無断欠勤で解雇できる?必要な手続・注意点を弁護士がわかりやすく解説

執筆者
弁護士 竹下龍之介

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

保有資格 / 弁護士

状況にもよりますが、一般論として無断欠勤が14日から21日続くと、解雇できる可能性があります。

「無断欠勤」は、職場に迷惑がかかるため、通常、会社の就業規則に違反します。

会社としては、そのような従業員の解雇は認められて当然と思われるかもしれません。

しかし、実は、無断欠勤を理由に社員を解雇した事案でも、裁判所に不当解雇と認定されてしまい、会社が敗訴したという事例も珍しくありません。

このようなリスクを回避するために、会社としては、無断欠勤を理由に解雇が有効と判断される場合を押さえておくべきです。

従業員側にも無断欠勤したことについて、言い分があるケースもあるでしょう。

また、無断欠勤に対して会社側が不当な処分を行うこともあります。

ここでは、労働問題に精通した弁護士が無断欠勤が認められるケースや不当な処分についての対処法等を解説していきます。

無断欠勤とは?

無断欠勤は、会社に何らの連絡をすることなく、従業員が自己判断で、勝手に仕事を休むことです。

裁判例においては、会社への連絡はあるものの、会社を休むことに正当な理由がない場合を無断欠勤と評価するというものもあります(例えば、東京高判平成3年2月20日)。

この点、従業員は、労働契約に基づき、労働する義務を負っています。

無断欠勤はこの義務を怠ることになるため、民法上の債務不履行になり、ペナルティを受けるのです。

したがって、無断欠勤は、従業員が正当な理由なく会社を休み、労働の義務を果たさないことと定義付けられます。

 

 

解雇とは?

無断欠勤を行った場合にありうるペナルティの一つが、解雇になります。

解雇とは、会社からの一方的な通告により、労働契約を終了させることをいいます。

「君は無断欠勤を行ったからクビね」と言い渡す場合が、その典型です。

解雇には、①普通解雇、②整理解雇、③諭旨解雇、④懲戒解雇の4種類がありますが、無断欠勤の場合の解雇は、①普通解雇又は④懲戒解雇が多いでしょう。

解雇についての詳細は、こちらをご覧ください。

 

解雇するには理由が必要

もっとも、日本では、解雇するには、よほどの事情が必要です。

具体的には、解雇するには、就業規則の定め(労働基準法89条)に加え、正当な解雇理由が必要となり、それがない場合には、権利の濫用として解雇は無効になります。

無断欠勤の場合の解雇は、前述したとおり、普通解雇又は懲戒解雇が多いのですが、正当な解雇理由として、いずれの場合も、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要となります。

①客観的に合理的な理由とは、第三者がみても、辞めさせられてもやむを得ない理由をいいます。

例えば無断欠勤が、就業規則の定めから解雇事由にあたるとしても、1回ではなく複数回にのぼり、かつ、反省の態度が見られない場合には、客観的に合理的な理由があるとされます(同旨の裁判例として、大阪地判令和4年7月22日)。

②社会通念上の相当性とは、労働者の行為や状況、会社からの注意指導に対する事後的な態度等に照らして、相当な処分であるか(バランスを欠いていないか)です。

例えば、無断欠勤に対し、会社が注意指導を重ねても改善の見込みがないと判断される事情(例えば、反省がない態度等)があれば、社会通念上相当と判断されます。

なお、懲戒解雇は、最も重い懲戒処分であり、次の就職にも影響を与えうるものです。そのため、無断欠勤で懲戒解雇を行うという場合には、より一層の慎重な検討が必要です。

判例 大学教員の無断欠勤の日数が1か月にも達したという事案

裁判所は、就業規則の規定に沿い懲戒解雇事由には該当するとしつつも、当該欠勤が春休み中で、講義もなく、教員としての業務には大きな支障を来さなかったこと等を理由に、懲戒解雇は、権利の濫用であり、無効であると判断しています(仙台地決平成2年9月21日)。

