懲戒解雇の会社側のデメリット|解雇前の対策・デメリットの軽減方法
懲戒解雇をする際の会社側の3つのデメリット
懲戒解雇を行う場合には、労働者との間で訴訟トラブルに発展する可能性があるというデメリットがあります。
以下では、訴訟となった場合、具体的にどのような点がデメリットといえるのかを解説します。
①敗訴するリスクがある
懲戒解雇は、懲戒処分の中でも最も重く、労働者の地位を一方的に剥奪する処分です。
まずは懲戒解雇に関する法律の規制を見てみましょう。
懲戒解雇については労働契約法という法律が基準を定めています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念条相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元: 労働契約法 | e-Gov法令検索
これらの条文から分かるとおり、懲戒解雇を行うためには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念条の相当性」が必要となります。
これらの要件を満たしているか否かは、個別の事案に応じて判断されますが、懲戒解雇の場合は、普通解雇等と比べても厳しくチェックが行われると考えなければなりません。
会社としては当然懲戒解雇相当だと考えているような事案であっても、会社側が敗訴することも十分に考えられます。
どのような場合に会社が敗訴するのかを検討するために重要となるのは判例です。
判例を見ることで、裁判所の傾向を知ることができます。
以下では、実際に会社が敗訴した3つの裁判例(メンタルヘルス不調社員の問題行動、パワハラ、不正請求)をご紹介します。
ご自身のケースと比べながらご覧になってください。
メンタルヘルス不調社員の問題行動に対する解雇〜東京地方裁判所令和2年2月19日判決〜
事案の概要
労働者が、職場でカッターナイフを持ち出し、上司の目の前で自らの手首を切る動作を行うなどして、警察が出動する事態になった。
会社は、このような事態を踏まえ、業務上の指示命令に反して職場の秩序を混乱させたことを理由に、当該労働者を諭旨解雇処分とした後に懲戒解雇処分とした。
この処分を不当と考えた労働者が訴訟を提起した。
判決の要旨
労働者の問題行動は以下のとおり。
労働者は、平成29年4月の人事総務部室内のレイアウト変更において、自席がグループリーダーの横に配置されたことに強く反発してこれを拒絶した。
これにとどまらず、同月24日、前日の事故の退社後に席が移動されたことを知るや、部長に対し、座席配置の変更について配慮のない行為をされ、精神疾患を誘発した責任を部長にとってもらうなどといったメールを部長に送信し、翌日も部長に対し、同旨の言動をして精神疾患に対する治療費を支払うよう求め、その住所を聞き出そうとしたり、部長の前に立ちはだかったり、行く手を遮ろうとしたもので、被害妄想的な受け止め方に基づき、身勝手かつ常軌を逸した言動を繰り返したものと言わざるを得ないし、その動機においても酌量すべき点はない。
翌26日にも、病院への通院や弁護士の相談に行くための職場離脱を業務扱いにするよう求め、部長にこれを断れるや、カッターの刃を持ち出して部長の面前で自らの手首を切る動作をしたものであって、その動機は身勝手かつ短絡的である上、部長や周囲の職員の対応いかんによっては、自傷他害の結果も生じかねない危険な行為であったといえる。
労働者の行為によって、周囲の職員に与えた衝撃と恐怖感は大きかったものと推察されるし、2度も警察官が臨場する騒ぎとなったことも軽く見ることのできない事情である。
これらの事情から、懲戒事由該当性は認められるものの、労働者には懲戒処分歴はなかったことなど、1度目の懲戒処分で労働者を直ちに諭旨解雇とすることは、やや重きに失するというべきである。
判断のポイント
業務命令に従わず、社内でトラブルばかり起こす問題社員は直ちに解雇したいと考えてしまうことでしょう。
会社側の立場であればそのような発想が一般的ではありますが、上記の事例でさえ懲戒解雇が認められない可能性があるというのは、なかなかの衝撃なのではないでしょうか。
判断のポイントとしては、裁判所の判断にもあるとおり、当該従業員が大きな問題を起こしたのは初めてであるということでしょう。
