ダイバーシティ経営とは?【弁護士解説】
ダイバーシティ経営とは
ダイバーシティ経営とは、国籍、性別、年齢などに関係なく、多様な人材を活かす経営手法のことをいいます。
ダイバーシティは、直訳すると「多様性」という言葉です。
人類の歴史を振り返ると、人間は自分と異質なものは受け入れないという考えが支配的でした。
近年、少子高齢化や出生率の低下を背景として、労働生産人口の減少が問題視されており、女性、外国国籍の方、障害を持つ方、高齢の方なども積極的に活用しなければ、企業は成長発展することが難しくなってきました。
このような社会状況の中、異なる性質のものが共存していることを前提として、相違を認めた上で人材を活かすという経営手法が注目されてきています。
ここでは、労働問題に注力する弁護士がダイバーシティ経営のメリット、各種施策、労務管理上の注意点などについて解説します。
導入するメリット
労働力不足を補える
現在、当法律事務所には、企業から効果的な採用手法や従業員の離職防止についての相談が増加しています。
人手不足に多くの企業の苦しんでいると感じています。
今後、政府の試算によれば、就業者数は2030年には5561万人にまで減少する(2015年の6376万人から約13パーセントもの減少)と見込まれています(総務省「労働力調査」)。
ダイバーシティ経営によって、これまで採用の対象としなかったような外国国籍の方、障害をお持ちの方、高齢者の方などを採用することは、人手不足の解消につながるといえます。
働き方改革による生産性の向上
ダイバーシティ・マネジメントは、異なる者を新たに受け入れる(採用)だけではなく、現在、雇用している労働者については、ライフスタイルの多様性を推奨しようとする経営手法です。
例えば、後述する労働時間についての多様性がその一つです。
このような取り組みは無駄な残業を減少させて生産性を向上させると考えられます。
インクルージョンによる企業イメージのアップ
ダイバーシティは近年注目されている新しい経営手法です。
このような従業員一人ひとりの違いを価値あるものとして高く評価し、組織全体で包み込むように迎え入れ、個々の能力やスキル、経験、強みを最大限に活かそうとする経営手法は、インクルージョン(包摂)とも呼ばれており、クローバル企業の時流となっています。
そのため、ダイバーシティを推進すると企業イメージは向上すると考えられます。
イノベーションの可能性
環境の変化が著しい現代において、新しい商品やサービスを開発することは企業にとって最重要と考えられます。
このようなイノベーションは、均一化された組織においては、難しいと考えられます。
従来とは異なる発想や革新的なアイデアは、様々な価値観や意見を受け入れることでこそ芽生えるからです。
そのため、ダイバーシティは、イノベーションを目指す企業にとって必要不可欠と考えられます。
ダイバーシティの取組事例
外国人の雇用
外国人の積極雇用は、近年の労働力不足を解消するために注目されています。
しかし、そのような「足りないから補う」という消極的な目的ではなく、企業の競争力を強化するという積極的な目的で外国人を雇用する企業も増えています。
特に、ターゲット顧客に外国人が含まれる企業やこれから海外進出をしていこうとする企業にとって、外国人の従業員、経営幹部は必須と考えられます。
外国人の採用や労働問題については、こちらのページをご覧ください。
女性の活躍推進
一昔前は、大企業でも女性は出産を機に退職する、という風潮がありました。
また、重役は男性ばかり、という企業がほとんどでした。
しかし、現在では、女性を積極的に活かそうとする企業が増加しています。
すなわち、労働力人口の不足を背景として、出産後も正社員として雇用し続ける企業が増加しています。
また、単に、労働力不足を補う、という消極的な目的ではなく、男性にはない女性の持つ感性やセンスを取り入れるため、重役に起用する企業も増加しています。
女性が活躍できる労務管理についてはこちらのページをご覧ください。
LGBTへの配慮と活用
LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害を含む心身の性別不一致)の頭文字を取ったものであり、性的少数者を意味する言葉です。
従来、このような方々は、偏見の目で見られることが多く、社会的な抑圧の中で困難と戦いながら生活されていました。
しかし、近年、「自由」に対する価値観の変化、不当な差別をなくそうという動きなどから、LGBTであることをカミングアウトされる方々が多く出てきています。
また、LGBTの方々の中には、芸術的なセンスや類まれな才能を持っている方が多くいらっしゃいます。
このような「人財」を積極的に活用するために、近年、採用や労務管理においてLGBTの方々に配慮する企業が増加しています。
LGBTの労働問題に関してはこちらをご覧ください。
ライフスタイルの多様性
多様な価値観や自由な発想を促すために、従来の労務管理のあり方を見直して、自由度が高い働き方を推進する企業が増加しています。
以下はその一例です。
