出社(出勤)拒否の従業員にどう対応すればいい?弁護士が解説

監修者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

出社拒否とは、従業員が何らかの理由で会社への出社を拒否することです。

出社拒否といっても、その理由は様々で、従業員には個々の事情があります。

そのため、個々の従業員の出社拒否の理由を確認して、懲戒処分が可能なケースか、懲戒処分がふさわしくないケースか、を考える必要があります

仮に懲戒処分が検討できる状況であっても、会社が懲戒処分をするためには適切な手順・手続を踏む必要がありますので注意が必要です。

出社(出勤)拒否とは?

出社拒否とは、従業員が何らかの理由で会社への出社を拒否することです。

出勤拒否も同じ意味ですので、以下では出社拒否と記載します。

出社拒否の背景としては、従業員側に問題があるケースと、会社側に問題があるケースが考えられます。

例えば、従業員側に問題があるケースとしては、当該従業員が無責任、不誠実などの場合が考えられます。

また、後述する出社拒否症という病気の場合も考えられます。

他方で、会社側に問題があるケースとしては、職場環境が劣悪である、ハラスメントなどが問題がある、などのケースが想定されます。

 

 

出社拒否は懲戒処分の対象になる?

出社拒否をする従業員に対して、会社は懲戒処分をすることができるでしょうか。

懲戒処分をするためには、その会社の就業規則に、対応する懲戒事由(懲戒処分ができる場合)が明記されていることが必要です。

会社の指示に反して出社を拒否することは、基本的に「業務命令違反」に当たります。

そして、多くの会社では、業務命令違反を懲戒事由(懲戒処分ができる場合)の一つとして就業規則で定めています。

したがって、出社拒否に対しては懲戒処分をすることが可能であるように思われます。

しかし、懲戒処分をするには、「客観的に合理的な理由」があることと、「社会通念上相当」であることが必要とされています(労働契約法第15条)。

そのため、個々の従業員の出社拒否の理由を確認して、懲戒処分が可能なケースか、懲戒処分がふさわしくないケースか、を考える必要があります。

労働契約法第15条
(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

引用元:労働契約法|e-Gov法令検索

懲戒処分の種類

そもそも、懲戒処分と一言で言っても、従業員を解雇する「懲戒解雇」などの重たい処分から、単に注意を言い渡す「戒告」などの軽い処分まで様々です。

会社が懲戒処分を検討する場合には、就業規則に定めている複数の懲戒処分のうち、どの処分が適切なのか、も合わせて考える必要があります。

懲戒処分の種類については、以下のページで詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

あわせて読みたい
懲戒処分の種類

 

 

懲戒処分できないケース

出社拒否であるにもかかわらず、会社が懲戒処分できないケースとは例えばどのような場合でしょうか。

 

①体調不良などの健康状態悪化を理由とする出社拒否の場合

出社拒否の理由が従業員の体調不良など健康状態悪化を理由とする場合には、懲戒処分をするのは難しいです。

会社は、一般的に、従業員の安全へ配慮する義務(安全配慮義務)を負っています(労働契約法第5条)。

体調不良の従業員を強制的に出社させるような業務命令は、そもそも安全配慮義務に照らして不合理な業務命令となるため、これに違反するとしても懲戒処分の根拠として合理性を欠くことになります。

特に、その従業員に長時間労働を指示していたために体調が悪化した場合など、体調悪化そのものが会社の責任であることも考えられますので、慎重な対応が必要になるでしょう。

労働契約法第5条
(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用元:労働契約法|e-Gov法令検索

 

②職場環境に問題がある等、会社側に原因のある出社拒否の場合

上司によるパワハラが続いており、職場環境に問題があるなど、会社側に責任のある事情で従業員が出社拒否に至った場合には、懲戒処分をすることは難しいです。

この場合も、そもそもの責任が会社側にあるわけですから、出社拒否があるとしても安易に懲戒処分をすることは合理的ではありません。

懲戒処分は避けて、職場環境の改善など出社拒否の原因を取り除く方向で対応をする必要があります。

 

