会社が倒産したら未払いの給料はどうなりますか?【弁護士が解説】
賃金が支払われないまま会社が倒産した場合、一定の条件を満たせば、従業員の方は、国の立て替え払いにより、賃金の一部を支払ってもらうことができます。
会社が倒産した場合の未払い給料保証
会社が倒産した場合、労務管理上特に問題となるのは、給料の未払いです。
会社が倒産したために、給料を受け取らないで退職した人に対しては「未払賃金の立替払制度」があります。
この制度は、国(労働省健康安全機構)がその未払賃金の一部を事業主に代って支払う制度です。
ただし、労働者個人が請求することによって、初めて立替払いがなされます。
未払賃金立替払制度について
この立替払いを受けることができるのは、次の要件を満たしている場合です。
勤め先の要件
- ① 1年以上事業活動を行っていたこと
- ② 倒産したこと
倒産には、大きく分けて「法律上の倒産」と「事実上の倒産」の2つの場合があります。
詳しくは「倒産とは」を参照して下さい。
労働者の要件
- ① 裁判所への破産申立、または、労働基準監督署長への認定申請が行われた日の6か月前から2年の間に退職していること
- ② 定期的な賃金、および、退職金(退職手当)の未払分が総額2万円以上あること
例えば、会社が整理解雇を行い、それから1年後に破産申立てが行われた場合、この立て替え払い制度は利用できません。
そのため、会社やその申立て代理人となる弁護士は、破産を決めた場合、できるだけ早く申立を行うように注意しなければなりません。
請求期間
裁判所の破産等の決定、または、労働基準監督署長の倒産の認定があった日の翌日から起算して2年以内です。
この期間を過ぎると立替払いを受けることはできません。
立替払される金額
立替払される金額は、未払賃金総額の8割です。
ただし、未払賃金総額には下表のとおり、退職日の年齢に応じて限度額が設けられており、未払賃金総額が限度額を超える時は、その限度額の8割となります。
退職日における年齢 | 未払賃金総額の限度額 | 立替払上限額 |
---|---|---|
45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
倒産とは
法律上の倒産
法律上の倒産とは、破産法に基づく破産手続きの開始、民事再生法に基づく再生手続の開始、会社更生法に基づく更生手続の開始、会社法に基づく特別清算の開始について裁判所の決定または命令があった場合を言います。
この場合は、破産管財人等に倒産の事実等を証明してもらう必要があります。
必要な用紙は労働基準監督署に備え付けてあります。
事実上の倒産
法律上の倒産の他に、事実上の倒産とみなされる場合もあります。事業活動に著しい支障が生じたために、労働者に賃金を支払えない状態になったことについて労働基準監督署長の認定があった場合は、事実上の倒産に陥ったとみなされます。
この労働基準監督署による認定は賃確法(賃金の支払の確保等に関する法律)に基づき、中小企業を対象として行われるものです。
賃確法による破産認定の基準は以下の通りとなっています。
①会社の事業活動が停止し、再開する見込みがないこと。
②会社に賃金の支払能力がないこと。