この裁判例から懲戒解雇ができそうなケースでも条件を厳しくチェックされるのであえて普通解雇を選択するということも検討すべきでしょう。

解雇に、正当な解雇理由が必要なことについて、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

無断欠勤で解雇できる場合

無断欠勤で解雇が認められた判例

では、ここからは、より具体的に、どういう場合に、無断欠勤で解雇できる場合をみていきましょう。

法律では、何日間の無断欠勤があれば解雇が可能等という規定はありません

もっとも、参考になる規定はあります。

それが以下の2つです。

① 行政通達

解雇予告手当なく従業員を解雇できる(=懲戒解雇できる)事例として、行政通達(昭和23年11月11日基発1637号、昭和31年3月1日基発111号)は、以下の例をあげています。

原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。
② 人事院の懲戒処分の指針

国家公務員に関するものとして、人事院の「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職ー68)」は、以下の規定を設けています。

正当な理由なく、21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。

そのため、14日~21日の欠勤があれば、解雇についての客観的な合理性は満たされると考えて良いでしょう。

もちろん、前述したとおり、前提として、欠勤が解雇事由にあたるという就業規則の定めは必要です。

また、欠勤の日数は、あくまでも、無断欠勤が解雇の要件の一つである客観的な合理性を満たすためのものです。

日数として十分であっても、解雇のもう一つの要件である相当性を欠くとして、解雇が無効となることもあるので注意が必要です。

先程もご紹介しましたが、大学教員の無断欠勤の日数が1か月にも達したという事案で、裁判所は、就業規則の規定に沿い懲戒解雇事由には該当するとしつつも、当該欠勤が春休み中で、講義もなく、教員としての業務には大きな支障を来さなかったこと等を理由に、懲戒解雇は、権利の濫用であり、無効であると判断しました(仙台地決平成2年9月21日)。

その他、以下で説明するとおり、無断欠勤の原因が職場環境にある場合や、無断欠勤の原因がうつ病等の精神疾患である場合は、客観的合理性や、社会通念上の相当性を欠く不当解雇として、解雇は無効と判断されます。

したがって、欠勤日数だけで解雇を行うと、判断を誤りかねませんので注意が必要です。

 

無断欠勤の原因が職場環境にある場合

無断欠勤の原因が、職場のハラスメント等の職場環境にある場合は、解雇は相当性を欠き、無効となります。

これは、会社側にハラスメントなどを防止し職場環境を維持する義務があり、従業員の無断欠勤の責任を従業員側にすべて押し付けることができないと考えられるからです。

したがって、無断欠勤をしようとしている従業員が無断欠勤をする前にどのような状況であったかという点も会社は確認しておく必要があります

 

うつ病などが原因の場合

うつ病等の精神疾患が原因での欠勤においては、より一層慎重な対応が求められます。

精神疾患が原因であれば、就業規則等の規定に則った欠勤の手続をとることが期待できないためです。

判例は、「会社に精神科医による健康診断を実施するなどしたうえで、必要な場合は治療を勧めた上で休職等を検討し、その後の経過をみる等の対応をとるべきであり、このような対応をとることなく諭旨退職の懲戒処分を行ったことは、精神的な不調を抱える労働者に対する会社の対応としては適切ではなく、欠勤は正当な理由のない無断欠勤に当たらない」旨を判示し、そもそも懲戒事由にあたらないと判断しています(最判平成24年4月27日)。

したがって、うつ病等の精神疾患が原因での欠勤が続く場合には、会社は、精神科医による健康診断を実施することなく解雇を行うと無効とされてしまう可能性があり、注意が必要です。

また、休職制度がある会社で、実際に従業員が勤続年数等の休職の条件を満たしている場合には、解雇に先立って休職させるということも行っておくべきでしょう。

 

 