懲戒解雇や諭旨解雇は、雇用契約の地位を剥奪するというとても重たい処分です。
そのため、職場で犯罪にはならないレベルのトラブルを起こした者がいたとしても、一発で懲戒解雇とすることは避けるのが無難ということになります。
業務命令に従わない等の問題行動がみられた場合には、その都度適切な指導や懲戒処分を行うことで、のちに懲戒解雇を行う土台を作っておきましょう。
パワハラ等に対する解雇〜前橋地方裁判所平成29年10月4日判決〜
事案の概要
原告が勤務している大学において、原告は複数の大学講師に対して、①仕事が遅いこと及び業績がない事実を繰り返し指摘して叱責し、②強く非難したり転職活動を勧めたりするなどの侮辱的な人格否定を行い、③その際に机を叩く等の行動を取っていた。
このようなパワーハラスメントを行なった原告に対して、被告である大学側は諭旨解雇処分としたものの、原告がこれに応じなかったために懲戒解雇を行なったところ、原告が懲戒解雇を不当として提訴した。
判決の要旨
原告の懲戒事由に該当するハラスメントの内容及び回数は限定的である。
その上、原告のパワーハラスメントは、いずれも業務の適正な範囲を超えるものであるものの、業務上の必要性を全く欠くとは言い難いし〜原告のハラスメントの悪質性が高いとは言い難い。
懲戒処分として最も重い処分であり、即時に労働者としての地位を失い、大きな経済的及び社会的損失を伴う懲戒解雇とすることは、上記懲戒事由との関係では均衡を欠き、社会通念条相当性を欠く。
判断のポイント
被害者が複数名いることや、侮辱的な人格否定などが行われていたことなどの事情を踏まえると、間違いなくパワーハラスメントに該当する事案です。
この判決も労働者の言動がパワーハラスメントに該当することは認定しています。
しかしながら、業務上の必要性が一定程度認められるような事案であれば、その悪質性は高くはないと判断される可能性があるということです。
昨今はハラスメント事案に対する世間の風当たりも強く、コンプライアンスの観点からも、厳重な処分をもって対処しなければならないと感じられることが多いことでしょう。
ですが、たとえハラスメント事案であっても、その悪質性の判断を誤れば懲戒解雇は無効となってしまうのです。
不正請求に対する解雇〜大阪地方裁判所令和元年12月12日判決〜
事案の概要
医薬品の営業業務に従事していた労働者が、虚偽の訪問報告や交通費の不正請求を行なったとして懲戒解雇された事例。
判決の要旨
以下のような理由から、懲戒解雇は社会通念上相当であるとは認められないと判断した。
- ① 労働者が営業先を訪れなかったと認められたのは16項目にとどまること
- ② そのうちのほとんどが当該営業先を訪れていないものの、同じ日に当該営業先所在地付近には訪れたり、他の営業先を訪れたりしていること
- ③ 担当営業先が500以上にも上ることも考慮すると、上記不訪問回数が多いとまではいえないこと、それにより労働者が得た旅費とうが多額であるとは認められないこと
- ④ 上司が労働者に対し、一度注意を行なっているとしても、日当の二重請求や出張の事前申請を怠ったこと等についてのものであり、営業先を訪れていないこと自体の注意ではなかったこと
- ⑤ その後の会社による確認等は、本件懲戒解雇に至る一連の調査におけるものであって、労働者が営業先を訪問していないことに関する注意を受ける機会は、本件懲戒解雇の際が最初であったとみられること
- ⑥ それまでに同様の行為によって何らかの処分を受けた事実も見当たらないことが認められる。
判断のポイント
交通費の不正請求は、詐欺や横領の罪に問われる可能性がある犯罪行為です。
社内における犯罪行為が認められているにもかかわらず、裁判所は懲戒解雇を無効としています。
不正請求とはいえ、その悪質性が低ければ懲戒処分とすることが出来ないということです。
また、この事例では、懲戒解雇の前に一度も注意を行なっていないという、手続的な側面も解雇を無効とした理由に挙げています。
もちろん悪質性の高い不正行為を行なっていた場合には一発で懲戒解雇とすることも認められるでしょうが、それほど悪質性が高くない場合には、犯罪行為に当たるような行為であっても、きちんと注意・指導を繰り返しておく必要があるといえるでしょう。
労働者への指導については、口頭ではなく、指導書を交付するなどして証拠化しておくことをお勧めします。
