の間で問題となっている賠償責任について、いずれの言い分が正しいかを判断して、正しい方の権利を実現することに協力する、ということはできないということです。

会社や従業員が顧客に対し、損害賠償請求など民事上の責任を追及したいという場合には、以下のように弁護士に相談する必要があります。

ただし、店舗で騒いでいるといった場合など、緊急性を要する場合には、110番をして警察にきてもらうというのは可能ですので、ケースによって検討しましょう。

 

労働問題、カスハラ問題に強い弁護士に相談する

カスハラを行う顧客に民事上の責任を追及したり、警告を発したりしたいという場合には、労働問題、カスハラ問題に強い弁護士に相談することがおすすめです。

労働問題、カスハラ問題に強い弁護士に相談すれば、そもそも「カスハラや犯罪に該当するのか」、「カスハラに該当する場合、どのように対応するのがベストか」などについて、現場の担当者からヒアリングを行い、状況に即した解決策のアドバイスを受けることができます。

会社に損害が発生した場合には、弁護士が会社側の代理人として、カスハラ加害者に対して損害賠償請求をしていくことになります。

加害者側が任意の支払いに応じない場合には、調停や民事訴訟など裁判手続きによって請求していく必要がありますが、弁護士に依頼しておけば引き続き対応を任せておけます。

また、必要に応じて裁判所の命令により電話を架けることの禁止を命じる「架電禁止の仮処分」や、店舗への来店禁止を命じる「訪問禁止の仮処分」を申し立てることも可能です。

さらに、カスタマーハラスメント行為が、暴行罪・脅迫罪・強要罪・業務妨害罪などの犯罪行為に該当すると考えられる場合には、被害届や刑事告訴の手続きについても弁護士にサポートを依頼できます。

 

 

カスハラの撃退法

カスハラ対応マニュアルを整備する

カスハラを撃退するためには、会社がカスハラ対策の取り組みの基本方針や基本姿勢を明確に示す必要があります。

まずは、カスハラから組織として従業員を守るという基本方針・基本姿勢、従業員の対応マニュアルなどを、従業員に周知・啓発・教育することが非常に重要です。

カスハラ対応マニュアルを作成しておくことは、カスハラ被害を受けた際に、慌てず適切な対応をとるためにも有効なものです。

対応マニュアルについては、業態・企業文化・顧客との関係などによって各社で対応方針が異なると思われますが、各社の業務内容・業務形態・対応体制・方針などの状況にあわせて、あらかじめ、対応方法例を準備しておくとよいでしょう。

 

カスハラの相談窓口を設ける

スハラを受けた従業員が迅速に相談ができるよう相談対応者を決めていく・相談窓口を設置し、従業員に広く周知しておくことも必要です。

相談窓口を設けておくことで、従業員からの相談内容や状況に応じて、迅速・適切に対応することができます。

相談窓口の役割としては、相談の受付(一次対応)や、発生した事実の確認、関係部署への情報共有などの役割を担います。

その後、必要に応じて関係部署や外部との弁護士と連携しながら、顧客への対応方法の検討や実施、相談者である担当従業員へのフォローなどを行うことが考えられます。

 

カスハラ行為者を訴える

会社側に何らかの損害が発生した場合には、カスハラ行為者を訴えることも検討する必要があります。

カスハラ行為によって会社側に損害が発生した場合には、カスハラ行為者に、不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

具体的にどのようなカスハラ行為が行われたのかを証明できるように、証拠を収集・保管しておくことが必要です。

カスハラ行為の証拠として利用できるものには、以下のようなものがあります。

  • 録音した音声データ
  • 防犯カメラなどの画像データ
  • 来訪した日時や回数
  • 電話の通話記録ややりとりを記録したメモ

なお、カスハラへの具体的な対応方法などについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にされてください。

 

 

カスハラについてのQ&A

カスハラの暴言の例は?

カスハラに該当する暴言としては、以下のようなものがあります。
  • 命令口調・威圧的な態度:「おい!さっさとやれ!」「何やってんだよ!」
  • 人格や能力の否定:「こんなこともできないのか!」「バカ・無能が」「死ね」
  • 無理な要求:「まだ閉店するな」「すぐ開店しろ」「返品・返金しろ」「迷惑料を払え」
  • 差別的な言動:「ジジイ・ババア」「ハゲ・チビ・デブ」 など

 

 

まとめ

以上、この記事では、カスハラの意味や、具体的な事例、対応の注意点や撃退法などについて、お伝えしました。

カスハラが発生した場合には、すぐに弁護士に相談・依頼できる環境を整えておくことが、企業やそこで働く従業員の安心につながります。

また、弁護士に早期に相談・依頼する体制を整備しておくことで、現場の担当者が1人で問題を抱え込まないようにすることも可能です。

カスハラを含むハラスメントトラブルにお悩みの場合には、ぜひデイライト法律事務所にご相談ください。

当事務所では、会社のハラスメントトラブルに専門的に対応する労働事件チームがあります。 

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