雇用契約書がない場合どうなる?違法性やデメリットについて
目次
雇用契約書がない場合、違法になる?
そもそも、雇用契約書とは、使用者と労働者の間で締結する雇用契約の内容を明らかにした上で、その内容に双方合意したことを示す書面のことをいいます。
結論から申し上げると、雇用契約書がない場合でも、その事実から直ちに違法にはなりません。
雇用契約は、労働者が労働に従事すること約束し、使用者が労働者の労働に対して報酬を与えることを約束することによって成立する契約であり、口頭でも契約自体は成立する契約(このような契約を「諾成契約」といいます。)です。
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
引用元:民法|e−Gov法令検索
もっとも、使用者には、以下の労働条件を明示する義務があります(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項)。
労働者へ明示すべき労働条件
必ず明示すべきもの (原則書面交付が必要) |
企業がその定めをする場合のみ明示すべきもの (口頭の明示でも良い) |
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特に、上記の①〜⑦の事項については、原則書面で交付しなければならないので、雇用契約書を作成せず、労働条件通知書も作成していない場合は、労働基準法15条1項違反となり、30万円以下の罰金が課せられる可能性があるため(労働基準法120条1号)、違法なものといえます。
労働条件の明示について、詳しくはこちらをご覧ください。
ワンポイント解説!〜雇用契約書と労働条件通知書の違い〜
労働条件通知書とは、雇用契約を締結するに際し、使用者から労働者へ労働条件を明示した書面をいいます。
雇用契約書との大きな違いは、雇用契約書は性質が「契約書」であるため双方の署名押印があるのに対し、労働条件通知書は使用者から労働者に対して労働条件を一方的に通知するものなので、少なくとも労働者の署名押印は不要だということです。
労働条件通知書は、あくまで使用者から労働者に対して労働条件を一方的に通知するにとどまるため、労働者が本当にその労働条件で合意したかどうか後々争いになることも少なくありません。
その点につき、雇用契約書は、労働条件について双方合意の上で署名押印するものなので、労働条件通知書よりも優れているといえます。
なお、企業によっては、「労働条件通知書兼雇用契約書」という表題にした契約書を作成しているところもあるかと思いますが、文字通りどちらの性質も兼ね備えた書面であり、このような書面で対応する方法も良いです。
以下、雇用契約書と労働条件通知書の性質をまとめています。
雇用契約書 | 労働条件通知書 | |
---|---|---|
内容 | 使用者と労働者の間で締結する雇用契約の内容を明らかにした上で、その内容に双方合意したことを示す書面 | 雇用契約を締結するに際し、使用者から労働者へ労働条件を明示した書面 |
双方の署名押印の有無 | 必要 | 不要 |
書面を作成しない場合の違法性 | 適法(※1) | 違法(※2) |
(※1)雇用契約書以外に労働条件明示義務(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項)を果たす書面(例えば、労働条件通知書)があることを前提としています。労働条件明示義務を果たす書面すらなければ違法になります。
(※2)労働条件通知書以外に労働条件明示義務(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項)を果たす書面を全く作成していないことを前提としています。例えば、別途雇用契約書を作成していて、その雇用契約書に明示すべき労働条件が全て記載されている場合は適法になります。
なぜ雇用契約書は必要なのか
上記のとおり、雇用契約書を作成しなかったとしても、その事実から直ちに違法ではありません。
もっとも、以下の観点から、雇用契約書は作成した方が望ましいです。
(1)使用者と労働者の信頼関係の構築
労働者の観点から言えば、労働条件が不明確なままで就業を開始するのはとても不安なことです。
使用者として、労働者にそのような不安を持たせながら、労働者に素晴らしい働きを期待するのは、虫が良すぎるかもしれません。
雇用契約書を作成し、お互い労働条件を明確に把握することによって、使用者と労働者の信頼関係を構築して、労働者に気持ち良く仕事をしてもらいましょう。
