残業代が出ない、どうすればいい?弁護士が解説

監修者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

残業代が出なくて不満である、あるいは違法ではないかとの疑問がある方もいらっしゃることと思います。

もし残業代が出ないことでお困りの場合、次の3つの対応法をご検討ください。

  • 違法かどうかを確認
  • 証拠資料を集める
  • 労働問題に詳しい弁護士へ相談

残業代が出ないといってもさまざまなケースがあり、中には不支給でも問題がない場合もあります。

そこでこの記事では、残業代が出ないケースや、なぜ上記3つの対応法が重要なのかを、弁護士が解説します。

残業をすれば残業代をもらうことができるのが原則

残業をすれば、残業代が支給されるのが原則です。

労働基準法は、賃金は「全額を支払わなければならない。」と定めており、「賃金全額払いの原則」と呼ばれます。

根拠条文
(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(略)
②(略)

引用元:労働基準法|電子政府の総合窓口

給料が全額支払われるのは当然のことのように思えるかもしれませんが、会社が色々な理由をつけて給料を払い渋ることのないよう、あえて法律で全額支払わなければならないことを明確にしているのです。

これに違反して賃金を一部しか支払わなかった場合、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」という罰則が科される可能性があります(労働基準法119条1号)。

残業代も賃金の一種ですから、残業代を支給しないのは、賃金全額払いの原則に反する可能性があります。

たしかに、次にご説明するとおり、法律上残業代を支給しなくてもよい場合がいくつかあるのですが、残業代はあくまで全額支給が原則です。

「出る場合も出ない場合もある」のではなく、「基本的には全額出るが、労働基準法で認められたいくつかの場合に限り、例外的に不支給が許される」とお考えいただければと思います。

 

残業代の計算方法

残業代は次の式により計算します。

1時間あたりの賃金額 ✕ 残業時間数 ✕ 残業の種類に応じた割増率

割増率について

従業員の健康維持のために、長時間の労働、深夜の労働、休日の労働については、できるだけこれを抑制しようという考え方があります。

このような考えのもと、法律では、長時間労働等については、通常の賃金に一定の割増率を乗じた金額を加算して支払わなければならないと定められています。

下表はこの割増率を整理したものです。

残業の種類 残業の内容 割増率
法定外労働 法定労働時間を超える場合 1.25倍
深夜労働 午後10時から午前5時までの間に働く場合 1.25倍
法定休日労働 法定休日に働く場合 1.35倍
法定外残業+深夜労働 法定労働時間を超え、かつ、深夜労働 1.5倍
法定休日労働+深夜労働 法定休日に働く場合で、かつ、深夜労働 1.6倍
60時間超え 1ヶ月の法定外労働の合計が60時間を超えた場合 60時間を超えた部分は1.5倍
60時間超え+深夜労働 1ヶ月の法定外労働の合計が60時間を超えた場合で、かつ、深夜労働 60時間を超えた部分は1.75倍

根拠:労働基準法37条|e-Gov法令検索

 

残業代計算ツール

残業代の計算方法は複雑であるため、専門家でなければ正確な金額の算出が難しいという問題があります。

当事務所は残業代計算シミュレーターをウェブサイトに掲載しており、誰でも無料で利用できます。

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残業代が出ない場合の3つの対応法

労働基準法では、残業代は全額支給されるのが原則です。

もし残業をしているのに残業代が支給されていない場合、違法な「サービス残業」となっている可能性があります。

そのようなときは、以下の3つの手順で対応してみてください。

残業代が出ない場合の3つの手順

Step1. 違法かどうかを確認

残業代が出ない場合においては、まず、残業代の不支給が違法かどうかを確認する必要があります。

といいますのも、残業代は全額支給されるのが原則ではあるのですが、後に詳しく説明するとおり、例外的に残業代を支給しなくても適法となる場合がいくつかあるのです。

そのような例外に当たるケースですと、残業は不支給で問題ないということになりますので、まずその点の確認が必要になるというわけです。

 

Step2. 証拠資料を集める

以上のような例外に該当せず残業代の不支給が違法ということであれば、未払いの残業代を請求することができますが、その際には請求金額を根拠付けるための資料が必要となります。