③感染症罹患を不安視することが理由の出社拒否の場合

特に近年判断が難しいのが、新型コロナウイルスなどに感染することを恐れて従業員が出社拒否するケースです。

特に、社内でクラスター(集団感染)が発生している状況であったり、政府から緊急事態宣言が出されている状況では、従業員が出社を恐れるのもやむを得ないと言えます。

このような場合、処分としての合理性や相当性を欠く可能性があるため、懲戒処分をすることは避けるべきでしょう。

なお、緊急事態宣言が出ておらず、また、社内でのクラスターも発生しておらず、特に危険な状況ではない場合には、従業員の出社拒否に十分な理由がないと考えられ、懲戒処分が検討可能と言えます。

 

 

懲戒処分できるケース

以上、懲戒処分ができないケースを見てきましたが、反対に、懲戒処分ができるのはどのような場合でしょうか。

具体的に見ていきましょう。

 

①出社拒否について特段の理由がない場合

出社拒否について特に理由がない場合、それは単なる業務命令違反ですので、懲戒処分を検討できる状況です。

もっとも、単に従業員が理由を話さないだけの場合には、安易に懲戒処分をすることは避けましょう

例えば、うつ病などの精神的な原因で出社拒否の理由を話すことすらできない状況であることも考えられます。

出社拒否に理由がないと思われる場合でも、必ず従業員と根気強くコミュニケーションを取って慎重に理由の有無を判断するようにしましょう。

 

②従業員がプライベートの理由で出社拒否している場合

例えば、恋人とデートしたいから、新発売のゲームで遊びたいから、などのプライベートの用件で出社を拒否している場合には、懲戒処分を検討できます。

ただし、親族に不幸があった場合など、プライベートの用件であっても、従業員の立場に立ったときにやむを得ないと言える場合で、会社が特に配慮すべきケースもないわけではありません。

このような場合であれば、懲戒処分に合理性が認められない事も考えられます。

プライベートの理由による出社拒否であっても、懲戒処分が認められる場合か、ケースバイケースで判断する必要がありますので注意しましょう。

 

③出社拒否の理由が嘘である場合

従業員が申告した出社拒否の理由が嘘であると判明した場合はどうでしょうか。

例えば、体調不良を理由に従業員が出社拒否をしていたにもかかわらず、SNS上の写真や情報から、元気な姿や行動(お酒を飲むなど)が判明する場合が考えられます。

このような場合、そもそも出社拒否には理由が存在しなかったことになりますので、懲戒処分を検討できる状況です。

さらにいえば、会社に対して嘘の申告をした事自体も、業務命令に反する悪質な行為ですから、懲戒処分の合理性・相当性が認められやすくなるでしょう。

 

 

出社拒否する従業員への対応方法と注意点

以上のとおり、従業員が出社拒否をした場合でも、会社は安易に懲戒処分をするべきではなく、慎重な対応が求められます。

まず何より、従業員から丁寧に話を聞いて、出社拒否の理由を確かめる必要があります。

また、従業員としても職場復帰を望んでいることが多いので、従業員と話し合った上で職場復帰の方法を話し合うのがいいでしょう。

具体的には、業務内容の変更や転属、勤務形態の見直しなどを検討するのが良いでしょう。

一方、合理的な理由がないままに出社拒否を続ける従業員に対しては、懲戒処分を検討せざるを得ないことになりますが、その場合にも懲戒処分に必要な手順をしっかり踏むことに注意しましょう。

以上を前提に、出社拒否のケースごとに対応方法を見ていきましょう。

 

体調不良による出社拒否の場合

体調不良を理由とする出社拒否については、基本的に会社はこれに応じるべきでしょう。

上でも説明したとおり、会社には従業員への安全配慮義務(労働契約法第5条)がありますので、体調不良により出社が難しい社員に対して、出社を強制することは安全配慮義務違反になり得るためです。