(2)企業のイメージ
雇用契約書を作成せず、労働条件を曖昧にすることによって、労働者は不平・不満を持つことが多いです。
そのような労働者は、周りに噂話を広げたり、SNS等で不平・不満を漏らすかもしれません。
このような労働者の行動の是非はさておき、そうなった場合は「労働条件を書面にしてくれない会社」という企業のマイナスイメージに繋がりかねません。
(3)雇用契約書は企業を守るものでもある
雇用契約書は、基本的に労働者のために作成されるものではありますが、企業を守る側面もあります。
例えば、以下の事例では、雇用契約書の記載によって企業が守られるものと言えます。
- A社では、事業所内の清掃業務を主にBさんが担当していたが、Bさんが退職することになった。
- A社は、Bさんの代わりに新たな従業員を採用するまでの一時的な期間、それまで来客対応を主に行っていたCさんに事業所内の清掃業務も兼務してもらうことにした。
- しかし、A社の経営者がCさんに清掃業務を兼任するようにお願いしたところ、Cさんは、「これまで一度も清掃業務をしたことないし、そもそも私の業務ではない。」と言って拒否してきた。
- A社の経営者がCさんの雇用契約書を確認したところ、「業務内容」の欄に、「事務一般(来客対応、電話受付、記録整理、清掃業務等)」と記載されていた。
この場合は、雇用契約書にCさんの業務内容として清掃業務も記載されているため、A社の経営者は、業務命令として適法にCさんに清掃業務を指示できます。
上記のように、何かトラブルが起きた場合等に、雇用契約書の記載を根拠に業務命令を行えるため、雇用契約書は企業を守るものでもあります。
雇用契約書がない場合のデメリット
企業側のデメリット
(1)労働条件明示義務との関係
上記のとおり、企業側は、法的義務として、労働条件明示義務(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項)を負っています。
最低限、労働条件通知書を作成して当該義務を果たしていれば良いですが、それすら行っていない場合は違法となり、使用者は30万円以下の罰金が課せられる可能性があります(労働基準法120条1号)。
(2)口頭だけだと不明確になってしまう
口頭だけで雇用契約の内容を合意したとしても、後に、「言った、言わない。」の争いになることが多々あります。
実際に「言った、言わない。」を明らかにするには、雇用契約の内容を双方で話した場面の録音等の客観的な証拠が必要ですが、現実的に考えて、そのような客観的な証拠が存在することはそれほど多くありません。
(3)試用期間の関係
試用期間とは、入社した労働者の本採用決定前までの期間のこといいます。
試用期間に労働者の人物、業務遂行能力、勤務態度等を評価して当該会社の社員としての適正を判断します。
試用期間の長さに格別の制限はありませんが(※)、概ね1〜6ヶ月の間で設定することが多いように思われます。
(※)ただし、合理的のない長期の試用期間は、公序良俗違反(民法90条)として無効になる可能性があります。裁判例でも、6か月から1年3か月の見習い社員期間終了後、さらに試用社員として6か月から1年の試用期間が課された事案では、少なくとも試用社員としての試用期間(後半にプラスされた6ヶ月から1年の部分)は、公序良俗に反し、無効と判断されました(名古屋地判昭和59年3月23日労判439号64頁、ブラザー工業事件)。
試用期間の内容は、通常、就業規則に記載しておけば足りますが、念の為、雇用契約書にも試用期間の内容を記載しておかないと、労働者が試用期間について理解しないまま就業を開始してしまう恐れがあります。
雇用契約書(および就業規則)に記載する試用期間の事項については、以下のものが考えられます。
雇用契約書に記載する試用期間の内容の例
- 試用期間中の賃金
- 試用期間の長さ
- 試用期間の延長の有無、延長がされる事由
試用期間中の解雇の問題については、こちらをご覧ください。
(4)業務命令権の関係
使用者は、雇用契約の内容や就業規則の記載を根拠に、労働者に対し、業務の遂行全般について必要な指示・命令を発することができます。
この使用者の権利を、業務命令権といいます。
雇用契約書がない場合、雇用契約の内容が不明確になることから、どこまでの範囲の業務命令権があるかも分かりにくくなります。
