解雇で退職金はどうなる?弁護士が相場・手続きをわかりやすく解説
解雇で退職金の支給がされるかどうかは、会社のルールや解雇理由によってケースバイケースです。
会社にとっては退職金の支給を拒むことができるのか、従業員にとっては退職金をもらえるのかが気になるところだと思います。
退職金の支給については、会社に退職金支給規程等の根拠となるものがなければ法律上の義務はありません。
また、解雇理由によっては、退職金が減額または不支給となる場合がありますので、わかりやすく解説します。
解雇とは?
解雇とは、会社が従業員の意向にかかわらず、労働契約を一方的に終了させる通告のことをいいます。
解雇の通告は、必ずしも書面による必要はなく口頭でも行うことができます。
解雇の種類は、大きく分けて次の4種類あります。
- ① 普通解雇:以下②〜④のいずれにも当たらないものをいいます。
- ② 整理解雇:会社の業績が悪化してコストカットのために人員削減を行う場合など、会社の 経営上の理由で労働契約を解消する場合の解雇をいいます。
- ③ 懲戒解雇:従業員が会社のルールに違反したことに対する制裁として行う解雇をいいます。
- ④ 諭旨(ゆし)解雇:従業員に懲戒解雇に相当する事情がある場合に、それまでの従業員の功績や反 省の程度などを踏まえて、温情措置として、従業員に退職届の提出を求め、退 職届を提出させた上で、労働契約を解約するという懲戒処分のこといいます。
解雇の種類の詳細につきましてはこちらのページをご覧ください。
退職金とは?
退職金とは、会社を辞めてしまった従業員に対して会社から支払われるお金のことをいいます。
退職金については、給料の後払いの性格があると考えられています。
いい人材を採用するための福利厚生の一環と捉えられている会社もあるでしょう。
解雇で退職金はどうなる?
普通解雇の場合
会社都合の解雇の場合
例えば、会社の経営が苦しい状況にあり、従業員全員に給料を支払うことができなくなっている時に一定の従業員を解雇することをいいます。
この場合、従業員に非があるわけではないため、会社都合の解雇とされています。
会社都合の解雇の場合であっても、会社に退職金を支給するというルール(専門用語では「退職金規程」といいます。)が決まっている場合には、ルールに従って、会社は従業員に対して退職金を支払わなければなりません。
したがって、従業員は会社に対して、規程に基づいて退職金を支払うよう求めることができますが、会社にお金がない場合には、現実問題として支払いを受けることができないということも起こり得ます。
従業員側に問題がある場合
普通解雇に該当する従業員の問題としては、以下のものが挙げられます。
落ち度 | 具体例 |
---|---|
能力不足 | 入社時に想定していた能力を従業員が有しておらず、勤務成績がよくない |
経歴詐称 | 履歴書に記載されていた経歴や保有資格に偽りがあった |
度重なる遅刻、欠勤 | 入社後にたびたび無断で遅刻や欠勤を繰り返したり、緊急性が高くない早退を繰り返したりしていた |
協調性欠如 | 他の従業員と全く協力関係を築くことができず、従業員間でトラブルばかり起こして、コミュニケーションが取れない |
業務命令違反 | 上司から「◯◯会社との取引はこの形式で行うように」と言われているにもかかわらず、従業員が勝手に形式を変更して◯◯会社と取引を行った |
なお、従業員に何らかの問題があったとしても会社に退職金規程が定められている場合は、原則として退職金は支給されます。
もっとも、退職金が全額支給されるかについては会社に定められている退職金規程次第です。
上記問題の程度が重く、懲戒処分にまで発展した場合には、退職金規程の中で、退職金を不支給もしくは一部減額すると定めていることがあります。
その場合には、規程にしたがって減額される可能性があります。
退職金制度がない場合
退職をすれば当然退職金がもらえると思われている方々ももしかするといらっしゃるかもしれません。
もっとも、退職金制度は法的に定められた制度ではありません。
すなわち、会社が退職金制度を設けていなくても法律に違反するものではなく、会社としては、制度を作らず、退職金を支払わないとすることもできます。
したがって、会社に退職金制度が設定されていない場合には、制度がない以上、解雇された理由がどのようなものであれ、解雇された従業員は退職金をもらうことはできません。
ただし、会社による従業員の解雇が不当解雇となるケースについては、後述する解決金という形で一定のお金が支給されることがあります。
懲戒解雇の場合
