年間休日とは?105日や120日はホワイト? 最低ラインと平均
年間休日とは、会社が定める1年間の休日の日数のことです。
休日については労働基準法に定めがあり、少なくとも法律の要求する日数の休日を設ける必要がありますが、その上で実際にどの程度の日数の年間休日を設けるかは、会社ごとにさまざまです。
そこでこの記事では、年間休日について、その意義や最低ライン、日数ごとの働き方のイメージなどについて、弁護士が解説します。
年間休日とは?
年間休日とは、会社が定める1年間の休日の日数のことです。
簡単にいえば、1年間にどれだけの休みがあるか、ということになりますが、「休日」は労働基準法に定められた概念であり、正確に理解しておかないと、「休暇」や「休職」などと混同するおそれがあります。
年間休日の意味
年間休日とは、会社が定める1年間の休日の日数のことです。
休日とは、労働義務がない日として会社があらかじめ指定した日のことをいいます。
一般的には、就業規則等にいつを休日とするかが定められ、休日を1年間のスパンを通して見たものが、年間休日となります。
年間休日と年次有給休暇の違い
年間休日は、休日として会社があらかじめ指定した日であり、労働基準法に基づいて従業員に与えられます。
一方、年次有給休暇は、労働基準法に基づいて従業員に与えられる点は休日と同じですが、「いつを休みにするか」という時季の判断が、原則として従業員の意思による点で休日と異なります。
時季変更権の行使により、会社が年次有給休暇の取得時期を変更できる場合もあるものの、これはあくまで例外的な措置であり、年次有給休暇は従業員の希望する時季に取得させなければならないのが原則です。
休日と休職の違い
休職は休日と異なり、労働基準法上の根拠がなく、それぞれの会社が独自に定める制度です。
休職も労働義務を負わない点では休日と異なりませんが、休日が単に労働義務からの解放を目的としており、各々の従業員が自由に過ごすのが基本であるのに対して、休職は多くの場合、病気休職やボランティア休職など、特定の事由を原因として休む際の制度とされる点で相違します。
年間休日の最低ラインとは?
年間休日の最低ラインとは、従業員に1年間に与えるべき休日の最低限の日数であり、105日と考えられています。
労働基準法では、従業員に対して週に1日 (又は4週の間に4日)の休日を与えなければならないものとされています (労働基準法35条)。
1年間は52週ですので、この規定により、少なくとも年52日の休日を与える必要があります。
ただし、1日8時間労働を前提とするフルタイム従業員の場合は、別の考慮も必要となります。
労働基準法では、労働時間の上限が1日8時間、1週40時間と定められています (労働基準法32条)。
1日8時間のフルタイムで働いた場合、5日間勤務した時点でその週の労働時間の上限である40時間に達してしまいますので、残りの2日は休日としなければなりません。
つまり、1日8時間労働の場合、実質的には週に2日の休日を与えることが法律上求められているといえるのです。
この点から、年間休日の最低ラインは105日と説明されるのが一般的です。
年間休日の平均とは?
年間休日の最低ラインは105日ですが、実際に従業員に付与される休日の日数は、会社によってまちまちです。
最低ラインぎりぎりの会社もあれば、これを大きく上回る会社もありますので、どの程度の日数が実際の平均なのか、相場が気になるところです。
令和5年就労条件総合調査概況によれば、労働者1人平均年間休日総数は、115.6日とされています。
同調査によれば、企業規模が30~99人のレンジにおいては平均111.2日、1,000人以上のレンジで119.3日となっており、企業規模が大きくなるほど休日の日数も増えています。
企業規模が大きくなると、人員に余裕が出てくることや、いわゆる大手優良企業が含まれてくることなどが、このような結果につながっているものと推測されます。
年間休日は何日あればホワイト?