②敗訴時のダメージが大きい
解雇した労働者の復帰
裁判で懲戒解雇が無効となった結果、懲戒解雇は行われなかったとして扱われます。
そのため、会社は当該労働者を復職させて、雇用契約を継続しなければならなくなります。
周囲の社員への悪影響等を考えると、問題社員が堂々と会社に戻ってくるということは、会社にとって大きなダメージとなるでしょう。
賃金相当額の賠償
また、懲戒解雇が行われなかったことになるということは、当該労働者に対して会社は賃金を支払う義務を負っていることになります。
労働者は働いていないのに、なぜ賃金を支払わなければならないのかと考えられる方もいらっしゃるでしょう。
法律上は、債権者に責任がある理由によって債務者が債務を履行できなかったとしても、債務者は反対給付の請求権を失わないことになっています(民法第536条2項)。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
わかりにくい法律なので、噛み砕いて説明します。
解雇が無効である以上、労働者(債務者)が労務を提供出来なかったのは会社(債権者)の責任と捉えられます。
そうすると、労働者は会社のせいで働けなかったということになりますから、反対給付の請求として、賃金の請求を行えるということになるのです。
労働者1名の賃金とはいえ、裁判はすぐに終わるものではありませんから、訴訟が長引いた末に敗訴してしまうと、労働者への賠償金が1000万円を超えることもありうるでしょう。
特に中小企業にとっては、このような多額の賠償金が会社の経営を圧迫してしまうことも十分に考えられますから、会社にとってのダメージは非常に大きいといえます。
③裁判の費用や労力といった負担が大きい
労働問題に関する裁判所の手続きは2つあります。
1つは比較的短期間で手続きが終了する労働審判です。
概ね2か月ほどの間で数回の期日を開き、和解を目指すという手続きになります。
しかしながら、手続きの選択権は基本的に訴えを起こす側にありますから、労働者が短期間での解決は望んでおらず、徹底的に争うという姿勢の場合には、労働審判は利用できません。
もう1つの手続きは、正式な裁判です。
この場合、1年以上かかることは想定しておかなければなりません。
労働者からいずれかの訴えを起こされた場合には、会社が直接対応するのではなく、弁護士に依頼を行うことになるでしょう。
しかしながら、弁護士に任せた後は全く事件のことを考えなくてよいかというと、そうではありません。
事件を担当する弁護士が訴訟に対応するために必要な聞き取りや資料収集、場合によっては証人としての出頭等、会社側でもやるべきことはたくさんあります。
訴訟となった以上、これらの労力は避けられないものです。
そのため、特に労働裁判においては、費用と労力を相当程度使うことになるでしょう。
以上が懲戒解雇を行なった場合の会社側のデメリットになります。
そもそも懲戒解雇の会社側のメリットとは?
デメリットについてくわしく説明しましたが、このようなリスクを犯してまで懲戒解雇を行う会社のメリットはあるのでしょうか。
一方的に労働契約を終了させられる
懲戒解雇に限ったメリットではありませんが、解雇を行う場合、労働者の意向にかかわらず、会社が一方的に雇用契約を終了させることになります。
有効性の判断はさておき、問題を起こした労働者を会社の意向で排除できるという点は懲戒解雇のメリットになるでしょう。
社内に示しをつけられる
懲戒解雇を行うことを検討するということは、対象となっている労働者が社内において相当大きな問題を起こしたということが想定出来ます。
そのような場合に会社がどのような処分を行うのかということは、他の労働者もしっかり見ていることでしょう。
問題を起こしても特に重い処分を受けないというのであれば、他の労働者も同じような問題を起こしても大丈夫だと考え、社内の風紀が乱れるかもしれません。
反対に、大きな問題を起こした労働者に対して懲戒解雇という重い処分を下すことで、信賞必罰の姿勢を他の労働者に示すことが出来ます。
社内に示しをつけられるという意味では、たしかに懲戒解雇にもメリットがあるといえるでしょう。
解雇予告等が不要
本来、解雇をする場合には、30日前までの解雇予告か、それに満たない場合には30日に達するまでの賃金相当額を解雇予告手当として支払うことが必要です(労働基準法第20条)。
