戒告とは?戒告処分の事例・デメリットや対処法を弁護士が解説
「戒告」(かいこく)とは、会社が従業員に対して行う「懲戒処分」の一つで、問題行動を戒めるために注意する処分です。
戒告は懲戒処分の中では軽い方に位置づけられています。
しかし、会社によっては昇給や昇進、ボーナスの査定に影響を及ぼすことがあります。
したがって、不当な戒告は、従業員の納得感が得られずに労使紛争に発展するリスクがあります。
ここでは労働問題に注力する弁護士が戒告の意味、メリットやデメリット、気をつけるべきことについて、わかりやすく解説します。
最後まで読んでいただくことで、戒告に関する重要なポイントを理解できると思いますので、ぜひ参考になさってください。
目次
戒告(かいこく)とは
「戒告」(かいこく)とは、会社が従業員に対して行う「懲戒処分」の一つで、将来を戒めるために注意を申し渡す処分です。
戒告は、懲戒処分の中では軽い処分に分類されます。
会社の場合、戒告は労働基準法や労働契約法で定められている用語ではありませんので、その内容の詳細は会社ごとの「就業規則」によって決まることになります。
以下では、戒告処分について、主に会社の場合を前提にして説明していきます。
戒告の法的な根拠
戒告は従業員に対する不利益な処分です。
なぜ会社はこのような処分を課すことができるのでしょうか。
まず、判例が挙げられます。
最高裁は、会社が「規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができる」と判示しています(国鉄札幌運転区事件〜最高裁昭和54年10月30日)。
参考:最高裁ホームページ
次に、法律の規定にも、会社が懲戒処分をできることを前提とする条文があります。
すなわち、労働契約法15条では、「懲戒」という言葉が使われており、会社が懲戒処分(懲戒解雇も含む)ができることを前提としているように読み取れることも懲戒解雇の法的根拠と言えるでしょう。
なお、トラブル防止のためには後で解説するように、会社の就業規則に「戒告がどのような場合にできるのか」を明記しておくべきです。
戒告処分の位置づけや他の処分との違い
懲戒処分の中での戒告処分の位置付け
戒告処分は、罰則としての解雇や減給の効果を持たない処分であるため、懲戒処分の中では、軽めの処分に分類されます。
懲戒処分とは、会社が、従業員に対してルール違反などを罰するために行う処分のことです。
懲戒処分として一般的なものは以下にお示しのとおりです。
以下のとおり、戒告は最も軽い処分に分類されています。
名称 | 処分の概要 |
---|---|
懲戒解雇 | 制裁として会社が従業員を解雇する処分。 懲戒解雇についてはこちらもご覧ください。 |
諭旨解雇(ゆしかいこ) | 会社が従業員に対して自主退職を勧告する処分。 諭旨解雇についてはこちらもご覧ください。 |
降格 | 従業員の役職を降格する処分。多くの場合、降格の結果として給与も減少する。 |
停職 | 従業員の出勤を一定期間認めず、欠勤扱いとする処分。数週間以上の出勤停止であることが多い。 |
出勤停止 | 従業員の出勤を一定期間認めず、欠勤扱いとする処分。数日程度の出勤停止であることが多い。 |
減給 | 給与が減額される処分。 |
譴責(けんせき) | 将来を戒める目的で注意する処分。従業員に対して、始末書の提出を求めることが多い。 |
戒告、訓告 | 将来を戒める目的で注意する処分。始末書の提出を求められないことが多い。 |
懲戒処分の中で特に重たい処分の一つが、「懲戒解雇」です。
懲戒解雇処分を受けると、会社をクビになってしまい、転職にも支障が大きくなるため、従業員の生活への影響が非常に大きいです。
他にも、例えば「減給」は、毎月支払われる給与の一部が減額されてしまうため、生活への影響が大きい処分になります。
これらに対して、従業員の将来を戒めて注意するだけの戒告処分は、罰則としての解雇や給与減額の効果がなく、比較的軽い処分になります。
ただし、後ほどご説明するように、戒告処分によって人事評価に悪影響が生じ、昇給などに影響を生じる場合が多いです。
また、会社が従業員に対して懲戒処分をするためには、あらかじめ会社の「就業規則」(人事に関する社内ルール)に懲戒処分の理由や、懲戒処分の種類を定めておく必要があるとされています。
そのため、会社ごとにその処分の内容は異なっていますので、詳細は各会社の就業規則を確認することが重要です。
懲戒処分についてより詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。
懲戒解雇の前段階としての戒告
戒告処分などの軽い懲戒処分は、より重い処分である懲戒解雇などを行う前段階として位置づけられることが多いです。
例えば、会社が懲戒解雇を行う場合、事前に、従業員に是正の機会を与えていることが重要になります。
そういった機会を与えないままに懲戒解雇を行うと、懲戒解雇処分の合理性が否定され、無効や取消しとなるリスクが高くなるからです。
会社としては、戒告処分の形で注意や警告をしたにもかかわらず、それでも改善せずに同じような行為を繰り返す従業員に対してであれば、次のステップの処分として有効に懲戒解雇を主張しやすくなります。
このため、会社は、懲戒解雇の前段階として、従業員に是正の機会を与える一手段として戒告処分を活用することが考えられます。
ただし、戒告処分の対象となった事実と全く同一の事実について、懲戒解雇などの別の懲戒処分をすることはできません(二重処罰になってしまうため)。
戒告処分の後により重たい懲戒処分をする場合には、戒告処分後などに発生した別の行動や事実を理由とする必要がありますので注意しましょう。
訓告、訓戒、譴責、厳重注意等との違いは?
