平均賃金とは?弁護士がわかりやすく解説【自動計算機付】
平均賃金とは、直近3か月間に支払われた給料額をもとにして、その従業員の1日当たりの賃金を計算したものです。
「平均賃金 = 直近の3か月間で支払われた賃金の総額 ÷ 3か月間の総日数」で計算できます。
このページでは、平均賃金とは何か、必要となる場面や計算方法などについて、弁護士が詳しく解説いたします。
さらに、どなたでも簡単に平均賃金を計算いただけるよう、自動計算機も掲載しておりますので、ぜひご活用ください。
平均賃金とは
平均賃金とは、直近3か月間に支払われた給料額をもとにして、その従業員の1日当たりの賃金を計算したものです。
平均賃金の具体的な計算方法は法律によって決められています(労働基準法第12条)。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
この平均賃金は、労務管理の様々な場面で必要となります。
例えば、有給休暇取得時の賃金、休業手当、解雇予告手当、その他の補償金などの金額を決めるための基準になります。
なお、日常用語としての「平均賃金」は、みんなの給料を平均したもの、といった意味ですが、このページで説明する「平均賃金」(労務管理の平均賃金)とは全く意味が異なることに注意しましょう。
以下では、この「平均賃金」について、わかりやすく解説しています。
「みんなの給料を平均したもの」という意味の平均賃金は通常「賃金センサス」と呼ばれています。
賃金センサスについては、下記のページをご覧ください。
平均賃金の計算方法
このように、様々な場面で必要とされる「平均賃金」ですが、具体的にはどのように計算すればいいのでしょうか?
ここでは、平均賃金の計算方法を詳しく見ていきましょう。
平均賃金の基本的な考え方と計算式
まず、平均賃金の基本的な考え方を見ていきます。
平均賃金の基本的な考え方はシンプルです。
平均賃金とは、法律上、「これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」とされています(労働基準法第12条)。
わかりやすくいうと、直近の3か月間で支払われた賃金の総額を、日割りで計算(つまり、3か月間の総日数で割り算)したもの、ということになります。
したがって、直近の3か月間の賃金総額を、その3か月間の総日数(通常は90日前後)で割る(÷)ことで平均賃金が計算できます。
これを計算式で表すと、以下のようになります。
直近の3か月とは
ここでいう、「直近の3か月」についてより詳しく見ていきましょう。
「直近の3か月」というのは、「平均賃金を計算するきっかけとなった事件等(算定事由)が発生した日以前の直近の3か月間」です。
「平均賃金を計算するきっかけとなった事件等(算定事由)が発生した日」というのは、平均賃金が必要となった理由・場面ごとに考える必要があります。
具体的には、以下のようになります。
平均賃金が必要となる理由・場面 | 算定事由が発生した日 |
---|---|
解雇予告手当 | 会社が従業員に対して解雇の通告をした日 |
休業手当・年次有給休暇 | 休業日・年休日 ※休みが複数連続する場合はその初日 |
会社による災害補償 | 事故の起きた日、又は、診断によってケガや病気が確定した日 |
減給処分 | 会社による処分の通知などが従業員に到達した日 |
なお、算定事由の発生した日は含まれず、その前日から遡って3か月が「直近の3か月」になります。
例えば、4月10日に、会社が従業員に対して事前の予告がないままに解雇通告をした場合には、その前日である4月9日までの直近3か月間、つまり、1月10日から4月9日になります。
ただし、給料の締め日がある会社の場合(ほとんどの会社があてはまります。)、以下のように算出することとなります。
給料の締め日や支払日との関係は?