証拠は未払いの残業代がいくらであるかを裏付ける客観的な資料であり、法律上決まった種類のものに限定されるわけではありませんが、たとえば次のようなものがあります。

就業規則、雇用契約書(又は労働条件通知書)

就業規則や雇用契約書等の労働条件が明示された資料が、残業代の不支給が違法であることを証明する上で重要となります。

実は裁量労働制の対象であったとか、固定残業代が支給されていたといったような事情があると、残業代を支給しなくても適法である可能性があります。

そこで、そのような定めが適用されていないかを確認するために、就業規則や雇用契約書等によって、残業代の支給についてのルールを確認する必要があるのです。

タイムカードなど、残業時間がわかる資料

残業代の不支給が違法といえるケースであっても、残業時間がわからないと、具体的に請求できる残業代の金額が確定できません。

そこで、なんらかの資料によって残業時間を明らかにする必要があります。

資料は残業時間が客観的に確定できるものが望ましく、典型的にはタイムカードなどが考えられます。

ただし、そのようなものがなければ、日々の退勤時刻を記録したメモや手控えのようなものでもかまいません。

「メモなんていくらでも偽装できるから証拠にならないのでは?」と思われるかもしれませんが、そうとうも限りません。

裁判では、他の証拠や証言などと照らし合わせながら、「信用できそうか」が判断されることになります。

たとえば、日々の残業時間だけでなく、なんの作業にどのくらいの時間を要したのかといったことを具体的に記録しておくことで、時刻についての信頼性もぐっと高まってきます。

徹底した例では、毎日帰り際に会社の時計を撮影して証拠を残した、なんていうケースもあるようです。

そこまでするかはともかく、たとえば鉄道会社によっては定期券の乗車履歴を発行してくれるところもあるようですので、そのようなプラスアルファとなるなにかを残しておくことで、残業時間を証明しやすくなることを知っておくとよいでしょう。

 

Step3. 労働問題に詳しい弁護士へ相談

対応の3つめは、労働問題に詳しい弁護士へ相談することです。

残業代の不支給が違法であり、証拠もあるとなると、弁護士による交渉や、裁判などの法的な手続きを通して、残業代を請求していくことが考えられます。

また、残業代の不支給が違法なのか判断がつかない、なにが残業時間の証拠になるのかよくわからないということであれば、先に弁護士にご相談いただいてもかまいません。

労働問題に詳しい弁護士であれば、残業代の支給状況をお伺いして違法性の見当をつけることができます。

残業時間についても、証拠になりそうなものを考えて助言することができますし、状況によっては、伺ったお話を「陳述書」という書面の形にまとめることで証明できる可能性もあります。

色々とお手伝いできることがあると思われますので、一人で悩まずに、弁護士を頼ってみることも検討していただければと思います。

 

 

残業代が出ないケース

全額支給が原則の残業代ですが、例外として認められている場合に限っては、残業代を不支給とすることができます。

残業代が出なくても違法でないケースとしては、以下のようなものがあります。

支給しなくてもよいケースが多くあるように見えるかもしれませんが、個別に見ますと、認められるための要件が非常に厳しくなっているものが多いといえます。

あくまで残業代は全額支給されるのが原則で、以下は例外に過ぎないということでお読みいただければと思います。

 

裁量労働制

裁量労働制は、労働時間の管理を含めた業務の遂行を従業員の大幅な裁量に委ねる制度です。

みなし労働時間制の一種であるため、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ取り決めた労働時間分の給与が支給されることになります。

裁量労働制は、対象となる業務の種類に応じて、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種に分けられます。

 

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、業務の専門性が高く、業務のやり方や時間配分を従業員に委ねる必要がある場合に認められます。

引用元:労働基準法|電子政府の総合窓口

専門業務型裁量労働制を採用できる業務は厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められており、次の19種類の業務に限られます。

