高度プロフェッショナル制度とは?~働き方改革関連法~
高度プロフェッショナル制度とは
今月、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が成立しました。
今回の改正の柱は、長時間労働の是正、同一労働同一賃金、脱時間給、柔軟な働き方がしやすい環境整備・転職や再就職支援の4つとなっています。
ここでは、高度プロフェッショナル制度について触れていきます。
⾼度プロフェッショナル制度は、⾼度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で⼀定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本⼈の同意を前提として、年間104⽇以上の休⽇確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休⽇及び深夜の割増賃⾦に関する規定を適⽤しない制度です。
概要
当該制度は、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするという目的で制定されたとされています。
言い換えると、労働者の能力発揮と生産性の向上といえます。
当該制度には批判も多いところですが、その点については使用者が健康管理のための措置を講ずるというところでバランスが取られています。
法的効果
当該制度が適用されると、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定の適用が除外されるという法的効果が生じます。
ただし、適用のためには多くの要件を満たさなければなりません。
対象者
年収
現時点での政府の発表では、1075万円以上であることを要求しています。もっとも、これだけの年収であれば誰でもよいわけではありません。
業務
条文上は、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるもの」とされています。
具体的には、金融商品の開発業務、ディーリング業務、アナリスト、コンサルタント、研究開発業務等が挙げられています。
ディーリング業務というと典型的なのは銀行や証券会社が行う外国為替取引などです。
この場合、成功すれば巨額の利益を確保できる反面、失敗すれば億単位の損失が発生してしまいます。
常に変わる世界情勢に目を配りながら要所で冷静な判断が求められるわけですので、当該制度で求められる労働者の能力がいかに高度なものが要求されているかがわかると思います。
同意の撤回
労働者は、自主的に当該制度から離脱できるよう、同意を撤回することができます。
健康管理のための措置
健康管理時間の把握
健康管理時間とは、当該制度の適用を受ける労働者が事業場内にいた時間と、事業場外において労働した時間の合計時間のことをいいます。
つまり、使用者は、労働者がどれだけの時間業務に当たっていたかをきちんと把握しておかなければなりません。
その他
使用者は、労働者に対し、1年間を通じて104日以上かつ4週間を通じ4日以上の休日を付与しなければなりません。
また、使用者は、
①始業期間から24時間を経過するまでに一定時間以上の継続した休息時間の確保(いわゆる勤務間インターバル)かつ深夜業の回数の制限、
②1か月または3か月の健康管理時間の制限、
③1年に1回以上の継続した2週間の休日の付与、
④一定の労働者に対する健康診断の実施のいずれかを選択して講じる必要があります。
注意が必要なのは、1週間当たり40時間を超えた労働をしたときに、その超えた時間が100時間を超えた場合(つまり、1週間で通算140時間以上の労働をした場合)、医師による面接指導の対象になります。
これに違反すると使用者に罰則が科せられる点に注意が必要です。
手続的要件
おおまかではありますが、以上の要件について、設置した労使委員会の5分の4以上の賛成による決議を得、行政官庁に届け出るとともに、これを作業場に掲示するなど周知したうえで、各労働者から個別の同意を得なければなりません。
押さえるべきポイント
当該制度は、その法的効果から、「残業代を払わなくてよくなる」「時間管理をしなくてよくなる」と指摘されますが、この指摘は若干不正確です。
まず、前述したように、当該制度の目的は労働者の能力発揮と生産性の向上にあります。
高い能力を持った人材というのは、会社としても高い報酬を支給するだけの価値が見出せるという判断があってこその当該制度です。そのため、「人件費を削減したい」という目的で当該制度を利用することはそもそも間違っています。
また、残業代を払わなくてよいということ自体は間違いではありませんが、それ相応の報酬を支給する以上実益のある考え方ではありません。
次に、労働者が健康を損ねないよう、使用者は通常よりも一層時間管理をしておく必要があります。そのため、時間管理をしなくてよい、という考えで当該制度を利用することがあってはなりません。
以上を踏まえたうえで、優秀な人材をどのように評価していくかを企業として考え行く必要があります。