仕事中離席時間が多い従業員にどう対応する?弁護士が解説
離席の多い従業員がいた場合、それが単なる怠業による離席なのか否か事実関係を調査する必要があります。
事実関係を調査・確認した上、怠業による離席であることが判明した場合、処分は状況に応じて段階的に行うことが重要です。
まずは口頭での注意を行い、口頭注意で改善が見られない場合には書面による注意を検討しましょう。
書面による注意でも改善が見られない場合には重い処分を下すことも検討します。
以下、詳しく解説します。
離席の多い従業員への考え方
勤務時間中であってもトイレに行く等の理由で離席することは可能であり、その離席率には多少の個人差があると思います。
しかしながら、1時間に10分は離席をする従業員と2時間に5分程しか離席をしない従業員がいた場合、8時間労働では1日に1時間もの勤務時間差ができることになります。
基本的には、勤務時間中のちょっとした離席が給与に反映されることはありませんので、他の従業員より1時間も少ない勤務時間で同じ給料をもらっている従業員がいることは、他の従業員のモチベーションを下げ、ひいては会社に対する不満にも繋がることになります。
そのため、日常的に離席の多い従業員に対しては会社としても何らかの対策を講じる必要があるでしょう。
どこまで離席を許容すべきか
離席の理由としては、トイレだけではなくたばこや化粧直し、私用の電話等様々な理由が考えられます。
本来であれば、休憩時間中に済ますべきことがほとんどですが、離席の理由や時間によっては処分の対象とすべきでない場合があります。
例えば、体調不良の結果で離席を繰り返している場合に当該従業員を懲戒の対象にすることは望ましくありません。
会社は、従業員の安全に配慮する義務を負いますので、健康状態に応じた勤務状況に変更したり、程度が酷い場合は休職制度を適用したりする等の配慮が必要になります。
また、パワハラ・セクハラなどの人間関係のトラブルが原因のような場合は、離席を行う従業員の処分ではなく労働環境の改善を図るべきです。
そのため、離席の多い従業員がいた場合、それが単なる怠業による離席なのか否か事実関係を調査する必要があります。
仕事中に離席の多い従業員への具体的対処法
事実関係を調査・確認した上で、単なる怠業による離席であることが判明した場合、会社としてはどのような対処をすべきでしょうか。
以下に述べるような対処法が考えられますが、処分は状況に応じて段階的に行うことが重要です。
口頭注意
まずは口頭での注意を行います。
この際、業務に与えた影響や指導内容等について指導記録を残しておくことをお勧めいたします。
指導記録は、改善が見られずより重い処分を下さなければならない場合の参考資料の1つとなりますし、指導者とは別に確認者を設けることで社内手続きを適正に行うことが可能です。
⇒弊所HP問題社員対応書式集の「指導記録票(PDF)」をご活用ください。
書面による注意
口頭注意で改善が見られない場合には書面による注意を検討しましょう。
万一、後に裁判等になった場合には証拠として利用することができ、また口頭注意では反省をしなかった従業員でも書面を受け取ることで事態を重く受け止め改善に繋がる可能性があります。
弊所HP問題社員対応書式集の「注意書①(PDF)」をご活用ください。
けん責等の比較的軽めの処分
懲戒処分をする場合、まずは軽い処分であるけん責等の処分をすることが望ましいでしょう。
賃金減額
頻繁に離席を行っていた従業員に対する賃金減額の処分が有効とされた裁判例があります(東京地判H5.3.4)。
しかしながら、現に勤務をしていない時間分の不支給が認められただけであり、概算での賃金不支給が認められたわけではないことに注意が必要です。
そのため、賃金減額処分をする場合、勤務していない時間の正確な把握と証拠が必要となります。
解雇
離席を繰り返すという理由だけですぐに解雇をすることは難しいと考えられます。
しかしながら、長時間の離席と相俟って他の重大な事由が存在するような場合には解雇が認められる可能性もあり、いざという時のために離席を繰り返す従業員の指導記録や処分記録を残しておくことが重要です。