  1. ① 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
  2. ② 情報処理システムの分析又は設計の業務
  3. ③ 新聞、出版の事業における記事の取材・編集の業務。テレビ・ラジオ番組の制作のための取材・編集の業務。
  4. ④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. ⑤ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  6. ⑥ 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
  7. ⑦ 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
  8. ⑧ 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
  9. ⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. ⑩ 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
  11. ⑪ 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. ⑫ 大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
  13. ⑬ 公認会計士の業務
  14. ⑭ 弁護士の業務
  15. ⑮ 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
  16. ⑯ 不動産鑑定士の業務
  17. ⑰ 弁理士の業務
  18. ⑱ 税理士の業務
  19. ⑲ 中小企業診断士の業務

参考:労働基準法施行規則24条の2の2第2項|電子政府の総合窓口

参考:労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務(平成9年2月14日労働省告示第7号)|厚生労働省

対象業務を見ればお分かりいただけるとおり、いずれもきわめて高度な専門性が要求される業務です。

注意していただきたいのは、「これらの業務に当たる従業員には残業代を支給しなくてよい」という意味では全くないということです。

上記条文の「三」に、「対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。」とあるように、時間管理を含めて従業員の裁量に委ねることが必要となります。

会社の側で出退勤の時間を指定するなど時間的な拘束を加えているようであれば、いかに業務の専門性が高くとも、裁量労働とはいえません。

また、裁量労働制は、これを採用することについて労使協定を締結してはじめて有効になります。

 

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務に従事し、業務の性質上その遂行の方法や時間配分の決定を大幅に従業員の裁量に委ねる必要がある場合に認められます。

引用元:労働基準法|電子政府の総合窓口

企画業務型裁量労働制の対象業務は、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」です。

専門業務型のように細かく業種が指定されているわけではありませんが、時間管理が従業員の判断に委ねられる点は共通です。

また、業務の限定が緩やかな関係上、「なんでもあり」にならないよう、企画業務型裁量労働制を導入するには、労使委員会を立ち上げて対象業務やその他の運用方法を詳細に決定するほか、対象となる従業員から個別の同意を得るなど、厳格な手続きが必要となっています。

「同意をしていないのに企画業務型裁量労働制が適用されていた」という場合、違法の可能性がありますので、一度弁護士にご相談いただければと思います。

 

事業場外みなし労働時間制

事業場外労働のみなし労働時間制とは、従業員が事業場外で労働し、会社の指揮監督が及ばないために、労働時間の算定が困難である場合に、特定の時間を労働したものとみなすことができる制度をいいます。

引用元:労働基準法|電子政府の総合窓口

「事業場外」とは会社の事務所の外のことですので、出張や外回りの営業マンなどで労働時間を算定するのが難しい場合に、みなし労働時間制とすることが認められるのです。

「労働時間を算定し難い」ことが要件ですので、たとえ日中は外勤が主であっても、1日の最後には帰社することが求められているような場合には、労働時間の算定が困難とはいえず、みなし労働時間とすることは認められません。

また、行政解釈(昭63・1・1基発第1号)により、「使用者の具体的な指揮監督」が及んでいないことが求められており、職務の遂行について具体的な指示がある場合や、携帯電話などで随時会社から指示を出しているような場合も、やはりみなし労働時間とは認められません。

事業場外のみなし労働時間制の有効性が問題となった裁判例もありますが、その多くは、なんらかの形で会社からの指揮監督があった(したがって労働時間の算定が困難とはいえない)と認定して、みなし労働時間を認めていません。

みなし労働時間制とできるのは、「事業場外だから」ではなく、事業場外であるがために「労働時間の算定が困難だから」という点に気を付けるとともに、有効性も厳しく判断されることに注意してください。

ワンポイント:テレワークに事業場外みなし労働時間制は適用できる?

