解雇とは?弁護士が具体例でわかりやすく解説
解雇とは、従業員の意思に関係なく、会社の意思で一方的に雇用契約を終わらせることをいいます。
解雇には、①普通解雇、②整理解雇、③懲戒解雇、④諭旨解雇の4種類があります。
このページでは、解雇の種類や、正当な解雇理由とは何か、解雇と退職の違いなどについて弁護士が詳しく解説いたします。
目次
解雇とは
解雇(かいこ)とは、会社が従業員を一方的にやめさせることをいいます。
ポイントは以下の2点です。
- 会社側から行うものであること
- 従業員の意思に関わらず一方的に行うこと
つまり、従業員が「やめたくない」と思っていても、従業員の意思に関係なく、会社の意思で労働契約を終わりにするのが「解雇」です。
一般に「会社をクビになった」という表現がありますが、この場合の「クビ」は「解雇」のことを指すことが多いといえます。
解雇の種類
実は、解雇にはいくつかの種類があります。
以下では、解雇の種類について紹介します。
解雇の種類は、大きくわけて次の4種類です。
- ① 普通解雇
- ② 整理解雇
- ③ 懲戒解雇(ちょうかいかいこ)
- ④ 諭旨解雇(ゆしかいこ)
①普通解雇とは
普通解雇とは、懲戒解雇のような特別な解雇以外の解雇のことをいいます。
普通解雇の例としては、次のものがあげられます。
- 能力不足
- 経歴詐称
- 度重なる遅刻や欠勤
- 協調性の欠如
- 業務命令違反
などです。
なお、これらはその程度が重大な場合、懲戒解雇の対象となる可能性もあります。
②懲戒解雇とは
懲戒解雇とは、会社が懲戒処分として行う解雇のことです。
従業員が社内ルールに違反したり、社会的によくない行為を行ったりした場合、会社は、その従業員に対して、処罰的な措置をとることができます。
この処罰的な措置のことを「懲戒処分」といいます。懲戒処分には、懲戒解雇のほかに、戒告や減給、出勤停止などがあります。
懲戒解雇は、このような懲戒処分の一環として、会社が従業員を解雇するというものです。
懲戒解雇は、懲戒処分の中でいちばん重いものといえます。
③諭旨解雇とは
諭旨解雇も、懲戒解雇と同じく、会社が従業員に対して懲戒処分の一環として行う解雇です。
ただし、諭旨解雇は会社と従業員が話し合って退職を決めた、という形をとります(これに対し、懲戒解雇は会社が問答無用で従業員を解雇するという処分です。)。
したがって、諭旨解雇は、懲戒解雇と比べるとやや温情的な解雇だといえます。
④整理解雇とは
整理解雇とは、会社の経営上の理由で行う解雇のことをいいます。
たとえば、会社が、赤字を出し続けている支店を閉鎖することを決定した場合に、その支店に所属している従業員をやむを得ず解雇するケースなどが整理解雇に該当します。
一般に言われる「リストラ」は、整理解雇のことを指す場合が多いです。
解雇と退職との違い
会社をやめるときによく聞く言葉として、「退職」というものがあります。
この「退職」は「解雇」とどのように違うのかについて解説しましょう。
退職には、「自主退職」と「合意退職」の2つがあります。
このうち、従業員の方から会社をやめることを「自主退職」といいます。
従業員が自らやめるため、「自主退職」といいます。
そして、従業員と会社双方が話し合って、双方が会社をやめることについて明確に合意した場合を「合意退職」といいます。
これらの退職と解雇の違いは、会社だけの意思で従業員を辞めさせているかどうかです。
解雇 | 会社だけの意思で従業員をやめさせるもの |
退職 | 従業員の意思もあって会社をやめるもの |
このように解雇と退職には違いがあるのですが、退職をめぐる実際の場面では、「解雇」と「退職」のどちらかが非常に微妙なケースも多くあります。
以下では、具体的なケースをご紹介していきます。