退職金制度を設けている会社であっても、通常、従業員に懲戒事由があった場合には、退職金を支給しない、あるいは減額するというルールが定められています。
したがって、通常、懲戒解雇された従業員に対して退職金が満額支払われることはありません。
もっとも、懲戒解雇事由に当たる場合であっても、会社が懲戒解雇をせず、普通解雇をする場合があります。
これは、解雇後の従業員の生活への配慮や解雇予告手当の除外認定手続を経ることや訴訟に発展した場合の煩雑さを回避することができるというメリットがあるからです。
会社において従業員を懲戒解雇とするか普通解雇とするかを迷われたときは、労働問題を専門とする弁護士に相談することをお勧めいたします。
懲戒解雇の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
諭旨(ゆし)解雇の場合
諭旨解雇とは、会社が従業員に退職届もしくは辞表の提出を勧告し、従業員にこれらの書面を提出させた上で解雇する処分のことをいいます。
退職金制度を設けている会社であっても、通常、従業員に諭旨解雇事由があった場合には、懲戒解雇の場合と同じく、退職金を支給しないあるいは減額するというルールが定められています。
具体的には、以下のような規程がこれにあたります。
1 次の各号の1つに該当する場合、退職金を支給しないことがある。なお、既に退職金が支給されている場合は、その全部又は一部の返還を求める。
- ① 諭旨解雇されたとき
- ② 懲戒解雇されたとき
注意点としては、単に諭旨解雇であるというだけでは、退職金が不支給もしくは一部減額という会社の対応が当然に有効になるわけではありません。
諭旨解雇を理由として退職金を不支給もしくは一部減額とすることが認められるのは、それまでの勤続の功を抹消または減殺するほどの著しい背信行為があった場合に限られるとされています(東京地判令和3年6月2日等)。
したがって、会社と従業員の間で退職金について争いになると、懲戒処分の理由となった従業員の具体的な問題行動の内容、会社に与えた影響等から退職金が不支給、減額となってもやむを得ないといえるかについて、裁判所の判断を仰ぐことになります。
諭旨解雇の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
整理解雇の場合
整理解雇とは、会社の経営上、人員削減をする必要がある場合に解雇することをいいます。
会社の経営上、従業員を解雇する必要がある場合というのは、例えば、会社の経営が傾いており、従業員全員に複数回に渡って給料を支払うことができなくなった場合などをいいます。
一般的に「リストラ」といわれる解雇がこの整理解雇に該当します。
整理解雇の場合は、普通解雇と同様に、会社に退職金規程が設定されている場合には、規程通りの退職金を支給しなければなりません。
しかし、整理解雇が有効となる場合は、会社にお金がない状態であることがほとんどです。
そうすると、本来であれば支給しなければならない退職金について会社にお金がなくて支給されないという可能性が考えられます。
一方で、会社に十分なお金が残っていた場合は、そもそも整理解雇が認められない可能性があります。
会社側として注意しておかなければならないのは、整理解雇が有効であるとは、なかなか認められないということです。
整理解雇の要件には、以下に挙げる4つの厳しい要件があり、いずれも満たさない限り解雇が有効であったと認められません。
- ① 人員削減の必要性があること
- ② 解雇以外の方法がないかを検討したこと
- ③ 解雇する従業員を選んだ理由が合理的なものであること
- ④ 解雇する従業員に対して説明・協議がなされていること
整理解雇が不当であった場合、後述する解決金による解決になることが予想されます。
なお、整理解雇の場合には、通常の退職金に加えて、次に説明する、特別退職金が追加で支給されることがあります。
会社が整理解雇をするに先立って、従業員に対して、退職希望者を募ることがあります。
これに応じた従業員に対する手当として、通常の退職金に追加でお金が支給されます。
これを特別退職金といいます。
会社としては退職金を上乗せすることで一時的には支払いが増えてしまいますが、その分毎月の人件費を押さえることができます。
他にも、整理解雇の場合、退職事由は会社都合退職として扱われることから、自己都合退職として扱われるよりも退職金が高くなることがあります。
整理解雇の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
解雇のときの退職金に相場はある?