近年は働き方が多様化しており、テレワークやリモートワークの形態で働いている方もいらっしゃることと思います。

在宅勤務の場合、勤務場所は自宅等であって「事業場外」ですので、事業場外みなし労働時間制の対象となる可能性があります。

厚生労働省によると、在宅勤務に事業場外みなし労働時間制を適用するためには、次の要件を満たす必要があります。

  1. ① その業務が、起居寝食など私生活を営む自宅で行われること
  2. ② その業務に用いる情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
  3. ③ その業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

テレワークであっても、「会社の指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難」という本質は同じです。

常時オンラインでいることを求められるなど、会社の管理が及んでおり労働時間の算定が可能な場合には、単に在宅勤務というだけでみなし労働時間制は適用できません。

 

固定残業代制

固定残業代制とは、あらかじめ決めた時間分の残業代を実際の残業時間にかかわらず支給する制度であり、みなし残業代制とも呼ばれます。

たとえば、月給を「25万円(20時間分の固定残業代5万円を含む)」と決めたとします。

この場合、残業が20時間までであれば、支給される給料は変わらず25万円となります。

従業員の立場からすると、残業時間が0時間でも20時間でも支給金額が変わらないため、残業代が出ていないように感じられるかもしれません。

しかし、20時間分の残業代として5万円が固定的に支給されているため、残業が20時間までであれば、別途残業代を支給する必要はないのです。

なお、固定残業代は、それが残業の何時間分に相当するのか明示されるのが通常です。

この時間(上記例でいえば20時間)を超えて残業した場合には、固定残業代だけではカバーできていませんので、超過時間分の残業代を請求することができます。

固定残業代についてのさらに詳しい解説は、こちらをご覧ください。

 

 

管理監督者・機密事務取扱者

労働基準法に定められる管理監督者や機密事務取扱者にあたる場合、残業代の支払いは不要です。

引用元:労働基準法|電子政府の総合窓口

「監督若しくは管理の地位にある者」及び「機密の事務を取り扱う者」には労働時間についての規定は適用しないとされ、両者はそれぞれ、「管理監督者」「機密事項取扱者」と呼ばれます。

 

管理監督者

「管理監督者」とは、行政解釈では、「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。」とされています(厚生労働省労働基準局昭和63年3月14日第150号通達)。

管理監督者に当たるか判断する際のポイントは、次のとおりです。

  • 経営者と一体的な立場にあるといえるか
  • 表面的な名称(肩書き)ではなく、勤務の実態によって判断される
  • 管理職=管理監督者ではない

管理監督者は、会社に雇われた従業員ではあるものの、労働条件の決定に関与するなどして、経営者と一体的な立場にあることを要します。

そして経営者と一体的な立場にあるかは、従業員の役職や肩書きではなく、職務の実態をみて判断されます。

管理監督者は法律上の概念ですので、これに該当するかは法解釈の問題であり、管理職であるかは関係がありません。

これらを混同して「管理職には残業代を支給しなくてよい」と誤解することのないよう十分気をつけてください。

管理監督者についてのさらに詳しい解説は、こちらをご覧ください。

 

機密事務取扱者

「機密事務取扱者」とは、「秘書その他職務が経営者又は監督もしくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であって、出社退社等についての厳格な制限を受けない者」をいいます(昭和22.9.13は発基17号)。

機密事務取扱者は、「秘書」が挙げられているとおり、経営者や管理監督者と一体的に職務を遂行する者のことをいいます。

経営者自身が時間の制約を受けない働き方をすることから、これと一体的に活動する秘書等についても、厳格な時間管理はなじまないだろうということです。

機密事務取扱者はこのような趣旨により残業代の支給対象外とされているため、これに該当するかの判断も、職務の実態がこの趣旨に当てはまるかという観点からなされます。

字面をそのまま分解して、「機密の事務を取り扱う者には、残業代の支給は不要」などとは考えないようにしてください。

会社で取り扱っている情報には多かれ少なかれ機密事項としての側面がありますので、すべての従業員が「機密の事務を取り扱っている」といった誤解にもつながりかねないためです。

また、秘書が例として挙げられていますが、機密事務取扱者に当たるためには、上記のとおり、出退勤の自由度において経営者に準ずる程度の立場にあることを要します。

そのような自由のない一般の従業員が、秘書の業務を行っているというだけで機密事務取扱者になるということでもありません。

機密事務取扱者に当たれば残業代の支給が不要となるという強い効果が生じるため、管理監督者と同様、経営者と同視し得るような例外的な場合にのみ該当するとお考えください。