戒告処分と違いが分かりにくいものとして、訓告、訓戒、譴責(けんせき)、厳重注意などがあります。
これらの共通点や違いは何でしょうか。
一つずつ見ていきたいと思います。
①訓告との違い
訓告とは、戒めて告げること、教えて告げること、です。
戒告と同じく、会社が従業員に対して注意する懲戒処分の一つです。
ただ、後ほどご説明するように、公務員に関して、戒告は国家公務員法や地方公務員法に定められた法律上の懲戒処分です。
これに対して、訓告処分は、法律に定められていない軽い処分の位置づけとされています。
そのため、会社においても、戒告よりも訓告の方が軽い懲戒処分として定められていることが多いです。
戒告と訓告の違いを表にまとめると以下のとおりです。
共通点 | 違う点 | |
---|---|---|
戒告 | 将来を戒めるために、厳しく注意する懲戒処分 | 訓告より重い処分であることが多い |
訓告 | 戒告より軽い処分であることが多い |
訓告についてより詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。
②訓戒との違い
「訓戒」とは、物事の善悪などについて教え戒めることです。
戒告や訓告と同じく、従業員を注意する内容の処分ですが、戒告処分よりは注意の程度が低く、軽い処分とされることが多いです。
これを表にまとめると以下のとおりです。
共通点 | 違う点 | |
---|---|---|
戒告 | 将来を戒めるために、厳しく注意する懲戒処分 | 訓戒より重い処分であることが多い |
訓戒 | 戒告より軽い処分であることが多い |
③ 譴責(けんせき)との違い
「譴責」(けんせき)とは、将来を戒めて注意する処分です。
内容としては戒告処分とほぼ同じですが、一般に、譴責処分では「始末書」や「顛末書」(てんまつしょ)などの提出を求められ、書面の形で従業員自らの行いを謝罪させたり今後同様の過ちを犯さないことを誓約させることが多いのに対して、戒告処分では「始末書」や「顛末書」の提出を求めないことが多いです。
ただし、会社によっては、戒告でも始末書や顛末書の提出を求めることがありますので注意してください。
以上を表でまとめるこのようになります。
共通点 | 違う点 | |
---|---|---|
戒告 | 将来を戒めるために、厳しく注意する懲戒処分 |
|
譴責(けんせき) |
|
譴責についてより詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。
④厳重注意などとの違い
以上の他にも、「厳重注意」「口頭注意」など、類似の処分が会社によっては定められていることがありますが、その内容は一般的に戒告と大きな差はありません。
厳重注意なども、訓告と同様、戒告よりもさらに軽い処分として位置づけられることが多いです。
ただし、会社それぞれの就業規則で、処分の名称やその内容が異なる場合がありますので、見慣れない処分を受けた場合には必ず就業規則を確認するようにしましょう。
以上を表でまとめるこのようになります。
共通点 | 違う点 | |
---|---|---|
戒告 | 将来を戒めるために、厳しく注意する懲戒処分 | 厳重注意、口頭注意より重い処分であることが多い |
厳重注意、口頭注意 | 戒告より軽い処分であることが多い |
どういった場合に戒告となるか?
