離職票とは?発行方法や届かない場合の対処法|書き方付
「離職票」とは、正式には「雇用保険被保険者離職票」といいます。
雇用保険被保険者離職票は、雇用保険に加入している従業員の方が退職してから再就職や起業するまでの間、基本手当(失業給付金、失業手当)などを受給するために必要となる書類のことです。
会社が退職者個人に発行する退職証明書とは異なり、離職票はハローワークが会社に対して発行する公文書です。
従業員が失業中に基本手当(失業給付金、失業手当)などを受ける際に必要となる書類ですので、従業員が交付を希望しない場合には、離職票は発行されません。
この記事では、離職票の意味や、離職票が必要となる場合、離職票がもらえる条件・もらえない条件、離職票が届かない場合の対処法などについて、労働問題に詳しい弁護士が解説していきます。
目次
離職票とは?
「離職票」とは、正式には「雇用保険被保険者離職票」といいます。
雇用保険被保険者離職票は、雇用保険に加入している従業員の方が退職してから再就職や起業するまでの間、基本手当(失業給付金、失業手当)などを受給するために必要となる書類のことです。
詳しくは後述しますが、離職票を入手したい場合には、退職者が離職前に会社に対して離職票の発行を依頼する必要があります。
そして、会社はハローワークに退職者に関する「離職証明書」を提出することになります。
ハローワークが会社に対して離職票を発行し、会社が退職者宛てに離職票を送付することになります。
このように、離職票は勤務先である会社から退職者個人に宛てて郵送されてくることが一般的ですが、発行自体はハローワークが行っています。
離職票は、基本的に退職してから2週間程度で退職者の手元に届くことになります。
後で詳しく解説しますが、離職票には、「雇用保険被保険者離職票-1(以下、「離職票-1」といいます。)」と「雇用保険被保険者離職票-2(以下、「離職票-2」といいます。)」の2種類があります。
離職票-1は、雇用保険の資格の喪失を通知するための書類です。
これに対して離職票-2は、前職の給与所得や離職理由、被保険者期間などを通知するための書類です。
離職票と退職証明書の違い
離職票と似た書類に「退職証明書」というものがあります。
この退職証明書とは、従業員が会社を退職した事実などを証明するために発行される書類のことを指します。
この退職証明書の発行は、従業員からの請求によって、会社が行わなければならない法的な義務です。
労働基準法には、「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」と規定されています(労働基準法第22条1項)。
このように退職証明書は、会社が作成する書類であるため、従業員が自分で作成することはできません。
「退職の場合において」と規定されていることから、退職証明書は従業員が退職する場合に請求することができる書類です。
そのため、従業員が会社に退職の意思を伝えた後、または同時に交付を求めることができます。
退職証明書に記載されるものは、以下のような内容です。
- 勤務期間
- 業務の種類や内容
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合は解雇理由)
退職時に必ず会社から発行される書類ではないため、退職証明書を必要とする従業員が、会社に対して発行を依頼する必要があります。
ただし、従業員が会社から退職して2年以内に請求しないと、退職証明書の交付を請求できる権利は時効によって消滅してしまうため、注意が必要です(労働基準法第115条)。
このような退職証明書は、一般企業から退職者に対して発行されるものであるため、公的な書類ではありません。
一方で、離職票は従業員が離職状態であると証明できる公的な書類です。
退職証明書の発行元は勤め先である会社です。
一方で、離職票の発行元はハローワークです。
退職証明書は会社から退職者に直接交付されますが、離職票はハローワークから会社に交付され、会社が退職者に送付することになります。
離職票の発行を依頼するために、会社がハローワークに提出する申請書が、離職証明書です。
離職票と退職証明書の違いについては、以下の表のようになりますので、チェックしておいてください。
名称 | 離職票(雇用保険被保険者離職票) | 退職証明書 |
---|---|---|
用途 | 退職者が失業給付の受給手続きを行う際の必要書類 | 従業員が転職先などに退職したことを証明するための書類 |
発行元 | ハローワーク | 会社 |
提出先 | 会社がハローワークから受け取り退職者へ送付 | 退職者 |
文書の種類 | 公文書 | 私文書 |
離職票はどんなときに必要?