賃金には、多くの場合「締め日」と「支払日」が設定されており、会社によって異なります。
賃金の「締め日」というのは、毎月支払われる賃金が「いつまで働いた分なのか」を表す日付です。
賃金の「支払日」というのは、締め日までに働い分の賃金がいつ支払われるかを表す日付で、これがいわゆる給料日のことです。
例えば、月末締め&翌月15日払いとなっている会社では、3月1日から3月31日(締め日)までに働いた分の賃金が、4月15日(給料日)に支払われることになります。
このような賃金の締め日が決められている会社の場合には、「直近の3か月」の考え方が少し変わります。
具体的には、賃金の締め日が定まっている会社の場合には、直前の締め日から遡って3か月が「直近の3か月」になります。
また、締め日に「算定事由」が発生した場合には、その前の締め日から遡って3か月が「直近の3か月」になります。
上の例のように、月末締め&翌月15日払いとなっている会社で、例えば、4月10日に会社が従業員に対して事前の予告がないままに解雇通告をした場合には、その直前の締め日である3月31日から遡って3か月間が「直近の3か月」になります。具体的には、1月1日から3月31日の期間です。
このように、ほとんどの会社では「算定事由」が発生した日の前日ではなく、直前の締め日から遡って「直近の3か月」とする必要があるので注意が必要です。(なお、この場合、この期間に含まれる締め日分の賃金について、賃金の総額に含めて計算します。)
第十二条
② 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
「直近の3か月」の中に以下の期間が含まれる場合には、この期間中の賃金は「賃金の総額」には含まれません。
また、この期間中の日数は「総日数」からも除外されます。
「直近の3か月」から除外される期間 |
---|
業務でケガをしたり、又は、病気になって療養のために休職した期間 |
産前または産後の休職期間 |
会社側の事情によって生じた休職期間 |
育休期間 |
介護休暇期間 |
試用で雇われている期間 |
第十二条
③ 前二項に規定する期間中に、次の各号のいずれかに該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の総額から控除する。
一 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
二 産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間
三 使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間
四 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業(同法第六十一条第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)に規定する介護をするための休業を含む。第三十九条第十項において同じ。)をした期間
五 試みの使用期間
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
従業員に対して支払われた「賃金の総額」とは
「従業員に対して支払われた賃金の総額」とは、直近の3か月間に支払われた賃金や各種手当の合計額で、税金や社会保険料などが差し引かれる前の金額をいいます。
つまり、いわゆる「手取り」ではなく、「額面」の賃金になります。
そして、「賃金の総額」には各種手当も含まれますので、例えば、通勤手当、昼食補助手当、テレワーク手当なども含まれます。
ただし、直近の3か月で支払われた手当や賃金であっても、以下のものは除外する必要があります。
「賃金の総額」から除外されるもの | 具体例 |
---|---|
臨時に支払われたもの | 退職金、慶弔手当、傷病手当など |
3か月を超える期間ごとに支払われる賃金 | 賞与(ボーナス) ※ただし、賞与であっても3か月以内の期間(4半期など)ごとに支払われる場合は除外されません。 |
法令や労働協約に基づかない違法な現物給与 | 給料の代わりに物が支給されるケース |
なお、実際に支払われた賃金だけでなく、会社が発生している賃金の支払いが遅れているような場合には、未払いの賃金についても「賃金の総額」に含まれます。
第十二条
④ 第一項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
通勤手当はどうなる?
通勤手当は、「賃金の総額」に含まれる諸手当の一つです。
なお、6か月通勤定期など、数か月ごとに支払われるものであっても、1か月毎に支払われたものとして月割で計算することになりますので注意しましょう。
総日数とは
平均賃金を計算するには、「直近の3か月」における「賃金の総額」を「総日数」で割る必要がありますが、この「総日数」とは何でしょうか。
基本的に、「直近の3か月」のカレンダー(暦)上における全部の日数(土日祝日を含む)が総日数です。
そして、上でも説明しました通り、以下の期間が含まれる場合にはこの期間分の日数は除外して総日数を計算することになりますので注意しましょう。
「直近の3か月」から除外される期間 |
---|
業務でケガをしたり、又は、病気になって療養のために休職した期間 |
産前または産後の休職期間 |
会社側の事情によって生じた休職期間 |
育休期間 |
介護休暇期間 |
試用で雇われている期間 |
例外的な計算が必要になる場合