2024年4月1日施行の労働基準法施行規則により、従事すべき業務に関する事項に加え、業務の変更の範囲を記載しなければならなくなります(改正後労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3)。
業務の変更の範囲とは、将来、業務内容が変更し得る場合にその内容を記載するというものです。
このように記載をしておけば、後に営業職として雇用した方にも、会計業務を任せることもできます。
業務命令権の範囲の解釈にも関わるところなので、雇用契約書の記載の仕方には細心の注意を払うようにしてください。
(5)配置転換・転勤の関係
配置転換とは、同一勤務地内の所属部署の変更や職種の変更のことをいいます。
転勤とは、勤務地の変更のことをいいます。
配置転換と転勤を合わせて「配転」と呼びます。
配転が可能なことは、通常、就業規則上に記載しておくものですが、雇用契約時に、配転があり得ることを労働者にしっかり説明した上で、雇用契約書にも配転があり得ることを記載することが望ましいです。
配転は、労働者の職務内容や勤務地が変更されることから、労働者に理解が得られず、トラブルになる可能性があるものです。
そのようなトラブルを防ぐためにも、雇用契約書に配転の可能性を記載しておくことが重要だと考えます。
2024年4月1日施行の労働基準法施行規則により、雇入れ直後の就業場所に加え、就業場所の変更の範囲を記載しなければならなくなります(改正後労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3)。
この変更の範囲は、配転(その中でも特に転勤)の有効性を基礎付けるものになりますので、記載の仕方は工夫すべきです。
例えば、全国転勤があり得るような会社では、以下のような記載が適切です。
(6)固定残業代の関係
固定残業代とは、法定外残業、休日労働、深夜労働の各残業代として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額のことです。
固定残業代には、①定額手当制(基本給とは別に残業代の対価として、◯◯手当を支払う形態)と、②定額給制(基本給の中に残業代を組み込む形態)の2種類があります。
固定残業代は、無駄な残業を抑制したり、一定の給与計算の手間を省くなどの企業にとってのメリットがあります。
もっとも、固定残業代の有効要件は、裁判例で非常に厳格に判断されています。
有効要件欠いた固定残業代の場合は、最終的に残業代の支払いとして認められず、追加で残業代を支払わなければならない等のリスクがあります。
固定残業代の有効要件については、諸説あるところですが、一般的に以下のように考えられています。
- ① 所定内賃金の部分と割増賃金の部分を明確に区別できるようにすること
- ② 割増賃金の部分が、何時間分の時間外労働等をカバーするのか(ただし、法令を下回るような設定をしてはいけない)を明示することが必要
- ③ そのカバーする時間分を超える時間外労働等には、別途上乗せして割増賃金を支払う合意がなされていること
固定残業代を導入している企業が注意すべきなのは、雇用契約時に、固定残業代の制度を説明し、労働者に納得してもらった上で、上記の有効要件を意識した雇用契約書(なお、就業規則にも記載されている必要がある)を作成する必要があります。
雇用契約書においての、固定残業代の記載例は、以下のとおりです。
第◯条(定額残業手当)
- 1 甲は乙に対し、月額◯◯◯◯◯円の定額残業手当を支給する。
- 2 前項の定額残業手当は、その全額を1ヶ月◯◯時間の時間外労働分として支給する。
- 3 第1項及び前項に定める定額残業手当を支給された乙について、第1項に定める定額残業手当の額を超えて、時間外割増賃金が発生した場合には、甲は乙に対し、別途、その差額を割増賃金として支給する。
裁判例でも、雇用契約書に、「月給250,000-円残業含む」と総額が記載されているのみで,何時間分の時間外労働をカバーするのか記載がない事情等から、固定残業代の支払いとは認めなかったものがあります(大阪高判平成29年3月3日労判1155号5頁)。
以上から、雇用契約書がない場合は、仮に口頭で固定残業代について合意していたとしても、残業代の支払いとして認められず、別途残業代を支払わなければならないリスクがあります。
残業代の計算について、詳しくはこちらをご覧ください。
固定残業代について、詳しくはこちらをご覧ください。
固定残業代に関する裁判例の分析について、詳しくはこちらをご覧ください。