離職票は、退職時に交付される書類ですが、従業員が退職する際に絶対に必要となるというものではなく、従業員が失業中に求職者給付を受ける際に必要となる書類です。
失業等給付とは、労働者が失業した場合や雇用の継続が難しくなる事由が発生した場合に、必要な給付を行うとともに、その人の生活・雇用の安定を図るために行われる給付です。
この失業等給付は大きく分けて、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4種類に分けられます。
このうち求職者給付のうち、離職票が必要となるのは、①一般被保険者に対する求職者給付(基本手当)、②高年齢被保険者に対する求職者給付(高年齢求職者給付金)、③短期雇用特例被保険者に対する求職者給付(特例一時金)を受給しようとする場合です。
以下では、離職票が必要となる場合と必要とならない場合について、お伝えします。
離職票が必要となる場合
一般被保険者が「基本手当」を受給する場合
離職票の取得が必要となる場合は、退職後に「基本手当(失業手当・失業保険)」を受給する必要がある方です。
この「基本手当」とは、雇用保険の被保険者であった方が、定年、倒産、契約期間の満了などにより離職し、失業中も安心して生活を送りながら、新しい仕事を探して再就職できるようにするために支給されるものです。
失業中の求職者の生活の安定を図りながら、求職活動を容易にするために支給される給付金が基本手当です。
一般的に基本手当は、失業保険や失業手当と呼ばれることがあります。
基本手当は、一般被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にある場合に受給することができます。
離職の日以前2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上あったときに給付を受けることができます。
「被保険者期間」とは、雇用保険に加入していた期間のうち、離職日からさかのぼった1か月ごとに区切っていった期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。
また、特定受給資格者または特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合には受給することができます。
特定受給資格者とは、倒産・解雇等により、再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた方のことをいいます。
特定理由離職者とは、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことや、正当な理由(心身の障害、妊娠・出産、父母の死亡・疾病など)により自己都合退職により離職した方のことを指します。
なお、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月ない場合は、完全月で賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として計算します(令和2年8月1日以降に離職した方に適用)。
基本手当の受給期間は、原則として離職の日の翌日から起算して「1年間」です。
その間に、「所定給付日数」分を限度として基本手当が支給されます。
所定給付日数については、受給資格がある方で、被保険者であった期間及び離職理由などによって以下の表のとおりです。
【 一般の受給資格者(定年・自己都合等)】
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
---|---|---|---|
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
【 障害者等の就業困難者 】
1年未満 | 1年以上 | |
---|---|---|
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
【 特定受給資格者 】
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
基本手当の日額は、原則として離職前6か月の賃金を平均した1日分の45%〜80%を乗じて得られる額であり、以下のように下限額と年齢区分により上限額が定められています。
【 下限額 】
賃金日額 | 基本手当日額 |
---|---|
2746円 | 2196円 |
【 上限額(令和5年8月1日現在)】
年齢区分 | 賃金日額 | 基本手当日額 |
---|---|---|
30歳未満 | 13890円 | 6945円 |
30歳以上45歳未満 | 15430円 | 7715円 |
45歳以上60歳未満 | 16980円 | 8490円 |
60歳以上65歳未満 | 16210円 | 7294円 |
ただし、以下の事情で今すぐ職業に就くことができない人は受給期間の延長が認められます。
- 妊娠、出産、育児、疾病、負傷、子の看護及び一定のボランティア等の理由により引き続き30日以上職業に就くことができない日がある場合:その日数を受給期間に加えることがでる(ただし、受給期間に加えることのできる日数は最大3年間)。
- 定年退職者等で、一定期間求職の申込みをしないことを希望する場合:その日数を受給期間に加えることができる(ただし、受給期間に加えることのできる日数は最大1年間)。