フレックスタイム制
フレックスタイム制(労基法32条の3)は、1日の労働時間の長さを固定せずに、1ヶ月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決めるという制度です。
フレックスタイム制について、くわしくはこちらのページをご覧ください。
フレックス休暇
フレックス休暇は、上記のフレックスタイム制を休暇に応用したものです。
すなわち、労働者が各自で休暇を自由に決めることができる制度のことです。
このフレックス休暇は、労基法上のものではなりませんが、多様な働き方に資するものとして、当法律事務所が考案し、推奨している言葉です。
フレックス休暇について、くわしくはこちらのページをご覧ください。
自宅勤務(リモートワーク)
自宅勤務とは、狭く限定すると、会社と雇用関係にある従業員が会社に出社せず、自宅で情報通信機器を活用して働く勤務形態をいいます。
また、広義では、自宅に近い地域にある小規模なオフィスで業務に勤務する、「サテライトオフィス勤務」や、スマホ・PC・タブレット等を利用して、柔軟に選択した場所で勤務する、「モバイルワーク」も在宅勤務に含まれます。
自宅勤務について、くわしくはこちらのページをご覧ください。
労務管理上の注意点
就業規則の変更
タイバーシティ・マネジメントを推進する場合、従来の労働条件を変更することとなります。
そのため、就業規則の見直しと改定が必要となるでしょう。
また、ライフスタイルの多様性を推進するためにフレックスタイム制や自宅勤務等を導入する場合、新たな規定の策定が必要となります。
さらに、外国人を雇用する場合、当該外国人が理解できる言語や英語等の就業規則も作成したほうがよいでしょう。
就業規則を見直す際のポイントについては、こちらのページをご覧ください。
雇用契約書・労働条件通知書の修正
外国人を雇用する場合、当該外国人が理解できる言語で雇用契約書を作成すべきです。
また、ライフスタイルの多様性を推進するために、現在雇用している労働者の労働条件を変更する場合、雇用契約書(または労働条件通知書)の修正をしたほうがよいでしょう。
雇用契約書を修正するポイントについては、こちらのページをご覧ください。
マネジメント上の留意点
ダイバーシティは、従来、異質と思われていたものを積極的に取り入れようとする経営手法です。
ダイバーシティを成功させるためには、就業規則や各種規定を見直すだけでなく、会社の組織文化、従業員の意識も変革しなければなりません。
そのために、全従業員がダイバーシティの重要性について理解しておくべきです。
ところが、ダイバーシティの重要性について、経営トップは理解していても、従業員は理解していないというケースが多々あります。
そのため、会社は全従業員に対して意識改革を行わなければなりません。
ダイバーシティのサポート
会社がダイバーシティ経営にシフトするためには、経営労務に精通した専門家のサポートを受けることが効果的、かつ、効率的です。
専門家のサポート内容としては以下のものがあります。
ダイバーシティの相談
ダイバーシティと一口に言っても、上述したように様々な取り組みがあります。
具体的にどのような取り組みを行うべきかは、企業がおかれた状況によって異なります。
そこで、まず専門家に話を聞いてもらい、ダイバーシティの取り組みについて提案をしてもらうとよいでしょう。
また、具体的な取り組みが決まった後も、それを定着させるためには継続したサポートが必要となります。
専門家の継続的なコンサルティングを受けながら、ダイバーシティを推進していくと成功の可能性が高くなると考えられます。
就業規則等のチェックと変更サポート
ダイバーシティ経営にシフトするためには、就業規則、各種規定や雇用契約書のチェックと修正等が必要となります。
これについては、労働問題に詳しい弁護士や社労士等に依頼して、適切なものを作成するようにするとよいでしょう。
ダイバーシティの研修
ダイバーシティを社内に浸透させるためには人事担当者、その他従業員への教育が必要です。
専門家であれば、そのような教育研修も対応できると考えられます。
まとめ
以上、ダイバーシティ・マネジメントについて、詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。
ダイバーシティは、日本企業が生き残っていくためには必要不可欠と言っても過言ではありません。
また、メリットが大きいため中小企業であっても積極的に推進していくべきです。
しかし、労務管理上の注意点やマネジメントの難しさといった問題もあります。
これらについては、経営や労働問題に詳しい弁護士に相談し、適切なサポートを受けることでクリアーできると考えられます。
デイライトの労働事件チームは、企業側の労働事件に注力した弁護士や経営に精通したMBA取得者で構成されるプロフェッショナル集団であり、全国の企業や社労士から多くの相談を受けております。
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