ワクチン休暇についてどう対応すべき?―弁護士が解説
はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。
8月20日現在、首都圏や大阪だけでなく、もはや全国的に連日新規陽性者が過去最高を記録しています。
福岡県でも今月に入り、1日の新規陽性者が初めて1000人を超え、再び緊急事態宣言が発出されました。
このような中、新型コロナウイルスの感染を予防する、万が一、ブレークスルー感染が生じてしまった場合でも重症化を防ぐ効果があるとされているのがワクチンです。
国や地方自治体は急ピッチでワクチン接種を進めており、医療従事者や高齢者の接種が一段落し、徐々に若い世代が接種できるようになってきました。
弊所の所在する福岡市でも、20代、30代の接種が進み始めています。
また、北九州市も20代、30代がようやく予約ができるようになってきています。
ワクチンについては、副反応の問題はもちろん、できたばかりで将来的に何があるかわからないという不安の声も多くありますが、職場での感染を防ぐために、ワクチン接種を推奨する企業、経営者の方が多いのではないでしょうか?
ワクチン接種を巡っては、「ワクチン休暇」を企業で導入するかどうかという問題があり、実際に顧問先企業の皆様からのお問い合わせもあっております。
そこで、今回は「ワクチン休暇」について、企業としてどのように対応すればよいか解説していきます。
「ワクチン休暇」とは
そもそもワクチン休暇とは、法律で定められたものではありません。
予約の関係でどうしても平日の日中の間、ワクチンの接種のために仕事を休まなければならない、接種後に発熱などの副反応が心配で仕事をあらかじめ休みにできると助かる、あるいは実際に副反応が出た場合に休むといったケースを念頭において、ワクチンの接種に関連する休暇を広くさしています。
こうしたワクチン休暇の取扱いに対して、企業が取りうる選択肢としては、以下の3通りが考えられます。
無給休暇とする
ワクチン接種といえども、他の体調不良と同様に、仕事を休む以上、休んだ時間については、実際に仕事をしていないわけですので、ノーワーク・ノーペイの原則にしたがって、無給とし、給与を支給しない休みとして取り扱うというものです。
有給休暇として取扱う
第2の方法としては、各従業員に与えられる有給休暇を使用する方法です。
ご承知のとおり、企業は年間10日以上の有給休暇を保有する従業員にはその半分に当たる5日以上を毎年現実に取得させなければならないとされていますので、例えば、今回のワクチン接種に対して、接種当日と翌日の2日分 × 2回 = 4日間を有給休暇として活用するという選択肢もあり得ます。
もちろん、接種する従業員を一律に計画年休として処理するのではなく、個別の従業員ごとに有給休暇として取り扱っていただくことも可能です。
例えば、副反応が生じた従業員のみ、従業員からの申請で有給休暇を認めるということもできます。
この場合は、他の体調不良で欠勤した場合に事後的に有給休暇の申請を認めるという処理と同様になります。
特別休暇として取扱う
第3の方法としては、今回のワクチン接種にあたって、企業として特別休暇を設定するというものです。
大企業が先行して職域接種を始める前に主に検討されていたのが、この特別休暇としてワクチン休暇を導入するかどうかでした。
特別休暇については、法律上の休暇ではなく、各企業のルールに基づいて用意された制度ですので、他の慶弔規定(結婚や親族が亡くなった場合などに取得が認められる休暇)と同様に無給でも有給でも構いません。
したがって、特別休暇とする場合には、企業として無給とするか、有給とするかを自由に決定することができます。
メリット・デメリット
このように、一口にワクチン休暇といっても、どのように休暇として取り扱うかには違いがあります。
そこで、こうした整理を踏まえて、それぞれのメリット、デメリットを押さえておくことが必要です。
無給休暇の場合
メリット | デメリット |
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有給休暇の場合
メリット | デメリット |
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特別休暇の場合
メリット | デメリット |
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まとめ
企業や経営者の皆様は、自分たちの職場の従業員数や従業員同士の接触頻度、職務内容や顧客や取引先との接触頻度などを考慮して、ワクチン接種に対して、どのような対応を取るか検討しておくことが必要です。
その上で、自社の方針を従業員に伝えていき、職場感染のリスクを下げていかなければなりません。
個別のご相談があればお気軽にご相談ください。
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