- 離職後、事業を開始等した場合:当該事業を行っている期間等の日数を受給期間に加える特例を利用できる場合がある(ただし、受給期間に加えることのできる日数は最大で3年間)。
高年齢被保険者が「高年齢求職者給付」を受給する場合
「高年齢求職者給付金」とは、65歳以上の求職者を対象とした失業保険(雇用保険)に該当する給付金です。
通常の求職者への給付金(雇用保険の基本手当)は20歳以上65歳未満を対象としており、65歳以上の人は受給できません。
65歳以上の失業者が受給できる手当が「高年齢求職者給付金」です。
高年齢被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことのできない状態にある場合で、離職の日以前1年間のうちに「被保険者期間」が6か月以上ある場合に、基本手当に代えて、高年齢求職者給付金として一時金を受給することができます。
失業状態というためには、離職し、就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態にあることが必要です。
「被保険者期間」とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていった期間に賃金支払いの基礎となった日が11日以上あるものを1か月として計算します。
なお、賃金支払基礎日数が11日以上の月が6か月ない場合は、完全月で賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として算定します(令和2年8月1日以降に離職した方に限り適用となります)。
【 被保険者であった期間と高年齢求職者給付金の額 】
被保険者であった期間 | 1年未満 | 1年以上 |
---|---|---|
高年齢求職者給付金の額 | 30日分 | 50日分 |
短期雇用特例被保険者が「特例一時金」を受給する場合
特例一時金は、短期雇用特例被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にある場合で、離職の日以前1年間に被保険者期間6か月以上ある場合に、基本手当の 30 日分(当分の間、40 日分)に相当する額が支給されます。
被保険者期間の考え方については、高年齢求職者給付金の場合と同様です。
離職票が必要とならない場合
求職者給付を受給するつもりがない場合や、受給資格がない場合には、離職票の取得は必要ありません。
「失業」とは、離職した方が、「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にある」ことをいいます。
したがって、次のような方は、就職する意思・能力がないものと判断されるため、失業手当等を受け取ることができません。
- 病気やけがのために、すぐには就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
- 昼間学生、または昼間学生と同様の状態と認められるなど、学業に専念する方
- 家業に従事し職業に就くことができない方
- 自営を開始、または自営準備に専念する方(求職活動中に創業の準備・検討を行う方は支給可能な場合があります)
- 次の就職先が決まっている方
- 雇用保険の被保険者とならないような短時間就労のみを希望する方
- 自分の名義で事業を営んでいる方
- 会社の役員などに就任している方(就任の予定や名義だけの役員を含む)
- 就職・就労中の方(試用期間も含む)
- パート・アルバイト中の方(週当たりの労働時間が20時間未満の場合は支給を受けられる可能性があります)
- 同一事業所で就職・離職を繰り返しており、再び同一事業所に就職の予定がある方
離職票はいつ届く?
離職票を取得するためには、あらかじめ退職する会社に、離職票の交付を依頼しておく必要があります。
退職者が事前に離職票の交付を頼んでいる場合であれば、一般的に退職してから通常14日〜20日程度で会社から離職票が送付されることになります。
会社は従業員が退職した翌日から10日以内にハローワークに離職証明書を提出しなければなりません(雇用保険法第7条、同施行規則第7条)。
離職票はハローワークから会社に対して送付され、その後、退職者本人の手元に送付されることになります。
したがって、通常であれば、2週間程度で退職者の手元に届くと考えられます。
離職票をもらえない〜もらえる条件とは?
離職票がもらえる条件
退職者が離職票の交付を希望している場合
退職者が離職票の交付を希望している場合には、会社は離職票を発行する必要があります。
離職票の交付は、正社員のみならず、アルバイトやパートタイム従業員も対象となります。
退職者が59歳以上の場合
59歳以上の退職者には「高年齢者雇用継続給付金」の申請に必要なため、必ず離職票を発行する必要があります。
高年齢者雇用継続給付金は60歳以上65歳未満の人が対象の給付金です。
離職票の提出により60歳時の賃金を証明でき、それに基づいた給付金額が決定されることになります。
離職票がもらえない条件
退職者が雇用保険に加入していない場合
離職票は、失業した労働者が失業手当を申請する場合に必要となる書類です。
失業手当の支給は、雇用保険に加入していた労働者が対象です。
そのため、退職する従業員が雇用保険に加入していない場合には、離職票を発行する対象とはなりません。
退職者が離職票の発行を希望していない場合
離職票は、雇用保険に入っている人すべてが発行対象となるわけではありません。
退職する従業員が会社に離職票の交付を希望しない場合には、受け取ることができません。