このケースでは、社長は明確に「解雇」、「クビ」だとは伝えていませんが、従業員に「来なくてよい」と伝え、実際に仕事の割り振りをやめてしまっています。
この判断に従業員の意思は入っていませんので、この社長の対応は「解雇」に当たるといえるでしょう。
会社の社長がある日、従業員を社長室に呼び、「君は仕事ができていない。この仕事が向いていないのではないか。自分でよく考えなさい。」と言われた。
社長の話を受けて、従業員は有給休暇で休み、そのまま会社に行かなくなった。
このケースでは、社長の話がきっかけで、従業員は会社に行かなくなってしまいました。
しかし、ケース1と違って、「自分でよく考えなさい。」とまでしか伝えておらず、退職勧奨にとどまっていると評価できます。
したがって、従業員が自分で会社を退いたと判断できるため、「解雇」とは認められにくいでしょう。
会社の社長がある日、従業員を社長室に呼び、「君は仕事ができていない。この仕事が向いていないのではないか。自分でよく考えなさい。」と言われた。
社長の話を受けて、後日、従業員は会社都合にしてくれるなら退職することに応じると回答し、退職合意書にサインをした。
このケースでは、ケース2と同じく社長の話がきっかけで退職に至っています。
しかしながら、会社から一方的に従業員をクビにしたわけではなく、従業員側からも条件を提示して、合意書を作成しています。
したがって、このケースは、会社だけの意思で従業員をやめさせる「解雇」ではなく、「合意退職」といえるでしょう。
このケースでは、ケース3と異なり、従業員がまず退職届を会社に提出しています。
つまり、従業員側が会社をやめることをまず表明しています。
会社は従業員の要望を飲んであげただけですので、本来的には「解雇」ではなく、「自主退職」でしょう。
なお、会社側が離職理由を会社都合とすることは、従業員にとっては失業保険が早くもらえるなどのメリットがありますが、会社側はキャリアアップ助成金などの助成金を受給していた場合、会社都合で退職をさせてしまうと助成金を受給できなくなるなどのデメリットが生じますので注意が必要です。
解雇は規制がたくさん
「解雇」は会社側の意思で従業員との労働契約を一方的に終了させるものですが、じつは、会社は、いつでも自由に従業員を解雇できるわけではありません。
日本の労働法のもとでは、会社は、ある一定の条件を満たした場合でなければ、従業員を有効に解雇できないことになっています。
必要な条件を満たさずに会社が従業員を解雇すると、その解雇は違法な解雇(いわゆる不当解雇)となります。
以下では、解雇に関する法律について解説していきます。
解雇するには正当な理由が必要?
まず、解雇をするためには、会社が解雇をする理由が必要になります。その根拠が労働契約法という法律に書いてあります。
引用元:労働契約法|e-Gov法令検索
この法律で規定されているように、解雇には「合理的な理由」が必要なのです。
このルールのことを「解雇権濫用の法理(かいこけんらんようのほうり)」といいます。
会社が不当解雇をしてしまった場合には、その解雇が無効になったり、従業員に対して損害賠償を支払う義務が生じるなど、会社にとって大きな不利益になることがあります。
具体的にどのような理由があれば合理的な理由と認められるのかについては、先ほど解説した解雇の種類に応じて異なってきます。
解雇が有効か、無効かを争うのは最終的には裁判所です。
したがって、裁判所が、会社の主張する解雇の理由はもっともだと判断できるだけの事情が必要で、社会一般にそのようにいえるかという視点は重要です。
また、法的な判断が必要になりますので、労務問題を専門とする弁護士に相談すべきでしょう。
解雇通知書は必要なの?
ドラマなどでは、社長が従業員を呼び出して、「明日から来なくていいよ」と言ってクビを宣告するようなシーンもありますが、解雇は口頭で従業員に伝えることでも有効なのでしょうか?