会社から従業員に対して支給される退職金の金額は、会社の退職金規程の内容次第です。
したがって、具体的な退職金は会社ごとに異なります。
他方で、いい人材を確保するために、業種ごとや地域ごとに、そもそも退職金の制度があるかどうか、あるとして勤続年数がどのくらいあれば支給の対象になるかといった目安があるケースもあります。
不当解雇の場合は解決金の可能性が高い
解雇は、従業員の職を会社が一方的に奪うという強力な行為です。
そのため、会社が従業員を解雇した場合、解雇が妥当であったのかを後々争われることがあります。
解雇が妥当ではないという結果になった場合の解決方法として、会社から従業員に対して解決金を支払うというケースがあります。
解決金とは、解雇が不当である等の理由により、会社が従業員に対して一定の金額を支給することでトラブルを解決し、会社を辞めてもらうという金銭的解決手段の一つです。
解決金の金額についても、ケースバイケースではありますが、給与の3ヶ月から1年程度の金額が解決金として支払われる場合があります。
もちろん、トラブルが長引くと1年以上の解決金となることもままあります。
従業員が解雇の妥当性を争う場合、従業員はまず会社に対して不当解雇であると主張して、従業員としての地位があることの確認を求める請求(専門用語で「地位確認請求」といいます)を行います。
もっとも、従業員としての地位の確認は会社にとっても従業員にとっても不都合な場合があります。
すなわち、会社にとっては問題となる従業員の会社への復帰は望まないという一方で、従業員にとっては解雇されたことについては文句があるが職場に復帰したいわけではないというような場合です。
この場合の収まりの良い解決案として、会社から従業員に対して解決金として一定の金額を支払うかわりに、従業員は会社に復帰せずに、そのまま退職してもらうというものになります。
なお、会社が従業員に対して解決金を支払う結果になった場合であっても、会社の退職金規程の条件を満たしているのであれば、解決金とは別に本来の退職金の支給を受けることができます。
解決金が登場する場面
解決金が登場する場面として以下の3つの方法が考えられます。
- ① 会社と従業員との間で交渉している場面
- ② 従業員が会社に対して申し立てた労働審判の場面
- ③ 従業員が会社に対して提起した裁判(訴訟)での場面
会社から解雇の通告を受けた時、従業員は会社に対して、解雇理由を確認することができます。
これに対して、会社から従業員に対して、解雇は妥当である旨の説明がなされますが、そのやり取りの中で、早期解決のために解決金の提示等の対応が想定されます。
解雇されてしまった従業員としては、会社に対して対等にきちんと交渉することができるのか、自分に不利な金額で解決されるのではないかという不安を抱える方がほとんどだと思います。
このような不安を抱えている方は、一度労働問題を専門とする弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に交渉を依頼することで、会社と対等な交渉を行うことができます。
会社との間で一定の解決金を支払うという形で交渉がまとまると、会社から従業員に対して解決金が支払われます。その際、解雇を撤回した上で合意退職にするという流れになることが多いです。
会社が全く理由もなく従業員を解雇することは稀だと思います。
そうなると、会社側としては、従業員から解雇が不当であるとの主張に対して解雇が妥当であると反論するのが通常です。
もっとも、従業員から解雇が不当だと言われた際に毅然と対応できるか不安に感じられている経営者の方もいらっしゃるかと思います。
また、会社として解決金による解決を図ろうとした際に、従業員やユニオン、従業員側の弁護士から金額が低すぎるといわれ、いくらが妥当な金額であるかが分からないといった事態も想定されます。
その際には、一度労働問題を専門とする弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
交渉開始
交渉中
- 従業員側の主張
→解雇が不当であり、従業員の地位確認を求める
→仮に会社側が職場復帰を認めない場合、会社を辞める代わりに解雇を撤回し合意退職の扱いにした上で解決金500万円を支払うこと - 会社側の主張
→解雇が妥当であること
→解決金を支払うとしても、金額については100万円である
交渉成立
- 従業員は会社を辞めること
- 解雇を撤回し合意退職の扱いにした上で解決金250万円を支払うこと
労働審判とは、会社と従業員等とのトラブルについて、簡易迅速に解決するための裁判所の手続のことをいいます。