会社が解雇するときのポイント

解雇はよほどの事情がなければできない

では、ここからは、会社が無断欠勤を行った社員を解雇するときのポイントを解説いたします。

大事なことなので繰り返しますが、解雇は、よほどの事情がなければできません。「よほどの事情」は、法的にいえば、客観的合理性と社会通念上の相当性です。

  • 客観的合理性=就業規則の定めを前提に、第三者からみても、解雇されてもやむなしといえるだけの理由があること(能力不足、義務違反等)
  • 社会通念上の相当性=個々の労働者の事情(精神疾患等の病状、反省の態度等)、解雇の回避が可能ではなかったか等

 

就業規則の定め

無断欠勤においては、まず、無断欠勤を解雇事由として就業規則として定めることが必要です(労働基準法89条)。

モデル文例としては以下のとおりです。

第○条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
(略)
○ 2週間以上欠勤し、出勤の督促に応じないとき

期間については、2週間より短くても大丈夫ですが、あまりに短期だと、そもそも就業規則に合理性がないとして、解雇は無効になりかねません

先ほどご紹介した行政通達は、2週間以上の無断欠勤があれば懲戒解雇も可能ということを前提にしています。

それを踏まえると、上記のモデル文例のように「2週間以上」とすることが穏当だとは思われます。

もっとも、リスクを承知で、例えば「1週間以上正当な理由なく欠勤し、出勤の督促に応じないとき」と定めることも可能ではあります。

その場合、裁判所は、就業規則の規定を、従業員に酷になりすぎないように限定的に解釈する傾向にあります。

その結果、1週間程度の無断欠勤では解雇は無効と判断されている例も散見されますので、注意が必要です。

 

客観的合理性

冒頭で述べたとおり、無断欠勤は、社会人として許されない行為の代表で、社会不適合者の烙印を押されてもやむを得ない行為です。

ましてや、それが連続して2週間にものぼると、第三者からみても、解雇されてもやむを得ないと思われるでしょう。

したがって、モデル文例のような就業規則の定めがあり、2週間以上正当な理由なく欠勤が続くようであれば、解雇の客観的合理性があるということになります。

 

社会通念上の相当性

もっとも、無断欠勤が続く理由が、例えばハラスメント等の職場環境の悪化であったり、本人の精神疾患であったりする場合には、解雇が相当性を欠くとして、無効になりえます。

ハラスメント等の職場環境の悪化の場合には、会社としてハラスメント対策として何を行ったか、原因の解消に尽力したか等が、相当性が認められるために重要です。

また、本人の精神疾患が原因の場合には、精神科医による健康診断を受けさせる等会社としてできる手立ては行っていること等が相当性が認められるために重要です。

また、反省の機会を与えているか、反省の機会を与えたときの労働者の態度も裁判所が相当性を認めるために考慮している要素になります。

労働者が反省しており、改心を約束しているのに、一発解雇を行うと、それは相当性を欠く不当解雇で無効と評価されやすいです。

他方、労働者が全く反省することなく、反発している場合等は、解雇は相当性があるとして、有効と評価されやすく、その旨を判示し、解雇を有効とした裁判例もあります(例えば、大阪地判令和4年7月22日)。

このように、無断欠勤で解雇を有効に行うということは、実はそう簡単な話ではなく、①合理的な就業規則の定めがあり、②客観的合理性があり、さらに、③社会的相当性もあるという審査をクリアする必要があるのです。

 

解雇以外の手段も検討する

そこで、無断欠勤がある場合も、解雇以外の手段をとることができないかを検討しましょう。

無断欠勤を行うような社員に会社をやめてもらいたいという場合も、解雇はトラブルのリスクを残すことになるため、できるだけ避けるのが望ましいです。

そこで、まずは、退職勧奨を行い、合意退職又は従業員の自主退職を促すことができないかを模索しましょう。

退職勧奨(たいしょくかんしょう)とは、会社側が退職してほしいと考えている従業員に対して、退職を勧めることをいいます。

退職勧奨はあくまでも話し合いによる合意退職を目指すという形を取りますから、従業員と対立せずに雇用契約を終了させるための手段であり、解雇と比べて、より穏当に労働契約を終了させる方法です。

