賃金・退職金関連の書式の書き方・見本一覧【弁護士が解説】
賃金等のお金の問題は、労使トラブルに発展しやすいため適切な書類を整備しておくことがポイントとなります。
例えば、賃金の支払い方法があげられます。
賃金を支払う義務を負っているのは会社ですので、後々トラブルにならないように、支払い方法についての書面を整備しておくことをおすすめいたします。
また、会社が従業員に対して貸付金や損害賠償請求権などの債権がある場合、これと給与や退職金と相殺できないかが問題となります。
さらに、会社が本来支払うべき給与よりも多く支払っていた場合、その返還や給与との相殺についてもトラブルになりやすい状況です。
このようなトラブルを防止するために、適切な書類を作成して、保存しておくことが重要となります。
目次
テンプレートのダウンロード
ここでは、賃金・退職金にまつわる書式を紹介させていただきます。
デイライト法律事務所の労働事件チームは、企業側専門の労務弁護士として、多くの企業や社労士の方からご相談が寄せられています。
労務管理の基本的な書式集の他、労働組合対応、問題社員対応、ハラスメント関連の書式集なども整備しており、労務書式集としては全国最大級のものであると自負しております。
これらはすべて無料でダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。
ただし、書式の使用は、弁護士が使用する場合、又は、企業の方が自社において使用する場合のみとさせていただきます。
その他の場合、非弁行為(弁護士法違反)等、法令に違反する可能性があるため使用は認めておりません。
なお、書式はあくまでサンプルです。
個々のケースによって、最適な書式の内容は異なりますので、より詳しくは専門家にご相談ください。
ご相談の流れはこちらから。
※書式については、その適法性等を保証するものではありません。
賃金の預金口座振込に関する協定書
本様式は賃金を銀行振込により支払う場合の労使協定書です。
現在、賃金を銀行振込により支払うのは当たり前のように行われています。
しかし、法律上、賃金は、「通貨」で、「全額」を、「労働者に直接」支払わなければなりません。
そして、銀行振込を行う場合は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数の代表者)と、協定を締結することが必要となります(平10.9.10 基発第530号、平13.2.2 基発第54号)。
また、関連して、賃金交渉について詳しくはこちらをご覧ください。
銀行振込依頼書
本様式は、労働者が銀行振込を会社に依頼する際の書面です。
口座振込み等は、書面による個々の労働者の申し出又は同意により開始し、その書面には、所定の事項が記載されていることが必要となります(平10.9.10 基発第530号、平13.2.2 基発第54号)。
また、関連して、賃金交渉について詳しくはこちらをご覧ください。
賃金控除協定書
本様式は賃金から互助会費等を控除する場合の労使協定書です。
賃金から親睦会費等を控除することは多くの会社で当たり前のように行われています。
しかし、法律上、賃金は、「全額」を支払わなければなりません。
そして、賃金からこれらの費目を控除するには、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数の代表者)と、協定を締結することが必要となります(労基法24①)。
また、関連して、賃金交渉について詳しくはこちらをご覧ください。
相殺申入書
本様式は労働者が使用者より借り入れている金員と、退職金とを相殺する旨の書面です。
たとえ、使用者が労働者に対して債権を持っていても、一方的な意思表示による相殺は、「賃金全額払い」の原則に反し、違法となります。
これに対し、最高裁判例によると、「相殺が労働者の自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するときは、上記原則に反しません(最高裁平成2年11月26日)。
そこで、使用者としては、相殺する場合、それが労働者の自由意思であることを裏付ける資料を作成しておくべきです。
また、関連して、解雇・退職について詳しくはこちらをご覧ください。
退職金放棄の申入書
本様式は労働者の会社に対する退職金請求債権を放棄する旨の書面です。
様式C4の相殺申入書を応用したものです。
また、関連して、解雇・退職について詳しくはこちらをご覧ください。
過払賃金に関する合意書
本様式は会社が労働者に対して賃金を支払い過ぎていた場合に、過払い部分を返還することを約する合意書です。
過払賃金については、振込みによる方法、賃金からの控除による方法が考えられますが、本様式はそのうちの振込みによる方法を採った場合に使用するものです。
また、関連して、賃金交渉について詳しくはこちらをご覧ください。
過払賃金に関する合意書
本様式は会社が労働者に対して過払賃金を請求する際に、控除による方法を採った場合に使用するものです。
賃金については、賃金全額払いの原則があるため、原則として賃金から過払い部分を控除することはできません。
もっとも、使用者が過払いを受けた本人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在する場合には、全額払いの原則には反しません(最半H.2.11.16)。
ただし、慎重を期すために労使協定をすべきです(労働基準法第24条1項ただし書き)。
また、関連して、賃金交渉について詳しくはこちらをご覧ください。
在職・年間収入(見込)証明書
本様式は、労働者から労働者として会社に所属している旨の証明及び年間収入に関する証明を求められた際に使用する書面です。
労働者の離婚事件や扶養控除の切り替えが必要になる場合等に発行を求められることがあります。
以上、賃金の支払い方法の書式、賃金から会費を控除するための協定書、賃金等と相殺するための書式、過払い金の精算のための書式等をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
人事上の問題は会社側に大きなリスクをもたらす可能性があります。
このホームページでご紹介している情報が企業や弁護士の皆さまのお役に立てれば幸甚です。