次に、上で説明した計算方法・計算式で計算ができない例外的なパターンについて説明します。
例外その①日給、時給、又は出来高払いの場合
賃金が日給制、時給制または、出来高払制などの請負制(※)による場合、出勤日数が少ない月があると平均賃金に響きます。
そのため、日給制、時間給制、出来高給制(請負制)の場合は、最低保障額が定められています。
では、具体的に、どのように計算するのでしょうか。
日給制、時給制や、出来高払制その他の請負制の場合、最低保障額を次の方法で算出します。
直近3ヶ月の間において、ある期間は月給制で給与をもらい、その他の期間を時給制(又は日給・出来高払制)で給与を支給するケースもあります。
このような月給制と時給制等が併給されている場合、月給の部分は「総日数」で除して算定し、時給制等の部分は上記の最低保障のルールで計算します。
そして、その2つの金額の合計額が最低保障額となります。
第十二条 ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
例外その②日雇いの場合
一日単位で会社から雇い入れられる方(いわゆる「日雇い」)についても、例外的な計算をする必要があります。
この場合、働き方の変動が大きく、また、勤務先の会社も日によって異なることが多いので、基本的な計算方法では適切な平均賃金を計算できないため、例外が用意されています。
日雇いの場合には、計算式が以下のように定められています。
なお、この計算式でも平均賃金が算定できない場合には、同じ勤務先で同種の仕事をした人を基準にして計算することなど、細かい定めがさらにおかれています。
第十二条
⑦ 日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
日雇い入れられる者(以下「日雇労働者」という。)の平均賃金は、次の金額とする。
一 平均賃金を算定すべき理由の発生した日以前一箇月間に当該日雇労働者が当該事業場において使用された期間がある場合には、その期間中に当該日雇労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間中に当該日雇労働者が当該事業場において労働した日数で除した金額の百分の七十三
二 前号の規定により算定し得ない場合には、平均賃金を算定すべき理由の発生した日以前一箇月間に当該事業場において同一業務に従事した日雇労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間中にこれらの日雇労働者が当該事業場において労働した総日数で除した金額の百分の七十三
三 前二号の規定により算定し得ない場合又は当該日雇労働者若しくは当該使用者が前二号の規定により算定することを不適当と認め申請した場合には、都道府県労働局長が定める金額
四 一定の事業又は職業について、都道府県労働局長がそれらに従事する日雇労働者の平均賃金を定めた場合には、前三号の規定にかかわらず、その金額
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
例外その③その他計算ができない場合
ここまでの計算方法(基本的な計算方法、例外的な計算方法)によっても、平均賃金をうまく計算できない場合については、厚生労働大臣が定めた別の計算方法によるとされています。
第十二条
⑧ 第一項乃至第六項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、厚生労働大臣の定めるところによる。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
具体的には、例えば、直近の3か月間に従業員が休業していた場合や、その他労働局が計算ができないことを認めた場合などがこれに当たります。
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十二条第八項の規定に基き、同条第一項乃至第六項の規定(昭和二十二年厚生省令第二十三号労働基準法施行規則第三条及び第四条の規定を含む。)によつて算定し得ない場合の平均賃金を次のように定める。
第一条 使用者の責めに帰すべからざる事由によつて休業した期間が平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前三箇月以上にわたる場合の平均賃金は、都道府県労働局長の定めるところによる。
第二条 都道府県労働局長が労働基準法第十二条第一項から第六項までの規定によつて算定し得ないと認めた場合の平均賃金は、厚生労働省労働基準局長の定めるところによる。
平均賃金の端数処理はどうなる?
上で見てきた通り、平均賃金の計算では、割り算がたくさん登場します。
そのため、綺麗に割り切れずに端数が生じることがありますが、この場合の端数処理をどうすればよいでしょうか。
答えは、「一銭未満は切り捨て」です(昭和22年11月5日付け基発232号)。
一銭というのは、一円の100分の1(つまり、0.01円)ですので、一銭未満の切り捨てとは、小数点以下第2位まで残して、第3位以下を削除することになります。
なお、四捨五入ではなく、切り捨てとなることに注意しましょう。
「12345.6789・・・・円」を一銭未満切り捨てで端数処理をすると、「12345.67円」になります。※なお、 平均賃金を計算したうえで、各種補償金を計算する際には、別の端数処理が必要になりますので注意が必要です。
基本的に、1円未満を四捨五入することになります(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第3条)。