退職者が離職票の交付を希望しない場合には、離職票の代わりに「雇用保険資格喪失確認通知書」が会社から送付されることになります。
離職票が届かない場合の対処法
会社に問い合わせる
退職から2週間が経過しても離職票が自宅に送られてこない場合には、まずは、会社に問い合わせてみましょう。
離職票は、退職する従業員が会社に交付を申請しなければ、送付されません。
離職票の交付を希望していることを伝えていなかった場合や、会社の担当者が把握していない場合には、必要な手続きがなされていないおそれがあります。
ハローワークに確認・相談する
会社が期限までに適切に離職証明書をハローワークに提出している場合には、ハローワーク側の手続きが遅れている可能性もあります。
特に、年度末など退職者が多い時期・タイミングでは、離職票の発行手続きに遅延が発生していることがあります。
また、会社での手続きが遅れている場合や会社が離職票の発行を拒んでいる場合、ハローワークに相談することで離職票の交付を促してもらえることもあります。
弁護士に相談する
企業と不当解雇の争いをしている場合など、失業手当の受給の要件を満たしているのに離職票の交付を会社が拒否しているというケースもあります。
退職者が失業手当を受給するためには、期限内に適切に申立てる必要があります。
会社が離職票の交付を拒んでおり、ハローワークからの要請にも応じないという場合には、弁護士に相談したうえで、対応を任せるようにしましょう。
離職票の発行の流れ
①会社が退職者に離職票の要否について確認する
会社を退職する従業員が離職票の交付を希望する場合には、従業員から会社にその旨を伝える必要があります。
ただし、退職する従業員が離職票の重要性を正確に認識していない可能性があります。
そのため、会社の担当者は、退職者に対して離職票の交付を希望しているかどうかを確認する必要があります。
ただし、退職者が59歳以上の場合には、本人の希望を確認することなく、必ず離職票が交付できるように手配する必要があります。
②会社が離職証明書・雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出する
離職票の要否について確認がとれたら、人事・労務の担当者は離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を作成する必要があります。
会社は、離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届、添付書類をあわせて、所轄のハローワークに提出する必要があります。
退職後の翌日から10日以内に提出する必要があります。
離職票の発行は雇用保険法に定められた会社の義務であるため、正当な理由なく手続きが遅れた場合は罰則が科せられるおそれがあります。
③ハローワークから会社に離職票が届く
所轄のハローワークで提出した各種書類の内容が精査され、問題がなければ離職票−1と離職票−2が会社へ送付されます。
④会社が退職者に離職票を送付する
会社がハローワークから離職票を受け取った場合、内容に問題がないことを確認できたら、速やかに離職票を退職者に送付する必要があります。
従業員はすでに退職しているため、自宅に郵送されることが一般的です。
引越し・転居によって本人に郵送されないということがあるため、離職票の送付先住所や退職後の連絡先については、事前にヒアリングしておくことが重要です。
退職者の手元に届いた離職票の内容に納得できない場合には、ハローワークに対して手続きをする必要があります。
例えば、会社都合退職であるのに、自己都合退職扱いになっているなど正しい退職理由の離職票が発行されていない場合には、ハローワークに異議申立てをする必要があります。
退職理由は失業保険の受給内容に影響する可能性があるため、離職票の内容はきちんと確認しましょう。
離職票の見本と書き方
離職票-1
離職票は「離職票-1」と「離職票-2」の2種類があります。
2つは別々の用紙ですが、両方をセットにしてハローワークの窓口へ提出する必要があります。
「離職票-1」は、「雇用保険資格喪失通知書」と兼用になっており、雇用保険被保険者番号や入退社年月日などが印字されています。
「離職法-1」には会社の記載欄はありません。
また、退職者がマイナンバー(個人番号)や金融機関情報を記入する箇所があります。
金融機関の口座番号などは事前に記入しておくこともできますが、個人番号はハローワークへ来所してから記入できますし、通帳を持参すれば金融機関の確認印が不要となります。
離職票-2
会社は、退職者が離職票の交付を希望する場合には、離職証明書をハローワークに提出しなければなりません。
この離職証明書が、退職者に渡す「離職票-2」の複写元となる書類です。
「離職票-2」はA3の3枚つづりの複写用紙のうちの1枚で、離職日以前の賃金支払い状況や離職理由などが書かれています。
「離職票-2」を含む複写用紙の離職証明書は、次のような構成になっています。
- 1枚目:離職証明書(会社の控え用)
- 2枚目:離職証明書(ハローワークへの提出用)
- 3枚目:離職票-2(退職者への送付用)
離職票-2の具体的な記載項目と記載内容については、以下のとおりです。
退職者の雇用保険被保険者証を確認しながら、雇用保険被保険者番号を記載します。
退職者が1981年7月6日以前に雇用保険に加入している場合、被保険者番号は16桁になっている可能性があります。
その場合は、下段の10桁の数字を記載し、残りの一枠は空欄にしてください。