労働者側のデメリット
(1)口頭だけだと不明確になってしまう
企業側のデメリット同様、労働者にとっても、雇用契約の内容を口頭で済ませてしまった場合は、「言った、言わない。」の争いになりやすく、デメリットといえます。
(2)権利を主張する際の証拠が乏しくなる
労働者が企業に対して何らかの権利(例えば、賃金の請求、残業代、有給休暇等)を主張する際、できるだけ多くの証拠が揃っていた方が請求が認められる可能性が高くなります。
雇用契約書は、権利主張のための重要な証拠の一つです。
雇用契約書がない場合は、権利主張のための重要な証拠が欠如してしまい、最終的に労働者の請求が認められないという事態もあり得ます。
(3)個別の雇用契約で有利な労働条件を定めていたとしても就業規則が適用されてしまう可能性
個別の雇用契約において、就業規則よりも有利な労働条件を定めていた場合は、個別の雇用契約の内容が優先します(労働契約法7条ただし書)。
もっとも、雇用契約書がない場合は、そもそも個別の雇用契約で就業規則よりも有利な労働条件を定めていたかどうかが不明確になり、その場合は最終的に就業規則の範囲内の労働条件までしか認められない可能性があります(労働契約法7条本文)。
第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
参考条文 労働契約法12条
第十二条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
引用元:労働契約法|e−Gov法令検索
就業規則について、詳しくはこちらをご覧ください。
雇用契約書を作成するタイミング
途中で内容を変更することは可能?
雇用契約書は、通常、雇用契約を実際に締結した時点で作成します。
したがって、雇用契約書を作成しないまま就業を開始させて、その後に雇用契約書を作成するというような流れは好ましくありません。
作成した雇用契約書を、雇用期間の途中で変更することは、双方の同意があれば原則可能です(労働契約法8条)。
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
引用元:労働契約法|e−Gov法令検索
雇用契約書を変更する際は、新たな雇用契約書を作成しても良いですし、変更部分だけ抽出して「覚書」という表題の書面を作成しても良いです。
なお、労働者にとって不利益となる労働条件の場合(例えば、賃金の減額など)は、形式的に同意があったとしても、その同意が労働者の自由な意思に基づくものであることが必要と考えられていることに注意が必要です(最高裁昭和48年1月19民集27巻1号27頁、最高裁平成28年2月19日民集70巻2号123頁)。
雇用契約書がない場合に気をつけるべきこと
企業側
雇用契約書がない場合は、労働条件通知書を拠り所として労働条件を考えていくしかありません。
口頭でお伝えした労働条件については、できるだけメモ等の記録に残し、後々のトラブルに備えましょう。
労働者側
雇用契約書がない場合に、自らの労働条件について気になった場合は、労働条件通知書や就業規則を確認してみてください。
また、重要な労働条件については、雇用契約書の形式でなくても、使用者に対して何らかの形で書面を要求した方が好ましいと考えます。
よくある質問
【理由】
労働者の一方的意思表示による雇用契約の解約を、辞職といいます。
辞職の場合、雇用契約の種類(期間の定めがあるかどうか)によって労働者がいつ退職できるかが変わってきます。
期間の定めがない雇用契約(無期雇用)の場合、労働者は、解約の申入れをしてから2週間後に退職することができます(民法627条1項)。
なお、期間の定めのない雇用契約の場合は、解約の申入れの理由は問われません。
どのような理由であっても、解約の申入れをしてから2週間後には退職できます。
次に、期間の定めのある雇用契約(有期雇用)の場合は、原則、契約期間の途中で辞職(解約)することはできません。
もっとも、「やむを得ない事由があるとき」は、いつでも契約を解除することができます(民法628条)。
「やむを得ない事由があるとき」に該当するかどうかはケースバイケースですが、例えば、労働者が病気で業務ができない場合はこれにあたると考えられています。
なお、1年を超える有期雇用契約の場合で、契約の初日から1年を経過した日以降は、やむを得ない事由がなくても、いつでも退職することができます(労働基準法137条)。