労働審判は、裁判官(労働審判官)1人と労働審判委員2人で組織された労働審判委員会が関与します。
労働審判委員は裁判官や弁護士ではなく、労働組合の組合役員や会社の経営者になります。
労働審判では、通常の裁判とは異なり、簡易迅速な解決を求められていることから、解決金での解決となる場合がほとんどです。
労働審判は、最大で3回、裁判所に行って労働審判委員会と会社・従業員間を交えた話し合いが行われます。
この3回の話し合いの過程において、解決金の調整が行われます。
その際、労働審判委員会から具体的な解決金の金額を指摘されることもあります。
双方が解決金の金額に納得した場合には、会社・従業員間の合意があったとして手続は終了します(専門用語では、「調停成立」といいます)。
また、双方の合意が得られず、解雇が無効という心証の場合には、労働審判委員会が3回の審理を踏まえて、労働審判という形で会社に対して一定の金額の支払いを命じることもあります。
労働審判手続の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
労働審判手続の中で会社・従業員間で納得のいく解決が得られず、労働審判が出されてもなお不服がある場合には、訴訟に移行します。
なお、労働審判を経ずに最初から訴訟を提起することもできます。
通常、裁判にまで至ると判決が出されるまで終わらないと思われている方が多くいらっしゃると思います。
しかしながら、裁判に発展したとしても、訴訟の途中に会社・従業員との間で和解をすることで、判決を待たずして解決に至ることもあります。
多くの場合、この和解において、会社から従業員に対して解決金を支払うことになります。
会社側のポイント
解雇は正当な理由がないと認められない
会社が「この従業員は気に食わないからクビにしたい」と思ったとします。
そこで、会社がその従業員に対して解雇を通告したとしても、「よほどの事情」がない限りこの解雇の有効性は否定されます。
この「よほどの事情」のことを、以下では「正当な解雇理由」と呼びます。
解雇に正当な理由が必要であることの詳細については、こちらのページをご覧ください。
従業員が争ってきた場合のリスク
従業員が解雇が無効であると争ってきた場合、以下のリスクが考えられます。
- ① 解雇が無効となった場合の従業員の職場復帰のリスク
- ② 解雇無効を争ってきた期間について未払いの給料を支払わなければならないリスク
従業員が争ってきて、裁判の結果、解雇が不当と判断された場合、元従業員は職場に復帰することになります。
このように会社は問題があると判断した従業員であっても、解雇が不当であると判断されてしまうと、職場復帰を認めなければなりません。
会社と元従業員との間で解雇を争った期間の給料については、解雇が無効と判断されてしまうと、従業員側は本来であれば給料をもらえた期間であり、その間の給料は未払い状態となったままです。
そこで、会社は、復帰した従業員に対して、未払いの給料を支払わなければなりません。
仕事を従業員がしていなかったのにと思われるかもしれませんが、無効な解雇が原因となっているため、会社は支払いを免れることはできません。
解決金が高額になるケースもある
会社が示談に際して元従業員に支払う解決金について、この場合はいくらといった決まった金額はありません。
解決金は会社と元従業員との話し合いによって決まるものです。
そうすると、会社としてどうしても解雇したい従業員がいた場合に、その従業員からの高額な解決金の要求をそのまま飲むことになってしまうことも考えられます。
特に、元従業員が職場に復帰したいとの気持ちが強ければ強いほど、その従業員に納得してもらうために解決金を上げていく必要があります。
正社員の場合、アルバイト・パートと比べて職場に復帰したいという気持ちが強い傾向にあります。
そうすると、正社員だった元従業員の方に納得してもらうために、解決金の金額が高額となるケースが多いです。
裁判となった場合、解決に至るまで長いもので1年以上かかるものがあります。
裁判により争いが長期化すればするほど未払いの給料が増加することになります。
このように、争いが長期化した場合、元従業員が職場に復帰するだけでなく、未払いの給料を会社に請求してくるため、会社にとっては大きな痛手となります。
この事態を回避するためには、少なくとも元従業員の職場復帰を阻止を目的として未払い給料と同額かそれ以上の金額の解決金を提示することが予想されます。
結果として、給料の金額にもよりますが、解決金が高額となる可能性があります。
裁判において解雇理由の正当性が否定されそうなケースでは、元従業員は会社との交渉上有利な立場にあります。