退職勧奨についての詳細はこちらをご覧ください。

もっとも、退職勧奨は成功するとは限りません。

無断欠勤社員が退職勧奨に応じないからといって、執拗に退職を求めてしまうと、それが不法行為となり、民法上の損害賠償責任(慰謝料等)が生じてしまう可能性もあります

判例 航空会社の女性客室乗務員に対する退職勧奨

約4か月にわたり、5人の上司らが30数回もの面談や話し合いを行い、その中には約8時間に及ぶものもあり、面談の中で「CAとして能力がない」、「別の道があるだろう」、「他のCAに迷惑」などと述べ、大声を出したり机を叩いたりしたという事案において、裁判所は、社会通念上許容される範囲を超えた退職勧奨であると認定し、慰謝料として80万円の支払いが命じられました。

したがって、退職勧奨において、深追いは禁物です。

 

解雇相当かを的確に判断する

では、退職勧奨に応じない場合は、どうすれば良いでしょうか?

無断欠勤社員が退職勧奨に応じない場合は、解雇を見据えた適切な対応を会社として行うことが非常に重要です。

解雇無効が争われる裁判では、解雇までに、無断欠勤社員に対して、会社が行った全ての対応に焦点が当たります。

そのため、まずは、無断欠勤社員に対し、①理由の調査を行うことが出発点です。

調査は、周囲及び本人へのヒアリングが基本です。

記録に残す目的で、ヒアリング結果は、議事録に残しておくと良いでしょう。

その結果、ハラスメント等の会社の環境が原因ではなく、専ら本人の問題であると思われる場合には、続いて、②出社命令(指導書)を文書で出すのが良いでしょう。

これも、記録に残す目的で、文書で行うのが望ましいです。

そのようなステップを踏んだうえで、③無断欠勤社員の態度を見極めることが重要です。

反省ありの場合

無断欠勤社員が事態を重くみて、反省する態度を示す等した場合は、解雇に踏み切るのは危険です。

社会通念上の相当性を欠く解雇として、無効になる可能性が高いためです。

この場合には、例えば、就業規則の定めに従い、譴責(けんせき)等の軽めの懲戒処分を行い、それを記録化しておくことです。

そうすれば、次に同様の無断欠勤が起きた場合に、より重い処分(解雇等)を行うことにも社会通念上の相当性が認められるようになります。

譴責処分の前科があるにもかかわらず、同様の無断欠勤が繰り返されたという事実は、無断欠勤社員に反省がないという事情として、相当性の判断に影響します。

譴責(けんせき)については、こちらをご覧ください。

反省なしの場合

他方、無断欠勤社員と面談した結果、反省の色がなく、むしろ、会社の注意に対し反発する等の反抗的な態度をとってきた場合は、解雇に相当性が認められる可能性が高いため、解雇に踏み切っても、有効となる可能性が高いと思われます。

 

労働問題に強い企業側の弁護士のサポートを受ける

このように、無断欠勤社員に対して、特に解雇を行う場合には、慎重に行う必要があります

解雇は法的な判断ですので、労働問題に強い弁護士のサポートを受けることが望ましいです。

前述したとおり、解雇の有効性について、手順を踏み、見通しを立てることができるか否かは極めて重要なスキルです。

ところが、解雇の是非について適切に診断できる専門家は決して多くはありません。

対応を誤ると、無断欠勤社員のような問題社員に会社に居座られてしまいます。

解雇して紛争が顕在化した後は、労働審判や訴訟等、裁判所の手続になることも多く、その分、費用の負担も増えてしまいます。

無断欠勤社員に対して、解雇を悩まれているのであれば、解雇に踏み切る前に、労働問題に強い弁護士のサポートを受けることを検討されると良いでしょう。

当事務所では、労働問題を専門に扱うチームがあり、解雇について、強力にサポートしています。

LINE、ZOOM等を活用したオンライン相談も行っており、全国対応が可能です。

詳しくは、こちらの説明もご覧ください。

 