しかしながら、懲戒解雇のように労働者の責任による解雇の場合には、除外認定の手続きを行うことで、解雇予告や解雇予告手当ては不要となります(同条但書)。
普通解雇と異なり、即日の解雇が可能であるという点も懲戒解雇のメリットの一つと考えられます。
デメリットを軽減する方法
懲戒解雇のデメリットを軽減できる3つの方法をご紹介します。
①普通解雇や諭旨解雇を検討する
懲戒解雇は既に解説したとおり、無効と判断されるリスクが相当程度あります。
そのため、懲戒解雇ではなく、普通解雇による雇用契約の終了を検討することも考えられます。
また、諭旨解雇にするという方法も考えられます。
諭旨解雇(ゆしかいこ)とは、会社が従業員に退職届もしくは辞表の提出を勧告し、従業員にそれらの書面を提出させた上で解雇する処分のことをいいます。
従業員が書面の提出に応じなければ懲戒解雇に処するという取り扱いとなることが多く、形式上は依願退職のような形となりますが、実際は紛れもなく懲戒処分の一種です。
ただし、普通解雇も諭旨解雇も解雇には変わりありませんので、懲戒解雇と同じく労働者から解雇の有効性を争われるリスクはそれほど変わりません。
懲戒解雇ではなく普通解雇等を選択するメリットは、裁判所が解雇の有効性を判断する際のハードルが若干低くなるという点にあります。
そのため、懲戒解雇よりは普通解雇等を選択した方が、訴訟になった場合に敗訴するリスクを若干減らすことができるということになります。
②退職勧奨
普通解雇は懲戒解雇よりも多少有効性が認められやすいとはいえ、労働者からすると「解雇された」という事実に変わりはなく、訴訟を提起されるリスクは否定できません。
訴訟リスクをより低減するという意味では、退職勧奨という手段が考えられます。
退職勧奨とは、会社側が退職してほしいと考えている労働者に対して、退職を進めることをいいます。
あくまで話し合いによって合意退職を目指すという形を取りますから、労働者と対立することなく雇用契約を終了させる手段になります。
問題行動を起こした労働者に対し、懲戒処分としては減給等にとどめた上で、退職勧奨を行うということも一つの選択肢です。
退職勧奨もやり方を間違えてしまうと、退職強要があったとして労働者に訴えられるリスクはありますが、やり方を間違えない限り問題はありません。
③弁護士への相談
懲戒解雇を行うことを検討している労働者について弁護士に相談することで、その労働者を懲戒解雇とすることのリスクがどれほどあるのかを知ることが出来ます。
相談した結果、やはり懲戒解雇の方針で進めるという場合には、どのような証拠が必要か、どのような手続きを行うべきかということも聞くことが出来ます。
懲戒解雇のリスクを0にすることは出来ませんが、弁護士に相談をすることで、可能な限り懲戒解雇が無効とされるリスクを減らすことは出来るでしょう。
弁護士への相談で重要なこと
弁護士には、得意分野があります。
特に懲戒解雇の事案は、仮に裁判となると会社には大きな負担が生じます。
そのため、労働法を専門に扱う弁護士への相談をお勧めいたします。
また、労働法を専門に扱う弁護士は、会社側と労働者側に別れている傾向です。
したがって、会社側の弁護士に相談されるようにするとよいでしょう。
懲戒解雇の前に企業が対策できること
懲戒解雇を行うことを決断した場合、訴訟で懲戒解雇が無効であると判断されないように気を付けなければなりません。
そのためには、懲戒解雇を行う前の準備・対策が必須です。
以下の事項に気を付けて準備を進めていくとよいでしょう。
①懲戒事由が存在することを示す証拠を確保する
懲戒解雇は、労働者が就業規則に定める懲戒事由に該当していることを理由に行われるものです。
そのため、懲戒解雇が有効と判断される大前提として、裁判において懲戒理由があることを認定してもらう必要があります。
以下の裁判例を見ても、そもそも会社側が懲戒解雇の根拠とした問題行動自体が認定出来ないとして、懲戒解雇が無効となっている例も散見されます。
懲戒事由の存在が認められなかった事案〜大分地方裁判所令和元年12月19日判決〜
事案の概要
病院の院長が、業務上横領・医師法違反・秘密漏示・パワーハラスメント等を理由として懲戒解雇とされた事例
判決の要旨
病院業務に支障が出ない範囲で他院に器具の貸し出しを行ったもので、返却も行われているから、権限内の行為で懲戒事由には該当しない。