実は、解雇は口頭でも有効になり得ます。
「解雇は書面でしなければならない。」と明確に定めた法律はありません。
ただし、解雇は従業員の地位を終了させるもので、会社側、従業員側ともに非常に重要なものです。
こうした重要なものを口頭で済ませてしまうことは、言った、言わないという問題になりかねないのはもちろん、先ほど説明した解雇の理由を適切に従業員側に伝える方法としても不十分といえるでしょう。
したがって、解雇を会社が従業員に告げる場合には、解雇通知書を事前に用意して望むべきでしょう。
また、以下のリンクから解雇通知書のサンプルもダウンロードすることができますので、参考にされてください。
実際に作成する場合には、気をつけるべきポイントや押さえておきたいポイントもあります。
作成する会社側としては、しっかりと時間をかけて検討する必要があります。
専門家である弁護士に相談してアドバイスをもらうなどしましょう。
解雇予告が必要
解雇は従業員の地位を会社側が一方的に終了させる行為です。
そのため、解雇される従業員にとっては生活の糧となる収入源を失ってしまう非常に影響のあるものになってしまいます。
そこで、解雇については、従業員にあらかじめ予告するように法律で定められています。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。
三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
この規定からわかるように、解雇は少なくとも30日前に通知しなければならないことになっています。
したがって、例えば、会社が4月30日で解雇しようと思った場合、3月31日までに従業員に解雇の通知をしなければなりません。
こうした手続面のルールを守っていない解雇は、たとえ会社側に従業員を解雇する理由があったとしても無効となってしまいます。
くれぐれも手続面のルールを疎かにしないように注意しなければなりません。
従業員の側としても会社からの解雇がきちんと手続を守っているものかどうかについてしっかりと確認しましょう。
解雇予告通知書については、以下のページから書式を確認することが可能です。ぜひご活用ください。
解雇予告手当とは
先ほど紹介した労働基準法20条をもう一度見てみましょう。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。
三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
この法律の2文目には、「30日前に予告をしない」と書いてあります。
つまり、例外的に30日前の予告をしなくてもよい場合があるのです。
その条件が、解雇予告手当と呼ばれる手当を支払うことです。
したがって、会社が従業員を手続面で問題なく解雇する方法としては、以下の2つの方法があることになります。
- 30日前に解雇を従業員に通知する
- 30日分の解雇予告手当を支払って即日解雇する
また、解雇の予告と解雇予告手当を組み合わせて
- 15日前に解雇を従業員に通知し、15日分の解雇予告手当を支払う
という方法も取ることができます。
解雇予告手当は、労働基準法で「平均賃金」をもとに計算するものとされています。
計算方法について詳しくは、以下のページをご覧ください。
解雇理由証明書とは?
解雇理由証明書とは、会社が従業員に対して交付する解雇の理由を記載した書面です。
解雇通知書と解雇理由証明書との違いは?
解雇通知書は、会社が従業員を解雇する旨の意思を表す書面であり、解雇の際に交付するものです。
これに対し、解雇理由証明書は、従業員から会社に対して要求があった場合に交付すればよい書類です。
そのため、従業員が解雇理由証明書の交付を希望しない場合には、会社は作成する必要はないものです。
解雇理由証明書の法的根拠
この解雇理由証明書の法的根拠は労働基準法22条1項にあります。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
このように、従業員が会社に対して請求をした場合、会社側は
- ① 使用期間・・・入社から解雇までの期間
- ② 業務の種類・・・業務内容
- ③ その事業における地位・・・正社員、アルバイト
- ④ 賃金
- ⑤ 退職の事由・・・解雇の理由
のうち、従業員が証明を求めた事項を記載した書面を作成しなければなりません。
解雇理由証明書にどのようなことを書くか?