過労の予防やプライベートの充実といったワークライフバランスの観点から、年間休日の日数を重視される方が増えています。
年間休日の日数は、会社によってかなり幅があります。
何日間の年間休日があれば「ホワイト」といえるかについても、人にとって捉え方が大きく異なり、平均程度の日数が確保されていればそれでよいという人もいれば、平均を大きく超える日数がないとホワイトと感じない人など、さまざまです。
そこで以下では、年間休日に応じてどのような働き方になってくるかを、日数ごとに解説します。
働き方は休日数だけで決まるわけではないため、年間休日はあくまでひとつの要素にすぎませんが、働き方のイメージは持っていただけるかと思います。
年間休日が105日の場合
年間休日が105日というのは、ご紹介したとおり、年間休日の最低ラインとなってきます。
平均すると週に2日の休日が確保されているとはいえるものの、逆にいえば、それっきりということになります。
仮に土日が休日であれば、それ以外には一切休日はなく、夏休みや年末年始の休日がないばかりか、祝日もすべて出勤日です。
逆に、これらの時期にも多少の休みがあるとすれば、その分週休2日が確保されない週も出てくることになります。
労働基準法の最低ラインを下回ってはいないため違法というわけではありませんが、年間休日105日というのはかなり少なく感じられるのではないでしょうか。
年間休日が110日の場合
年間休日が110日の場合、上記の最低ラインに加えて5日の休日があることになります。
週休2日に加えて、年のどこかに計5日の休日があるものの、祝日の多くは出勤することに なる水準ですので、まだまだ少ない日数といえそうです。
年間休日が115日の場合
年間休日115日では、年間休日110日の場合と同じく、週休2日プラスアルファの水準となります。
年間休日が115日の場合、最低ラインに加えて10日の休日があり、このあたりが全体の平均日数でもありますので、周囲との相対的な比較で見ても、少ないとまではいえない日数かもしれません。
とはいえ、年間休日115日では週休2日にプラス10日にすぎませんので、月に均すと、土日以外の休日は月に1日もない程度の水準となります。
年間休日が115日あれば、105日や110日の場合よりは多少のゆとりは感じられるでしょうが、やはり祝日の出勤が発生しますので、まだまだ十分とはいえないのではないでしょうか。
年間休日が120日の場合
1年間の祝日が16日ありますので、年間休日120日は、土日祝のすべてが休みの「カレンダー通り」といわれる水準に相当します。
「ホワイト」の基準は人によって差がありますが、平均を超えていることもあり、120日をホワイトの目安と考える方も多いようです。
しかし、本当に休日がきっちりカレンダー通りとなると、土日祝日のすべてが休日とはなりますが、お盆休みや年末年始の休みは、土曜日・日曜日と、祝日である山の日や元日のみということになってしまいます。
逆に、もし年末年始などに数日の休日があるようであれば、1年のどこかで、土曜日や祝日の中に出勤日とされる日が出てくる計算となります。
このように考えますと、年間休日120日というのは、計算上では土日祝日をすべて休めることにはなりますが、実際には、土曜日や祝日のうち、年に何日かは会社の営業カレンダーで出勤日とされているケースも多いと思われます。
年間休日120日はホワイトの目安として語られることが多いものの、それは「年間休日が120日に満たない会社はブラックである」という意味合いが強いのではないでしょうか。
年間休日が125日の場合
年間休日が125日ですと、カレンダー上の休日である土日祝に加えて、プラス5日の休日となります。
年間休日が125日ありますと、実際に土日祝のすべてが休日という会社も多いと思います。
いわゆる大手企業や優良企業とされる会社でも見受けられる水準であり、このあたりからは、年間休日が少ないという不満は感じにくくなるかもしれません。
年間休日が130日の場合
年間休日が130日の場合、土日祝に加えてさらに10日の休日となりますので、たとえば夏季と年末年始にそれぞれ5日の休日があるといったイメージとなります。
年間休日が130日の会社はそれほど多くないようですので、「ホワイト」といって差し支えないと思われます。
もっとも、土日祝に加えて夏休みと年末年始の休日と考えてみると、少ないとはいえないまでも、多くの休日が与えられているという感じでもなく、このくらいがスタンダードであってほしいという印象もあります。
年間休日が135日の場合
年間休日が135日となると、上記の130日よりもさらに5日の休日が設定されていることになります。
これだけの日数の休日を確保しているとなると、世間の休日に加えて、会社の創立記念日や、いわゆる「飛び石連休」となった際の中日など、会社独自の休日を設定しているものと思われます。
年間休日135日という日数は、明確な意図をもって設定しなければ到達しない水準です。