解雇された従業員のポイント

解雇理由証明書をもらう

続いて、ここからは、無断欠勤で解雇されてしまった場合の従業員としての対応方法をご説明いたします。

まずは、会社に対し、解雇理由の証明書をもらいましょう。

労働基準法は、「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」と規定しています(労基法22条1項)。

無断欠勤が理由で解雇された従業員は、会社に対し、解雇理由の証明書を求めることが可能です。

この証明書は、あくまで、従業員から証明書を求められた場合に交付義務があるものになります。

したがって、まずは、解雇理由を正確に把握するためにも、この証明書の交付を求めましょう。

そこには、解雇が就業規則の第○条○号にあたる旨と、その具体的な理由が記載されているはずです。

解雇理由の証明書については、こちらをご覧ください。

 

解雇を争う余地があるかのチェックポイント

解雇理由証明書をもらった後は、解雇を争う余地があるかをチェックします。

チェックポイントとしては、以下です。

  1. ① 無断欠勤が就業規則の規定から解雇事由として定められているか
  2. ② あなたの今回の無断欠勤は何日間か
  3. ③ あなたの今回の無断欠勤の理由はなにか
  4. ④ 会社からヒアリング等はあったか
  5. ⑤ 解雇以前から反省の態度を示していたか
① 無断欠勤が就業規則の規定から解雇事由として定められているか

無断欠勤を理由に解雇されてしまった場合、まず、その解雇はそもそも就業規則の規定に基づくものかを確認しましょう。

例えば、就業規則には、「2週間以上欠勤し、出勤の督促に応じないとき」に解雇できると定めてあるとします。

にもかかわらず、本件の無断欠勤は1週間にとどまる場合には、その解雇は、就業規則に定めがない不当解雇となりますので、争えます。

② あなたの今回の無断欠勤は何日間か

無断欠勤の日数によっても争う余地があります。

例えば、就業規則で、無断欠勤で解雇できる日数についての定めがなく、形式上は、就業規則の規定をクリアしています。

しかし、1日無断欠勤しただけ等、無断欠勤の日数が短い場合は、裁判所は、就業規則の規定を限定的に解釈する傾向にあるため、解雇は客観的に合理性を欠くとして無効になる可能性が高まります

一般論としては、2週間以上の無断欠勤がある場合には、解雇を争う余地は少なくなるでしょう。

③ あなたの今回の無断欠勤の理由はなにか

無断欠勤の日数が2週間以上で、その場合に解雇できる旨の就業規則の定めがあるとしても、無断欠勤の理由によっては解雇は無効となる可能性があります

例えば、会社でのハラスメントに苦しめられておりそれが理由で欠勤せざるを得ない状況に追い込まれた等の場合には、解雇は相当性を欠くとして、無効となる可能性があります。

また、うつ病等の精神疾患が原因で、無断欠勤してしまったという場合も、会社から、例えば、精神科医による健康診断をすすめられる等もなく一発解雇されてしまったという場合には、解雇を争う余地があります。

要するに、無断欠勤の理由が、本人の単なる怠慢ではないという観点で、正当化できるかが争う余地を判断するためのポイントです。

ただし、解雇の後になってハラスメントを受けていたと主張して、理由を後付けするような場合には、そもそもその主張が合理的なものではなく、無断欠勤の言い訳と取り扱われる可能性も十分にあります。もし、ハラスメントを実際に受けているのであれば、早い段階で会社側に申し出ておくべきでしょう。