 

1ヶ月あたり30分未満の残業時間

1ヶ月の残業時間を合計したときに30分未満の端数時間があるときは、その端数については、残業代を支給しないことが適法となることがあります。

残業代は本来全額支給すべきものであり、たとえ1分であっても、残業時間の切り捨ては許されないのが原則です。

しかし厚生労働省の通達(昭63・3・14基発第150号)により、次の2つの条件を満たす場合には、30分未満の残業時間を切り捨てることができるとされています。

1つめは、端数を考える際は、1ヶ月の合計残業時間に対して考えるという点です。

これは、1日単位での切り捨てを認めてしまうと、日々切り捨てが発生した場合に、従業員の不利益が大きくなりすぎるためです。

2つめは、端数が30分以上1時間未満になった場合には、これを1時間に切り上げなければならないという点です。

このようなルールの下であれば、たまに切り捨てが発生する月があるとしても、トータルで見れば損も得もほとんどないということで、端数の切り捨てが認められるのです。

 

監視断続的労働従事者

監視断続的労働と呼ばれる業務に従事する従業員についても、労働基準法の労働時間に関する規定の適用はないため、残業代の支払いは不要です。

引用元:労働基準法|電子政府の総合窓口

監視断続的労働は、監視労働と断続的労働に分けて考えることができます。

監視労働とは、「原則として、一定部署にあって監視することを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ない業務」をいいます。

典型的には守衛のような業務が該当すると考えられていますが、計器類の誤作動がないかをモニタリングするような業務については、監視ではあるものの、精神的緊張度が高いことから認められません。

断続的労働とは、通常は業務閑散であり、手待ち時間が実作業時間を上回るものをいいます。

手待ち時間とは待機時間のことであり、具体的になにか業務をしているわけではないものの、その必要が生じた際には直ちに対応できるようにスタンバイしている状態の時間をいいます。

手待ち時間は、自由に過ごせる休憩時間とは異なり、あくまで会社の命によって待機している状態ですので、原則として労働時間にあたります。

とはいえ、これがあまりにも長く、実作業時間を上回るものについては、労働基準監督署の許可を受けることにより、労働時間の適用を除外することができるのです。

 

 

残業代が出ないケースのよくあるQ&A

アルバイトは残業代が出ないのが当たり前?

アルバイトであっても、残業代は全額支給されるのが原則です。

残業代が出るか否かに、アルバイトか正社員かは関係ありませんので、もしアルバイトであることを理由に残業代が出ていないようであれば、違法の可能性があります。

残業代が出ない会社は辞めた方がいい?

残業代だけでなく、さまざまな勤務条件を踏まえて総合的に検討すべきと言えます。

たしかに、残業代が出ないのは原則として違法ですので、悪質なケースであれば退職を考えた方がいいのも事実です。

しかし働きやすさを総合的に見ると、金銭面だけでなく、仕事の内容や職場の人間関係、通勤のしやすさなど、さまざまな要素が関係してきます。

また、地域やその時の経済状況によっては、よりよい待遇の転職先が見つかるかという問題もあります。

未払いの残業代については、退職せずとも適切に請求することで解決する可能性もありますので、まずは弁護士などの専門家に相談してから判断されることをおすすめします。

 

 

まとめ

この記事では、残業代が出ないケースについて、どのような場合があるかを解説しました。

記事の要点は、次のとおりです。

  • 残業代が出ない場合には、「違法性を確認」「証拠の収集」「労働問題に詳しい弁護士に相談」という3つの対応法がある。
  • 残業代は全額支給されるのが原則であるが、みなし労働時間制や管理監督者など、例外的に支給されない場合もある。
  • 上記の例外は要件が厳しいものも多く、簡単には認められない傾向にある。
  • 残業代の不支給に疑問がある場合は、労働者側の弁護士に相談することが有効である。

当事務所では、労働問題を専門に扱うチームがあり、労働問題に注力しています。

Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。

残業代の問題については、当事務所の労働事件チームまで、お気軽にご相談ください。

この記事が、残業代についてお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 




  

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