この場合は、元従業員に納得してもらうためには、解決金も高額となる傾向にあります。
解雇理由の正当性の詳細につきましてはこちらのページをご覧ください。
労働問題に強い弁護士に相談する
会社が従業員を解雇する際は、事前に解雇理由に正当性があるのかを十分に検討しておく必要があります。
もっとも、当初は解雇理由に正当性があると考えていたとしても、後に正当性を揺るがす事実が出てくることにより、結論がひっくり返ることもあり得ます。
このように、解雇理由の正当性があると断言することは極めて困難です。
また、元従業員が解雇の不当であることを全面的に争い、これが報道されることによって、「従業員を不当解雇した会社だ」というレッテルが貼られる危険性があります。
そこで、一定の解決金を支払うことで早期に従業員との問題を解決するのも有効な手段といえます。
解雇しようか迷っている従業員がいる、解雇をしたら従業員が争ってきているといったことで悩まれた際は、ぜひ労働問題を専門に扱う弁護士に相談することをお勧めいたします。
労働問題を弁護士に相談すべき理由の詳細については、こちらのページをご覧ください。
従業員側のポイント
会社が規程どおりの退職金を支払ってくれない場合
会社が規程どおり退職金を支払ってくれない場合、以下の3つの場合に応じて取りうる手段が異なります。
- ① 会社に退職金規程がない場合
- ② 会社に退職金規程がある場合
- ③ 会社に退職金規程があるか不明な場合
会社に退職金規程がない場合は、規程がない以上、従業員は退職金をもらうことはできません。
なお、すでに説明した通り、解雇が不当だった場合には、一定の解決金を会社に要求して解決するということが見込まれます。
会社に退職金規程がある場合には、規程に従って退職金を支給するように会社に請求する必要があります。
もっとも、会社に請求する際に何も証拠がなければ会社を納得させることはできません。
そこで、会社から退職金の支払いがなかったことを示す証拠を集める必要があります。
具体的には、退職金規程の記載のある就業規則や契約書、労働条件通知書、退職金支給要件を満たしていることを示すために現在までの給与明細等があります。
退職金規程の確認方法については、まず社長や上司に対して口頭やメールで見せてもらえるようにお願いし、コピーを取ると良いでしょう。
もし、社長や上司にお願いして断られたとしてもそこで諦めてはいけません。
退職金規程は、就業規則の一部であり、法的に従業員に周知する法的義務(労働基準法106条に定められています。)が定められています。
そこで、上記義務があることをメールや書面といった形に残る方法で説明して退職金規程の開示を再度お願いすると良いでしょう。
それでも拒否された場合には、労働基準監督署へ相談や労働問題を専門に扱う弁護士に一度相談することをお勧めいたします。
証拠が集まったら、次に会社に対して直接請求していくことになります。
会社に請求する際は、口頭で支払ってほしいというだけでは足りません。
会社に退職金を支払う義務があること、退職金支給規程の支給条件を満たしていること、請求金額・支払期日・振込先を書面に記載して会社に送付する必要があります。
書面の送付にあたっては、書面の内容や書面を出した日時、会社が受け取った日時を明確にするため、内容証明郵便に配達証明をつけておくと良いでしょう。
元従業員の方がご自身で会社に請求する場合、書面の記載内容によっては、会社から相手にされないことが考えられます。
そこで、ご自身で会社宛の書面を作成されるにあたっては、一度労働問題を専門とする弁護士に相談することをお勧めいたします。
また、会社との書面でのやりとりの中で解決金が提示されることがあります。
この解決金が妥当な金額であるのか、金額が安すぎるのではないか等の不安を感じた際も一度労働問題を専門とする弁護士に相談することをお勧めいたします。
会社に退職金規程があるか不明な場合は、会社の就業規則に退職金規程があるかを確認する必要があります。
そこで、社長や上司に対して就業規則を口頭やメールで見せてもらえるようにお願いし、コピーを取ります。
社長や上司がこれを拒否した場合は、すでに説明した通り、周知義務があることをメールや書面といった形に残る方法で説明して退職金規程の開示を再度お願いすると良いでしょう。
それでも拒否された場合には、労働基準監督署へ相談や労働問題を専門に扱う弁護士に一度相談することをお勧めいたします。
仮に会社に退職金規程があることを確認できた場合は、「会社に退職金規程がある場合」と同様です。
会社が退職金の支払いを拒否した場合の対処法
会社に請求したとしても退職金を支払わないと回答される場合があります。
そこで、紛争調整委員会の利用の検討が考えられます。