④ 会社からヒアリング等はあったか

裁判所は、無断欠勤による解雇の有効性を判断するにあたって、会社が適正な手続きをとったかを重視しています。

そのため、無断欠勤の理由等を弁明する機会が与えられたかは解雇の相当性の判断に際し、重視されます。

仮に、ヒアリング等が試みられることなく、弁明の機会が全く与えられない場合は、解雇の相当性を争う余地があります

⑤ 解雇以前から反省の態度を示していたか

裁判所は、無断欠勤による解雇の有効性を判断するにあたって、無断欠勤社員が真摯に反省の意思を示していたかも重視しています。

真摯に反省しており、その意思を反省文や始末書で示したにも関わらず、解雇が断行されてしまったという場合には、解雇の相当性を争う余地があるといえます。

記録に残すという意味でも、反省の意思は、反省文や始末書のような書面で顕し、そのコピーを手元に残しておくと良いでしょう

解雇されてから反省文を出してもそれは遅いということになります。

無断欠勤は社会人として望ましくない行為であることは間違いありませんので、もし、無断欠勤をしてしまったのであれば、解雇以前から会社に反省の態度を示しておくことが大切です。

以上を踏まえて、解雇を争う余地があるかを判断することになります。

解雇を争う余地がなさそうであれば、解雇された後の失業保険を受給できる場合は、その手続をとりましょう。

一般的には、解雇は会社都合退職となります

会社都合退職の場合、解雇の日より前の1年間に被保険者期間が6か月以上あること(雇用保険法13条2項)が要件で、年齢により受給できる日数は90日〜330日の間で、細かく分けられています(雇用保険法23条1項)。具体的な失業保険の手続は、ハローワークで行うことになります。

失業保険について詳しくはこちらをご覧ください。

 

退職金をもらえない場合

退職金規定がある会社の場合には、無断欠勤を理由に解雇された場合にも、退職金を請求できることがあります

前提としては、退職金は、退職金制度がある会社においてしか請求できませんので、会社に退職金規定があるかを把握しましょう。

退職金規定がある場合、解雇の場合に退職金がもらえないという規定なのかどうかを確認しましょう。

一般的には、解雇の中でも、懲戒解雇の場合には、退職金を不支給という旨の規定があることが多いです。

もっとも、懲戒解雇の場合であっても、退職金不支給が許されるのは、従業員の過去の労働に対する評価を全て抹消させてしまう程度の著しい不信行為があった場合に限られると解されています(東京高判平成15年12月11日)。

したがって、この裁判例に基づき、懲戒解雇の場合でも退職金を一部でも請求できることがあります。

無断欠勤が、従業員の過去の評価を全て抹消させてしまう程度の著しい不信行為という評価は、通常は難しいように思いますので、争う余地は十分にあるでしょう。

 

 

労働問題に強い従業員側の弁護士に相談する

このように、無断欠勤で解雇されてしまった場合、その内容によっては、十分に争う余地があります。

もっとも、解雇や退職金不支給の問題は法的な判断ですので、労働問題に強い弁護士のサポートを受けることが望ましいですが、解雇の有効性、退職金不支給の有効性について裁判例をもとに適切に診断できる専門家は決して多くはありません。

無断欠勤が理由で解雇されてしまったという場合には、泣き寝入りする前に、労働問題に強い弁護士のサポートを受けることを検討されると良いでしょう。

当事務所では、労働問題を専門に扱うチームがあり、解雇について、強力にサポートしています。

LINE、ZOOM等を活用したオンライン相談も行っており、全国対応が可能ですのでご活用ください。

詳しくは、こちらをご覧ください。

 

 

まとめ

以上、無断欠勤と解雇について、詳しく解説いたしました。

無断欠勤による解雇が認められる場合について、法律による日数の基準はありません。

しかし、一般論としては、14日〜21日の無断欠勤があれば解雇は有効と認められる可能性が高いと言えます。

加えて、解雇の有効性(合理性と相当性)については、個別具体的に判断する必要があります。

デイライト法律事務所では、無断欠勤と解雇に関するご相談を随時受け付けており、専門チームが対応いたします。

無断欠勤と解雇で悩まれている方は、ぜひ、デイライト法律事務所にご連絡ください。

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