もっとも、体調不良が私傷病(会社の業務とは無関係な病気)によるものである場合、出社拒否が一定程度、継続すれば、会社はその従業員を解雇(懲戒解雇ではなく、普通解雇)できる可能性があります。

すなわち、雇用契約も契約である以上、従業員は会社に対し、労務を提供するという法的な義務があります。

体調不良が理由であっても、労務を提供できないということは、会社に対する約束違反(債務不履行)に該当する可能性があります。

ただし、不当解雇となる可能性もあるため慎重な判断が必要です。

解雇の可否については、労働問題に詳しい弁護士へご相談されることをお勧めいたします。

出社拒否症の場合の注意点

出社拒否症とは、出社することに対して体が拒否反応を起こしてしまう症状です。

出社拒否症は病気であるため、本人に落ち度はないと考えられます。

また、無理に出社させると症状が悪化することが懸念されます。

そのため、会社としては慎重な対応が求められます

出社拒否症か否かのチェック

厚生労働省のセルフチェックを参考に自己診断してみるとよいでしょう。

 

職場環境(パワハラ、セクハラ等)による出社拒否の場合

職場環境(パワハラ、セクハラ等)を理由とした出社拒否の場合には、会社としては、まずはその出社拒否が妥当か否かを判断すべきでしょう。

すなわち、ハラスメントと一口に言っても、様々なものがあります。

例えば、セクハラに関して言えば、強制わいせつ罪が成立するほどの悪質なものから、軽い冗談程度の発言まで、様々な状況が考えられます。

したがって、会社としては、まずは出社拒否が正当か否かを検討しましょう。

判断が難しい場合は、労働問題専門の弁護士へ相談されると良いでしょう。

出社拒否が正当と判断される場合、会社は、優先的にその原因を取り除く必要があります。

企業には、セクハラ対策やパワハラ対策を行う法律上の義務があります(男女雇用機会均等法第11条、労働施策総合推進法第30条の2)。

それにも関わらず、このような対策を十分に講じることなく、従業員の訴えを無視して出社を命令することは難しいです。

仮に、従業員の訴えを受けて、法令が認める水準の対策を講じた場合には、従業員が出社を拒否する理由はなくなりますから、会社としては原則に立ち返って出社を促すことになります。

ただし、パワハラやセクハラが従業員にとって心理的なトラウマとなっていることも考えられます。

また、従業員との関係が悪化し、慰謝料を求められるなど、従業員とのトラブルにつながる可能性もあります。

そのため、職場環境が改善した後でも、会社としては慎重にその従業員と接することを心がけましょう。

男女雇用機会均等法第11条
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(以下、省略)

引用元:男女雇用機会均等法|e-Gov法令検索

労働施策総合推進法第30条の2
(雇用管理上の措置等)
第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(以下、省略)

引用元:労働施策総合推進法|e-Gov法令検索

会社が講じるべきハラスメント対策について詳しくお知りになりたい方は、こちらも合わせてお読みください。

 

テレワーク・在宅勤務の継続希望を理由とした出社拒否の場合

原則として、会社には、従業員に職場へ出社して勤務することを指示する権利があります。

したがって、いくら従業員がテレワークや在宅勤務を希望しても、基本的に合理的な理由にはならず、最終的には懲戒処分も検討できます。

ただし、テレワーク・在宅勤務を希望している従業員側の事情をしっかりと聞き取る必要があります。

新型コロナウイルスなどの感染爆発により緊急事態宣言が出ているような場合には、感染を恐れてのテレワーク・在宅勤務希望には一定の合理性があるため、懲戒処分が難しいことは上述のとおりです。

また、緊急事態宣言が出ていない状況であり、懲戒処分を検討できる場合でも、感染症対策が不十分なことは会社側の不備を指摘される可能性がありますので、他社の対応を参考にしてできるだけ感染症対策を講じることが望ましいです。