紛争調整委員会とは、弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されています。
会社と元従業員との間に紛争調整委員会が間に入ることで紛争解決を図ります。
紛争調整委員会を利用するメリットとしては、以下の5点があります。
- 裁判と比較して手続きが迅速かつ簡単であること
- 弁護士、大学教授等の労働問題の専門家の意見を聞くことができること
- あっせん費用は無料であること
- あっせん案に合意した場合には、民法上の和解契約の効力を持つこと(法的拘 束力を持つこと)
- あっせんの手続きは非公開であり、プライバシーが守られること
しかし、紛争調整機関による手続を利用したとしても、訴訟とは異なり、紛争調整委員会の出すあっせん案に会社が従う義務はありません。
したがって、会社と元従業員との間で合意が成立せず、紛争調整機関による手続きを利用したとしても問題の解決に至ることができない可能性があります。
引用元:厚生労働省
制度として用意はされていますが、それほど一般的には使われておらず、次の弁護士に相談して、弁護士が会社と示談交渉を行うというのが多いでしょう。
会社に対して請求する場面や紛争調整機関の利用の場面であっても、弁護士に相談することで専門的なアドバイスを受けることができます。
会社との交渉がまとまらず労働審判や訴訟に移行してしまった場合、従業員の方がご自身で労働審判・訴訟を行うことは可能です。
もっとも、法的知識が不足しているが故に納得のいく結果を得られない可能性があります。
そこで、労働問題を専門とする弁護士に相談することによって納得のいく解決が得られる可能性が高まります。
具体的には、弁護士による労働審判・訴訟で有利になる証拠としてどのようなものがあるのかについてのアドバイスを受けることができます。
他にも弁護士が元従業員の方の代わりに労働審判・訴訟を担当することができる等のサポートをすることができます。
退職金の未払いが労働問題ということもあり、労働基準監督署へ相談する元従業員の方もいらっしゃるかと思います。
労働基準監督署は、会社が労働基準関係法令に違反している場合に、その会社の是正・監督を行う機関です。
そして、冒頭で説明しましたとおり、退職金規程がなければ、退職金の支払いは法律上の義務ではありません。
したがって、退職金の未払問題は、労働基準監督署の管轄外となってしまうことがあります。
例外的に、就業規則の退職金支給規程に支給条件が決まっており、明確に賃金としての性格を有する退職金であれば労働基準監督署による対応を受けられる可能性があります。
したがって、基本的には弁護士への相談が中心となります。
解雇に納得がいかない場合は弁護士へ相談
日本において、従業員を解雇することは法律上簡単なことではありません。
労働問題に詳しい弁護士であれば、どのような場合に解雇が無効となるのかについて助言を与えてくれるでしょう。
労働問題を弁護士に相談すべき理由についてはこちらのページをご覧ください。
まとめ
これまで解雇と退職金について解説してきました。
要点を以下にまとめましたのでチェックしてみてください。
- 退職金の支給の有無は、会社のルールや解雇理由によってケースバイケース
- 退職金の支給は法的な義務ではなく、会社に退職金支給規程がなければならない
- 解雇理由によっては、退職金が減額または不支給となる場合がある
- 解雇のときの退職金に相場は会社ごとに異なるが、一定の目安がある場合もある
- 不当解雇の場合は、解決金による解決の可能性が高く、主に①会社と従業員との間の交渉、②労働審判、③訴訟の3つの場面で解決金が登場する
- 会社が従業員を解雇するには正当な理由が必要である
- 解雇に正当な理由がなければ、従業員が解雇の妥当性を争ってくるリスクがあり、場合によっては解決金が高額となるケースもある
- 一度労働問題に強い弁護士に相談することで解雇理由が正当であるのかのアドバイスを受けることができる
- 会社が退職金を支給しない場合の対処法として、①従業員ご自身が会社に対して請求する、②紛争調整機関を利用する、③弁護士に相談するの3つの手段がある
- 解雇に納得がいかない場合は弁護士に相談することで的確なアドバイスを受けることができる
当法律事務所の企業法務部には、解雇も含めて労働問題に精通した弁護士で構成される労働事件チームがあり、労働問題でお困りの企業の皆様を強力にサポートしています。
企業のご相談は初回無料でご相談いただけます。
ZOOMやスカイプを活用して、全国の相談に対応しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。