解雇の有効・無効が争われるケースでは、ほとんどのケースで従業員側からこの規定に基づいて解雇理由証明書の交付が請求されます。
したがって、会社は速やかに作成の上、従業員側に交付しなければなりませんが、この理由書にどこまで理由を記載するかについては、きちんと検討しなければなりません。
まず、解雇の理由については、具体的に示す必要があるとされています。
行政解釈では、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合、当該就業規則の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならないとされています(平成11年1月29日基発第45号、平成15年12月26日基発第1226002号)。
つまり、解雇通知書のように、単に「就業規則◯条に該当するため、貴殿を解雇します。」という記載では足りず、「・・・・といった事実があり、その事実は就業規則◯条に該当するため、このことが理由で解雇に至りました。」といった内容まで記載しなければならないのです。
次に、解雇の有効・無効が争われた際に、この解雇理由書に記載していない事実を後から別途主張することは難しいとされています。
なぜなら、従業員が解雇の理由を求めた際に伝えていない内容を理由とすることは理由の後付けになってしまうからです。
したがって、解雇理由について、複数の事実がある場合には、その事実を網羅的に記載しておかなければなりません。
解雇理由書の作成は専門家に相談
このように、解雇理由証明書は、非常に重要な書面になります。
速やかに交付しなければならないとされているものの、会社があまり深く考えず、短時間で作成して従業員に交付してしまうと後々に不利になる可能性もあります。
したがって、解雇理由書を作成する場合には、解雇する前の段階で相談することとあわせて、専門家である弁護士に相談して、作成のサポートを受けるべきでしょう。
なお、解雇理由証明書のサンプルについては、以下のページからダウンロード可能です。
そもそも解雇ができない場合がある
ここまで解説したきたルールに加えて、個別の法律で解雇が制限されている場合があります。
主なものを以下でご紹介します。
この期間や理由では解雇することがそもそもできないことになっています。
1 労災による休業の場合(労働基準法19条)
従業員が業務上負傷し又は疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇することができません。
2 産前産後休業の場合(労働基準法19条)
労災による休業の場合と同じく、産前産後の女性が労働基準法65条の規定によって休業する期間とその後30日間は、解雇することができません。
なお、産前が6週間(多子の場合は14週間)前、産後は8週間です。
3 結婚・妊娠・出産を理由とした解雇(男女雇用機会均等法)
男女雇用機会均等法という法律では、結婚・妊娠・出産を理由として女性を解雇することはできないと定められています。
2項
事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3項
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4項
妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
育児介護休業法では、育児や介護休業を取得したことを理由とする不利益な取り扱いが禁止されています。
この不利益な取り扱いの典型が解雇です。
外国人であるから、◯◯の考えを持っている、信仰しているから、◯◯の地域出身であるからといった理由で解雇することはできないと法律で定められています。
日本国憲法で従業員は労働組合を結成したり、すでにある労働組合に加入したりすることができます。
そのため、従業員が特定の労働組合に加入したり、組合員であることを理由として会社が解雇をすることはできないことになっています。
ユニオン・合同労組といった外部の労働組合に加入したりするケースでは、組合側がこのルールを根拠に不当解雇だと争ってくるケースが多いです。
会社としても慎重に解雇を検討しなければなりません。
このように、解雇にはとても多くの規制がかかっており、会社側は十分に注意して行わなければなりません。
会社が従業員を解雇したい場合は、解雇に必要な条件がそろっているかどうかを事前にしっかりと確認することが必要です。
解雇の手続きの流れ
普通解雇の場合、基本的には次の流れで実施します。
以下、くわしく解説します。
①事実関係を調査する
従業員を解雇する場合、まずは、その理由となる問題行為等について、十分に調査し、証拠の収集を行う必要があります。
調査や証拠の収集が十分でないと、後に従業員が、解雇が不当であるとして、その有効性を争った場合に、解雇が無効であると判断される可能性があります。
特に、解雇に先立って、解雇しようとする従業員の言い分を聞くことが重要です。
この言い分を聞くことを、「弁明の機会」といいます。
弁明の機会を与えていない場合、解雇が無効と判断される可能性がありますので、注意が必要です。
②就業規則を確認し、解雇事由に該当するかを検討する
解雇は、就業規則に解雇を行うことができるとの記載がなければ、基本的に行うことができません。
したがって、まず、問題行為等が就業規則に記載されている「解雇を行うことができる事由」に該当するかどうかを検討することになります。
聞き取り調査や収集した証拠をもとに検討し、問題となっている従業員の行為が就業規則記載の「解雇を行うことができる事由」に該当すると判断した場合は、次の手続に進むことになります。
③解雇予告の通知又は解雇予告手当を支払う
上で解説したとおり、解雇をする場合、少なくとも30日前に通知しなければなりません。
又は、解雇予告手当を支払う必要があります。
なお、解雇通知書については、従業員に通知する際に、コピーを取っておくと良いでしょう。
当該従業員に直接、解雇通知書を交付できない場合、従業員の自宅に内容証明郵便等で送付し、本人に交付したことが証拠として残るようにしておくことをおすすめいたします。
④各種手続きを行う
解雇後には、従業員が失業保険を受給できるようにするための離職票の発行など、各種の手続きを行うことになります。
必要となる手続きには、以下のようなものがあります。
- ① 離職票の発行申請など、失業保険を受給できるようにするための手続き
- ② 社会保険からの脱退に関する手続き
- ③ 源泉徴収票の交付
- ④ 住民税の特別徴収を止める手続き
- ⑤ 従業員から請求があった場合には、解雇理由証明書の交付
普通解雇以外の解雇の手続の流れについては、下記をご参照ください。
解雇についてのよくあるQ&A
解雇が無効になったらどうなる?