具体的には、平均賃金が「12345.67円」の場合に、一日当たりの休業手当の金額を計算する場合、小数点以下を四捨五入して「12346円」になります。
自動計算機で簡単に平均賃金を計算
以上で平均賃金の計算方法をかなり細かく説明してきました。
平均賃金がどのように計算されるかをご理解いただくために、以上の解説をしっかりお読みいただくことは非常に重要だと思いますが、実際の計算については、決まった計算式に当てはめれば計算することができます。
そこで、ここでは、皆さんにお使いいただけるように自動計算機を作成して公開しています。ぜひご活用ください。
具体例で計算
ここまでご説明したことを踏まえて、具体的な事例について計算例を見ていきましょう。
会社が、5月10日に、従業員に対して、7日間の解雇予告期間を与えて、解雇予告手当23日分※を支払って解雇するケース。
従業員は、時給制で賃金を受け取っており、賃金の締切日は毎月15日、支払日は当月月末。
解雇予告を受ける前の賃金の支払い状況は以下の通り。
対象の勤務期間 | 暦の日数 | 勤務日数 | 賃金額※ |
---|---|---|---|
1月16日~2月15日 | 31日 | 23日 | 335,000円 |
2月16日~3月15日 | 28日 | 20日 | 312,300円 |
3月16日~4月15日 | 31日 | 22日 | 312,000円 |
合計 | 90日 | 65日 | 959,300円 |
※締切日ごとに、通勤手当、皆勤手当、時間外手当などの手当を含む。
なお、税金や社会保険料などの控除をする前の賃金です。
このケースでは、会社が、解雇予告期間を7日間しか設定していませんので、それを補うために23日分の解雇予告手当を支払う必要があります。
そして、この手当の金額を確定するために、平均賃金を計算する必要があります。
まず、基本的な計算方法による計算を見ていきましょう。
基本的な計算方法による計算式は以下です。
このケースでは、賃金の締切日が毎月15日ですので、直前の締切日である4月15日から遡って3か月間が「直近の3か月間」になります。
具体的には、
この金額(10658.88円)が基本的な計算方法によった場合の平均賃金です。
次に、例外的な計算方法についても考える必要があります。
今回のケースは、時給制で賃金が計算されているので、最低保障額について考える必要があります。(最低保障額が、10658.88円を上回る場合には、最低保障額が平均賃金になります。)
時給制の場合の最低保障額の計算式は以下です。
これを今回のケースに当てはめると、
基本的な計算方法で計算した金額(10658.88円)が最低保障額(8855.07円)を上回りますので、このケースでの平均賃金は、10658.88円に確定します。
平均賃金が必要となる場面
平均賃金は会社や国から補償や手当が支払われる場合の基準になります。
また、罰として会社が従業員へ減給処分をする際に、減給額の制限などにも使われています。
具体的には、以下の表のとおり、様々な場合に平均賃金の考え方が必要とされています。
場面 | 解説 | 根拠の法律 |
---|---|---|
解雇予告手当 | 労働者を解雇する場合には、会社は少なくとも30日前に従業員へ解雇予告をしなければなりません。 予告が間に合わなかった場合には、予告の日数が不足する分だけの平均賃金を従業員へ支払う必要があります。 |
労働基準法第20条 |
休業手当 | 会社のせいで従業員が休業することになった場合、その休業日数に応じて、会社は平均賃金の60%の金額を休業手当として従業員に支払う必要があります。 | 労働基準法第26条 |
有給休暇取得時の賃金 | 年次有給休暇を取得した従業員に対して、会社は、平均賃金または所定労働時間に働いた場合に支払われる通常の賃金を支払う必要があります。 なお、実際のところ、通常の賃金が支払われているのが一般的です。 |
労働基準法第39条第9項 |
会社による休業補償・障害補償・遺族補償などの災害補償 | 業務上で従業員がケガや病気にかかったり、死亡した場合、会社は従業員に対して平均賃金等をもとに計算した災害補償金を支払うことになります。 例えば、従業員が労災にあったとき、平均賃金の60%の金額を休業補償として支払うこととなります。 |
労働基準法第75条から第82条 |
減給の上限額 | 会社が制裁として従業員に減給処分をする場合、減給処分一回の金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはいけないとされています。 なお、減給処分をするためには、他にも様々な制約がありますので注意しましょう。 |
労働基準法第91条 |
じん肺法の転換手当 | 労働局長の指示などによって、粉じん作業から別の業務へ従業員の仕事内容が変更された場合には、会社は、平均賃金をもとにした転換手当(平均賃金30日分または60日分)を支払う必要があります。 | じん肺法第22条 |
労災保険による国からの補償 | 通勤中または業務上でケガや病気にかかった場合、国から休業補償、障害補償などの補償金が支給されます。 この労災の補償金額も、基本的に平均賃金をもとに計算されています。 ※正確には、労災では、「給付基礎日額」という基準で補償金額が計算されます。 しかし、この「給付基礎日額」は基本的に「平均賃金」に相当する金額とされています(労働者災害補償保険法第8条第1項前段)。 |
労働者災害補償保険法第8条 他 |