そして、感染症対策の一環として、会社としては、テレワークや在宅勤務が可能な体制を検討することにも積極的に取り組まれるのがよいでしょう。

 

対応方法と注意点のまとめ

以上の話を表にまとめると以下のとおりです。

体調不良を理由とする
出社拒否
職場環境を理由とする
出社拒否
在宅勤務を希望するための
出社拒否
共通の手順
  1. ① 従業員の話を詳しく聞く(出社拒否の理由を聞き取る)
  2. ② 理由がない場合には懲戒処分も検討
  3. ③ 懲戒処分を検討するに当たっては、必要な手順で慎重な対応が必要
その他注意点
  • 診断書に従って勤務可否を判断する必要
  • 私傷病の場合は普通解雇を検討
  • 出社拒否の正当性を判断
  • 職場環境を改善しないままに出社命令を継続することは避けるべき
  • 職場環境改善後も、従業員とのトラブルにならないよう慎重に対応が必要
  • 緊急事態宣言下での出社命令は特に慎重に(感染回避が理由の場合)
  • 在宅勤務導入にも前向きに取り組むのが望ましい

 

 

出社拒否する従業員への対応の流れ

出社拒否の従業員への対応の流れは次のとおりです。

  • 1
    従業員と話し合いの場を設ける
  • 2
    出社命令を出す
  • 3
    軽い懲戒処分を検討する
  • 4
    退職勧奨を検討する
  • 5
    懲戒解雇を検討する

 

①従業員と話し合いの場を設ける

まず、従業員が出社を拒否する理由を確認しましょう。

そのために従業員と話し合うことが大切です。

出社を拒否する理由が出社拒否症などの病の場合は、治療の経過を見守ることになるでしょう。

また、従業員に落ち度がなく会社に問題がある場合、その問題を除去することを検討します。

 

②出社命令を出す

出社拒否に正当な理由がない場合、基本的には会社から従業員に対し、書面等で出社命令を出します

 

③軽い懲戒処分を検討する

会社の出社命令に対し、従業員が無視するなどして改善しない場合、懲戒処分を検討することとなります。

懲戒処分の種類に注意!

出社拒否の場合、懲戒処分は通常、戒告、譴責等の軽いものとなります

また、上で解説したように、懲戒処分は就業規則を根拠としているため、必ず就業規則を確認するようにしましょう。

 

④退職勧奨を検討する

懲戒処分を課しても出社拒否を継続する場合、懲戒解雇の前に、退職勧奨を検討しましょう

退職勧奨とは、会社側が退職してほしいと考えている従業員に対して、退職を勧めることをいいます。

 

⑤懲戒解雇を検討する

出社拒否を継続する従業員が退職勧奨にも応じない場合、懲戒解雇を検討します。

懲戒解雇は、会社が従業員に対して行う、会社の秩序を乱すような行為について罰を与えるための解雇のことをいいます。

従業員が会社の秩序を乱す重大な規律違反や非違行為(非行)を行った場合に制裁として行われます。

懲戒解雇は従業員に対する不利益が大きいため無効となる可能性があります

そのため、労働問題に強い弁護士に相談しながら進めていくことをおすすめします。

 

 

まとめ

このページでは、出社拒否をする従業員への対応方法を見てきました。

出社拒否といっても、その理由は様々で、従業員には個々の事情があります。

そのため、会社としては、従業員の申し出を真摯に聞いた上で、問題の解決を個別に検討することが基本的なスタンスとなります。

もちろん、場合によっては懲戒処分を検討せざるを得ないこともありますが、出社拒否に対する懲戒処分についてはケースバイケースで大きく結論が別れますので、特に慎重な対応を心がけましょう。

もし、対応に悩まれる場合には、労働法分野に詳しい弁護士へ相談することを強くお勧めします。

デイライト法律事務所は、従業員の出社拒否を含めて、労働分野の企業側の各種お悩みについて、多くの解決実績を有しています。

従業員の出社拒否についてお悩みの場合には、当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。

 

 





  

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