このため、年間休日が135日あると、経営者に従業員を大切にしようという意識があると想像することができ、休日の日数もさることながら、それ以外の面においても従業員にとって働きやすい社風であることが推測されます。
年間休日のポイント
違反には罰則も
年間休日は、労働基準法上、少なくとも週に1日(または4週で4日) という最低基準が定められています。
この規定に違反した場合、労働基準法違反として、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑罰を科されるおそれがあります (労働基準法119条1号)。
適切な日数の休日が与えられないと、従業員の心身の健康が害されることにもなりかねないため、年間休日は罰則をもって厳しく規制されているのです。
年間休日の最低ラインは目指すべき目標ではなく、下回ると刑事罰の対象となり得る最低限の基準ということに注意してください。
積極的に休日の日数を確保する
年間休日は、最低ラインにこだわることなく、積極的に付与を進めることが重要です。
企業活動は他社との競争でもありますので、できるだけ休日の日数を抑えて、従業員には多く出勤してほしいという考えもあるかもしれません。
しかし、長時間勤務が常態化してしまうと、 生産性や業務効率の低下につながりますし、場合によっては従業員の健康を損なうことにもなりかねません。
また、近年ではワークライフバランスの確保を重視する従業員も増えており、年間休日の日数が少ないと、それだけで敬遠されてしまい、人材獲得競争で不利になることも想定されます。
働き方改革ということが長らく言われ続けているとおり、このような傾向は、今後も社会的なトレンドとして継続していくものと思われます。
年間休日の日数でご紹介したとおり、現在の休日日数の水準は、ホワイトといわれるような企業であっても、まだまだ十分とは言い難いのが現状です。
優秀な人材を確保するためにも、最低ラインや世の中の平均にこだわることなく、積極的に休日を付与することが望ましいといえるでしょう。
労働問題に強い弁護士に相談する
年間休日について疑問がおありの際は、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
休日は労働基準法に基づいて適切に設定する必要があり、もし法律の基準を満たさないようなことがあれば、労働基準法違反となってしまいます。
従業員にとっても、年間休日は重視する度合いの高い労働条件です。
万が一法令の規定に違反するようなことがあれば、法的紛争となることもあり得ますので、年間休日に関してご心配やご不安があるようでしたら、ぜひ一度労働問題に強い弁護士にご相談ください。
年間休日についてのQ&A
年間休日がカレンダー通りはNG?
年間休日がカレンダー通りであれば、日数としては年におよそ120日となり、最低ラインは超えているため違法ではありません。
平均と比較しても極端に少ないわけではありませんが、夏休みがなく、年末年始も元日のみの休みと考えると、やや心もとないともいえそうです。
現在は、10日以上有給休暇のある社員には1年間に5日取得させなければならないというルールもありますので、計画年休を付与することも含めて、年間休日をどのように設定するか検討していくことが大切です。
年間休日が120日でしんどいのはおかしい?
年間休日120日というのは、上記のとおり休日をカレンダー通りとした場合の日数ですので、不足を感じる人がいてもおかしくない水準です。
また、仕事の負荷は休日の日数だけでなく、個人の体力や労働強度などの要因が複合的に関係してきます。
このため、年間休日120日でしんどく感じられるとしても、おかしいとはいえません。
疲労状態があまりにも長く続くようですと、背後に病気が潜んでいたり、今後生活習慣病に発展したりといったリスクもないわけではありません。
もししんどい状態が続くようでしたら、健康診断を積極的に受診するなどして、体調管理に気を付けることが望まれます。
まとめ
この記事では、年間休日について、その意義や最低ライン、日数ごとの働き方のイメージなどについて解説しました。
記事の要点は、次のとおりです。
- 年間休日とは、会社が定める1年間の休日の日数のことをいう。
- 休日は労働基準法に基づいて少なくとも週に1日付与する必要があるが、1日8時間勤務を前提とした場合、年間105日が最低ラインとなる。
- 年間休日120日がホワイトの目安といわれることもあるが、カレンダー通りに休んだ場合の水準なので、必ずしも十分な日数ではないともいえる。
- 年間休日の規定は違反すると罰則が科せられることもある厳しいものであり、年間休日に関して不安がある場合は、労働問題に強い弁護士に相談することがおすすめである。
当事務所では、労働問題を専門に扱う企業専門のチームがあり、企業の労働問題を強力にサポートしています。
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この記事が、労働問題にお悩みの企業にとってお役に立てれば幸いです。