実際の法律上の根拠を確認されたい方のために、参考として、特に重要な法律の条文を以下にまとめています。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。(以下省略)
(休業手当)
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
(年次有給休暇)
第三十九条 ⑨ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。
(休業補償)
第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
(制裁規定の制限)
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
平均賃金算定内訳について
労災保険を国(労働基準監督署)へ請求する際に、平均賃金を算定するときに作成する書類として、「平均賃金算定内訳」があります。
ここでは、平均賃金算定内訳について、サンプルを見ながら書き方を見ていきましょう。
平均賃金算定内訳の書き方
具体的な平均賃金算定内訳の書式は以下の通りです。
参考資料:休業補償給付支給請求書|厚生労働省他
では、この平均賃金算定内訳の書き方を見ていきましょう。
ここでは以下のような事例をもとにサンプルを作成しています。
2023年5月10日に、山田太郎さんが事故にあい、休業することになったケース基本月給20万円(これに残業手当と通勤手当が加算)、賃金締切り日が毎月15日。
まず、右上の「災害発生年月日」は、休業の原因となった事故等の発生日を入力します。
これが、平均賃金を算定する基準日になります。
次に、従業員の方の雇われ方(常用(継続的に雇われている)か、日雇いか)や、給料の計算方法(月給か、日給か)、賃金の締切日などを記入していきます。
続いて、具体的な賃金や手当等の金額を賃金の締め日のサイクル毎に記入していきましょう。
まず、「A」の欄では、月給または週給制等による賃金、つまり、期間に応じて支払われる賃金を書いていきます。
続いて、「B」の欄には、日給または月給制による賃金や、出来高払制などの請負制により支払われる賃金を書いていきます。
AとBのどちらかにしか該当する賃金がなければ、もう一方は空欄のままで構いません。
したがって、今回の山田さんの事例では、月給制が前提になり、B欄は空欄になります。
次に、AとBの合計金額を「総計」の欄に記入します。
続いて、「平均賃金」の欄では、これらの金額をもとにして、平均賃金の基本的な計算を書いていきましょう。
さらに、「最低保障平均賃金の計算方法」で、最低保障額の計算も記載します。
なお、上でご説明している通り、これらのいずれか高い方の金額が平均賃金になります。
以上で、平均賃金算定内訳の主要な記載事項の記入が完了です。
なお、平均賃金の話とは離れるので割愛していますが、平均賃金算定内訳には裏面もあります。
裏面では、休業した期間に対して支払われた賃金があれば記載します。例えば、住居手当(日割計算)などは休業時にも支給されることが多いと思いますので忘れず記入しましょう。
その他にも、「休業の事由」等を簡単に記載して、裏面の記入が完了となります。
平均賃金についてのよくあるQ&A
最後に、平均賃金についてのよくあるQ&Aを説明します。
アルバイトやパートの場合はどう計算するの?
パートやアルバイトの方の賃金は、一般に、時給や日給で計算されることが多いです。
パートやアルバイトの従業員の場合でも、このページで説明した通りに平均賃金を計算することができます。
パートやアルバイトの方の賃金は、一般に、時給や日給で計算されることが多いです。
そのため、上で説明しました最低保障額の計算が必要になることに注意が必要です(「例外その①最低保障額を下回る場合」参照)。
勤務して3ヶ月未満の場合はどうなる?
会社に入社するなどして、働き始めてから3か月未満の期間しか経っていない場合には、基本的な計算方法で「直近の3か月」の総日数で日割り計算してしまうと、平均賃金が実態よりも小さくなってしまいます。
そこで、この場合には以下のように例外的な計算をする必要があります。
具体的には、平均賃金は、働き始めた日(雇い入れられた日)からの期間で支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額になります。
つまり、基本的な計算方法で基礎になっていた「直近の3か月」から、働き始めの日までの日が除かれることになります。
第十二条
⑥ 雇入後三箇月に満たない者については、第一項の期間は、雇入後の期間とする。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
まとめ
本ページでは、平均賃金について詳しく解説してきました。
平均賃金は休業補償手当の金額を計算する場面をはじめとして、様々な場面で計算が必要になります。
一方で、計算方法がやや複雑になっているため、理解するのがやや難しくなっています。
ぜひ、平均賃金の計算が必要な場面では、このページを参考にしていただければと思います。
それでもなお、平均賃金の計算等について不明な点があれば、早いうちに労働法に詳しい弁護士へ相談して、不安を解消することを強くお勧めします。
当事務所では、労働問題を専門に扱うチームがあり、企業の平均賃金の算定を強力にサポートしています。
Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。
平均賃金については、当事務所の労働事件チームまで、お気軽にご相談ください。
この記事が、労働問題にお悩みの企業にとってお役に立てれば幸いです。