懲戒事由が一切認められない以上、懲戒解雇は無効である。
懲戒事由の存在は、懲戒解雇を行った会社側に立証責任があり、裁判所を説得できる証拠がないと裁判では敗訴となってしまいます。
このような事態を避けるためにも、懲戒解雇を行う前に、十分に社内調査を行い、証拠を徹底的に収集しておくべきです。
社内調査のポイント
社内調査では、問題行動を行った従業員はもちろん、その関係者(被害者、目撃者等)から十分に事情を聴取する必要があります。
このとき、聴取した内容については、できるだけ書面(事情聴取書)にして残しておくことお勧めいたします。
適切に実施して作成した事情聴取書は、後日裁判に発展したときに、会社の主張を裏付ける重要な証拠となります。
当事務所では、事情聴取書の雛形・書き方をホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。ぜひ参考にしてください。
ただし、事情聴取はそのやり方を誤ると証拠の価値がなくなってしまいます。
そのため、できるだけ労働問題に精通した弁護士に事前に相談し、事情聴取の方法について具体的な助言を得ることをお勧めいたします。
裁判所は、客観的な証拠を重視します。
客観証拠の例としては、例えば、録音や録画のデータ、写真、メール等があげられますが、状況によって異なります。
例えば、A従業員がB従業員にパワハラを行ったとします。
このとき、そのパワハラが録画されていれば、その録画映像は客観証拠と言えるでしょう。
また、AがBに対して、メールでパワハラ(脅迫や暴言などがメールに記載されていたなど)を行っていた場合、そのメールは客観証拠と考えられます。
これに対して、Bの裁判での証言(Aからパワハラを受けたなど)は、客観証拠ではなく、証拠の価値は高くありません。
Bが嘘をついている可能性があるからです。
懲戒解雇の正当性を裏付けるために、客観証拠は極めて重要ですが、何が客観証拠となるかはケース・バイ・ケースです。
そのため、できるだけ労働問題に精通した弁護士に事前に相談し、証拠の収集方法について具体的な助言を得ることをお勧めいたします。
②就業規則で決まっている手続きを遵守する
ほとんどの会社では、就業規則の中で懲戒処分を行う場合の手続きが定められているはずです。
たとえば、懲戒処分を行う場合には、懲戒委員会を設けて審議を行うことや、当該労働者に対して聴聞の手続きを行うことが決められていることがあります。
懲戒解雇を行う場合には、必ずこのような手続きに従ってください。
そうしなければ、就業規則で定められている手続きを守らなかったことを理由に懲戒解雇が無効とされる可能性があります。
手続面の不備は、注意さえすれば絶対に避けられるはずですから、懲戒解雇を行おうとする際には一度就業規則の確認を行いましょう。
③労働者に弁明の機会を与えること
これも手続的な話になりますが、懲戒解雇を行う際には必ず労働者に弁明の機会を与えましょう。
以下の裁判例のように、労働者に弁明の機会を与えているかどうかも解雇の有効性判断において考慮されています。
弁明の機会の付与が問題となった事案〜東京地方裁判所平成24年11月30日判決抜粋〜
判旨:「懲戒処分(とりわけ懲戒解雇)は、刑罰に類似する制裁罰としての性格を有するものである以上、使用者は、実質的な弁明が行われるよう、その機会を付与すべきものと解され、その手続に看過しがたい瑕疵が認められる場合には、当該懲戒処分は手続的に相当性に欠け、それだけでも無効原因を構成しうるものと解される」
まとめ
懲戒解雇の会社側から見たデメリットについての解説は以上となります。
懲戒解雇は、社内に示しをつける等のメリットもありますが、他の手続きによって目的を果たせる場合も多々あることでしょう。
解雇の有効性に関する日本の裁判所の判断は、皆様が思っているよりも厳しく、安易に懲戒解雇を選択してしまうと大きなリスクを背負うことになってしまいます。
懲戒解雇を行う前に、必ず弁護士に相談することをお勧めいたします。
そうすることで個別の事案に応じた懲戒解雇のリスクの程度を判断し、リスクが高い場合には懲戒解雇以外の選択肢も検討することが出来ます。
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