最後に、労働者と使用者が合意して労働者が退職する場合を合意解約といいますが、合意解約の場合は、双方が合意した日に退職することができます。
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- 民法627条 第六百二十七条
- 民法628条 第六百二十八条
- 労働基準法137条 第百三十七条
引用元:民法|e−Gov法令検索
以下、退職時期についてのまとめです。
退職時期 | |
---|---|
辞職(期間の定めなし) | 解約の申入れをしてから2週間後に退職することができる(民法627条1項)。 |
辞職(期間の定めあり) | 原則、契約期間終了まで。 ただし、「やむを得ない事由があるとき」は、いつでも退職することができる(民法628条)。1年を超える有期雇用契約の場合で、契約の初日から1年を経過した日以降は、やむを得ない事由がなくても、いつでも退職することができる(労働基準法137条)。 |
合意解約 | 双方が合意した日。 |
退職届の書式については、こちらをご覧ください。
【理由】
正社員と同様の理由が当てはまるからです。
アルバイトやパートタイムの労働者でも、上記で解説した雇用契約書の必要性、具体的には、
- (1)使用者と労働者の信頼関係の構築
- (2)企業のイメージ
- (3)雇用契約書は企業を守るものでもある
というものは、正社員と同じく当てはまります。
また、上記で解説した雇用契約書がない場合のデメリット、具体的には、
(企業側の場合)
- (1)労働条件明示義務との関係
- (2)口頭だけだと不明確になってしまう
- (3)試用期間の関係
- (4)業務命令権の関係
- (5)配置転換・転勤の関係
- (6)固定残業代の関係
(労働者の場合)
- (1)口頭だけだと不明確になってしまう
- (2)権利を主張する際の証拠が乏しくなる
- (3)個別の雇用契約で有利な労働条件を定めていたとしても就業規則が適用されてしまう可能性
というものは、正社員と同じく当てはまります。
なお、アルバイトやパートタイムの労働条件明示義務は、正社員の①〜⑮の事項に加え、
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
についても、明示しなければならないとされています(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条1項、同施行規則2条1項)。
参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e−Gov法令検索
参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則|e−Gov法令検索
また、有期契約の労働者については、2024年4月施行の労働基準法施行規則により、以下の事項を明示する必要があります。
- 契約更新に上限がある場合は、その内容(改正後労働基準法施行規則第5条第1項第1号の2)
- 無期転換の申し込みをすることができる旨(改正後労働基準法施行規則第5条第5項・第6項)
- 無期転換後の労働条件(改正後労働基準法施行規則第5条第5項)
アルバイト・パートタイムの雇用契約の際に注意すべきことについて、詳しくはこちらをご覧ください。
アルバイト・パートタイムの特有の問題がいくつかあります。
例えば、アルバイト・パートタイムは、期間の定めのある雇用(例えば、6ヶ月間等)が多いのが現状です。
期間の定めのある雇用の場合、契約期間はいつまでなのか、そして、更新はどのような基準で判断されるのか(そもそも、これらの事情は労働条件明示義務の必要事項です。)雇用契約書にしっかり明示しなければ、契約を更新しない時(これを、「雇い止め」といいます。)にトラブルになりやすいです。
雇い止めについて、詳しくはこちらをご覧ください。
また、同一労働同一賃金の関係から、賃金関連の設定について深く考察する必要があり、その考察結果をしっかり雇用契約書に反映させることが重要だと考えています。
同一労働同一賃金について、詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
上記で解説したとおり、雇用契約書が存在しない場合は様々な弊害があります。
雇用契約書はトラブルを防止するために、作成した方が良いです。
ただし、雇用契約書作成には、ある程度専門的な知識が必要ですので、作成等でお困りの際は、労働問題に詳しい弁護士にご相談ください。