仮に解雇の有効・無効が問題になって、解雇が無効と判断されるとどのようなリスクが会社にあるのでしょうか?
解雇が無効なので、従業員が引き続き在籍していることになる
解雇が無効と判断された場合、会社側が行った解雇はなかったことになりますので、解雇した従業員は依然として会社に在籍していることになります。
したがって、会社は従業員をもとの職場に戻すことを検討しなければなりません。仮に元に戻さない場合でも、会社が無効な解雇を理由として戻していないことになるため、その賃金は支払いをしなければならなくなります。
解雇が無効になるまでの間の給与の支払いをしなければならない
また、解雇が無効になると無効が確定するまでにかかった間の給与についても会社が従業員に対して支払いをしなければなりません。
例えば、月給25万円の従業員が解雇されて、裁判で1年後に無効と判断されると、原則として25万円 × 12か月 = 300万円を会社が支払わなければなりません。
会社としては、「働いていないのに給与を払うなんて」と思うかもしれませんが、従業員が働いていないのは、会社が無効な解雇をしたからということになりますので、仕事をしていなくても給料の支払をしなければならないのです。
不当解雇として慰謝料などの損害賠償をしなければならない
さらに、会社の解雇があまりに行き過ぎているといったケースでは、給与とは別に不当解雇を原因とする慰謝料を支払わなければならなくなります。
このように、解雇が無効になることによる会社のリスクは非常に大きなもので、中小企業でも1000万円を超える支払いをしなければならないこともしばしば起こります。
解雇されたら退職金はどうなるの?
従業員の退職金については、退職金規定に基づいて支給されるのが通常です。
したがって、会社は解雇の場合に退職金がどのようになるのかをあらかじめ定めておくことが必要です。
多くのケースでは、懲戒解雇については、従業員側に問題行動があったわけですので、退職金を一切支給しない、あるいは支給額が減るように定めています。
他方で、普通解雇の場合には、解雇されても退職金そのものは支給されることがほとんどです。
仮に、普通解雇でも退職金は一切支給しないと規定を定めていても、行き過ぎた基底として裁判所が無効と判断する可能性が高いでしょう。
ですので、解雇 = 退職金なしというわけではありません。
まずは、会社の退職金規定がどのようになっているのか確認をするようにしましょう。
まとめ
ここまで、
- そもそも解雇とは何か
- 解雇の法的な根拠
- 解雇の種類
- 解雇に関するルール
- 解雇に関して作成される書類
- 解雇が無効になった場合どうなるか
- 解雇と退職金
などについて解説をしてきました。それぞれのさらに細かい解説については、ご紹介した個別の解説ページをぜひご覧ください。
解雇は会社側、従業員側双方にとって、非常に大きい影響のあるものです。
したがって、「解雇をしようか迷っている従業員がいる」「解雇をしたが従業員とトラブルになりそう」「解雇をした従業員から解雇理由書を求められた」
といったお悩みをもたれている会社の方は、早めに専門家である弁護士に相談をすべきでしょう。
当法律事務所の企業法務部には、解雇も含めて労働問題に精通した弁護士で構成される労働事件チームがあり、労働問題でお困りの企業の皆様を強力にサポートしています。
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