この欄には、倒産や定年、労働契約期間満了、労働者の判断など6種類19パターンの離職理由が記されています。該当するものにチェックを付けたうえで、「具体的事情記載欄」に具体的な内容を記載しましょう。
ハローワークでは、この離職理由によって、退職者が倒産や解雇などによって再就職の準備をするための時間的余裕がなく退職する「特定受給資格者」か、期間の定めのある労働契約を更新されなかった等やむなく退職した「特定理由離職者」に該当するかを判断し、基本手当の所定給付日数が決定されることになります。
A 一般被保険者等:一般被保険者又は高年齢被保険者の方が該当します。
ア 「離職日の翌日」欄には、④欄の翌日を記入してください。
イ 左側の月日欄には、離職日の属する月から遡った各月における「離職日の翌日」に応当する日を記入してください。もし、対応する日がない場合は、その月の末日を記入してください。
ウ 右側の月日欄には、離職日に応当する日を記入してください。もし応当する日がない場合は、その月の末日又は末日の前日を記入してください。
エ 離職日以前2年間(高年齢被保険者の場合は1年間)について(24か月まで)記入しますが、⑨欄の日数が11日以上の完全月が12か月以上(高年齢被保険者の場合は6か月以上)あればそれ以前の期間は省略できます。
離職日が令和2年8月1日以降であって、⑨欄の日数が11日以上の完全月が12か月以上(高年齢被保険者の場合は6か月以上)ない場合は、⑨欄の日数が10日以下の期間について、当該期間における賃金支払の基礎となった時間数を⑬欄に記入してください。
B 短期雇用特例被保険者:
離職した月から順次さかのぼって暦月を記入してください。
⑧の期間に賃金支払の基礎となった日数を記入してください。
有給休暇も算入し、半日でも1日として計上します。
月給者については、月間全部を拘束する意味の月給制であれば30日(28日、29日、31日)の暦日数となり、1か月中、日曜、休日を除いた期間に対する給与であればその期間の日数となります。
賃金締切日の翌日から賃金締切日まで記入してください。
離職日以前2年間を記入します。
ただし、完全月で⑪欄の基礎日数11日以上が、6か月以上あればそれ以前は省略できます。
離職日が令和2年8月1日以降であって、⑪欄の日数が11日以上の完全月が6か月以上ない場合は、⑪欄の日数が10日以下の期間について、当該期間における賃金支払の基礎となった時間数を⑬欄に記入してください。
なお、労働者が船員の場合で、乗船・下船時等で大きく変動する賃金が定められている場合は、完全月で⑪欄の基礎日数11日以上の月が12か月必要な場合があります。
⑩の期間に賃金支払の基礎となった日数を記入してください。
有給休暇も算入し、半日でも1日として計算します。
被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数と同様、ここでも月給制は期間中の全日数、時給制や日給制は実働日数のみ記入してください。
A欄:賃金が月または週等により定められている場合
月給者で変動手当(超過勤務手当等)のみが翌月払いである場合は、その額を当月に算入してください。
また、通勤手当を複数月分まとめて支払う場合は、該当月数で割り、それぞれの月に算入してください。
B欄:賃金が日、時間、出来高による場合にそれぞれ記入してください。
また、月決め手当と日給と両方ある場合は、AB欄に区別して記入し、AB欄の合計額を計欄に記入してください。
なお、主たる賃金とその他の諸手当の賃金締切日が異なる場合は、主たる賃金の賃金締切日により記載し、その他の諸手当は主たる賃金の賃金締切日に合わせて再計算した額を記入してください。
毎月決まって支払われる賃金以外の賃金のうち、3か月以内の期間ごとに支払われるもの(以下「特別の賃金」)がある場合に、⑧欄に記載した期間内に支払われた特別の賃金の支給日、名称および支給額を記入してください。
なお、記入しない場合には斜線を引いてください。
離職票についてのQ&A
離職票は退職前にもらえるか?
離職票を退職日より前にもらうことはできません。
離職票が交付されるためには、会社がハローワークに対して離職証明書を提出する必要があり、その提出期限は、退職日の翌日から10日以内です。
会社は「被保険者でなくなったことの事実及びその事実のあった年月日を証明することができる書類」の提出が必要となるため、被保険者でなくなった日(退職日の翌日)より前に離職証明書を提出することはできません。
離職票は必ずもらえるものなのですか?
離職票は必ずもらえるものとは限りません。
以下のような場合には、離職票をもらうことはできません。
- 退職者が雇用保険に加入していない
- 退職者が離職票の交付を希望していない
まとめ
「離職票」は、退職者が失業給付を受けるために必要な書類です。
会社は、雇用保険に加入している希望者には速やかに発行しなくてはなりません。
失業手当を受給するのに必要な離職票がもらえない場合には、基本的にはまずハローワークに相談する必要があります。
離職票の発行や、その他会社と従業員の関係に関してお悩みの場合には、労働問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
デイライト法律事務所には、労働問題の経験豊富な労働事件チームがあります。
ZoomやGoogleMeet等を用いたオンライン相談も承っており、全国対応をしておりますので、経営者や人事担当者の方はぜひ一度デイライト法律事務所にご相談ください。