戒告処分となる可能性があるのは、法律や社内ルールに違反した場合や、素行が悪い場合です。
その中でも、会社にとっての不利益が小さい場合や、従業員側にある程度やむを得ない事情があるなどの理由で、比較的程度が軽いと会社に判断された場合に、戒告処分になることが多いです。
戒告処分となり得るケース
戒告処分となり得るケースとして、例えば以下のような場合が考えられます。
①就業規則等の会社のルールに違反する行為
- 複数回の無断欠勤
- 複数回の遅刻
- 営業秘密等の漏洩
- 就業規則上禁止されているにもかかわらず、兼業や副業を行うこと
- 会社に権利のあるコンピュータプログラムなどを勝手に改善・変更すること
- 無断で会社の備品(社用車やPCなど)を使用で利用すること
②職場環境を悪化させる行為
- パワハラ、セクハラ、モラハラなどのハラスメント行為
- 業務時間中に仕事に関係のないネットサーフィンを複数回行う行為
- 業務時間中に私用のメールやLINEなどのやり取りを複数回行う行為
- 業務時間中に仕事と関係のない場所で長時間を過ごす行為
- インターネットの掲示板やSNS等で、会社の悪口などを書き込み行為
- 社内の関係者と不倫したために、相手の配偶者と紛争が生じて業務に支障が出る場合
※会社に生じる不利益の程度や悪質の程度によっては、戒告にとどまらず懲戒解雇などのより重い処分になる場合もあります。
具体的には、単なる遅刻であっても、遅刻の常習者で、上司から注意や指導が行われており、過去にも遅刻を理由に戒告などの懲戒処分を受けている場合が考えられます。
それでもなお改善が認められない場合には、その後の遅刻を理由として減給や懲戒解雇などのより重い処分になる可能性があります。
※他方、上に列挙した各行為に該当したとしても、戒告処分の有効性が認められない場合もありますので、個別に慎重に判断する必要があります。
微妙な事例についてはできるだけ弁護士に相談することをお勧めします。
戒告の有効性が否定された事例
戒告の有効性が争われ、戒告が無効とされた裁判例を一つご紹介します。
判例 戒告が無効とされた裁判例
◎事案の概要
会社(三和銀行)が従業員に対して、戒告処分を行った事案です。
会社は、従業員が本を出版し、その中で嘘や事実と異なる記載をし、会社の名誉等を傷つけたことを処分の理由としました。
◎裁判所の判断
裁判所は、戒告処分が懲戒としてもっとも軽いものであるとしても、本の記載について、相当の理由があること、当該従業員の出版の目的が主として従業員の労働条件の改善を目指したものであることを考慮して、「戒告は、処分の相当性を欠き、懲戒権を濫用したもので、無効である」と判断しました。
戒告処分について、このように個別の事情を勘案して有効性が判断されることになりますが、その一事例としてこの裁判例は参考になります。
戒告できるケースを知るには会社の就業規則を確認するのが早い
上で解説したように、法律上、「労働者を懲戒することができる場合」でなければ、会社は戒告などの懲戒処分をすることができないとされています。
最高裁判決(国鉄札幌運転区事件 最高裁第3小法廷判決昭和54年10月30日)でも、会社は規則や指示・命令などに違反する従業員に対して、「規則の定めるところ」にもとづいて懲戒処分ができるとされています。
したがって、会社は、戒告などの懲戒処分をするためには、あらかじめ「就業規則」(人事に関係する社内ルール)に懲戒処分の理由や懲戒処分の種類を定めておく必要があります。
どのような場合に戒告などの懲戒処分を受け得るかは、各会社の就業規則を確認するのが一番です。
戒告についての就業規則のサンプル
就業規則は会社によって異なりますが、一般的な内容は厚生労働省が「モデル就業規則」を作成して公表しています。
これは、会社が就業規則を定める際に参考にできるように、厚生労働省が就業規則のサンプルとして公表しているものです。
モデル就業規則には、戒告処分については規定されていませんが、同様の処分として譴責(けんせき)処分について定められているので参考になります。
モデル就業規則では、以下のような場合に譴責(けんせき)などの懲戒処分ができるとされています。
(懲戒の事由)
第66条 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。
- ① 正当な理由なく無断欠勤が 日以上に及ぶとき。
- ② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。
- ③ 過失により会社に損害を与えたとき。
- ④ 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。
- ⑤ 第11条、第12条、第13条、第14条、第15条に違反したとき。
- ⑥ その他この規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき。
つまり、
- 正当な理由のない無断欠勤が続いた場合
- 正当な理由のない遅刻・早退が複数回にわたる場合
- 過失(ミスや失敗)によって会社に損害を与えた場合
- 素行不良で社内の秩序や風紀を乱した場合
には、譴責(けんせき)処分やこれに類似する戒告処分などを受けることが多いです。
他にも、会社の業種や業務内容によって、モデル就業規則に書かれていないような懲戒事由(会社が懲戒処分できる理由)が定められている場合も多いです。
なお、就業規則は、法律上、従業員ならいつでも確認することができるようになっているため、ぜひ一度お勤めの会社の就業規則をご確認ください。
第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、~~省略~~を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。
法律で就業規則の周知義務があるにもかかわらず、実際には多くの会社で就業規則を確認できません。
これは、そもそも就業規則を作っていない場合※と、作ってはいるものの周知していない場合があります。
後者の場合、周知義務を会社が理解していないケースが多いです。
戒告処分をするとどうなる?
以下では、戒告処分による具体的な影響(メリットとデメリット)について、会社と従業員にわけて解説します。
なお、筆者の個人的な主観であり、影響については様々な状況によって異なります。
会社へのメリットとデメリット
戒告の会社へのメリットとデメリットをまとめると次のようになります。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
会社へのメリット
戒告は比較的軽微な問題行動等を戒めるために注意して、将来の改善を促すものです。
効果的に運用することで、組織の発展に資すると言えます。
戒告は懲戒解雇等の重い処分と比べると、従業員に対して与える影響の度合いが低いです。
そのため、戒告処分を巡って裁判などに発展する可能性も低くなります。
また、仮に納得していなかったとしても、従業員が戒告処分を争わずに泣き寝入りするケースもあります。
戒告はトラブルになるケースが比較的少ないため、手続も簡単となる傾向です。
例えば、関係者からの事情聴取や社内での処分の妥当性についての協議など、懲戒解雇の事案と比べて簡素化されます。
会社へのデメリット
戒告は、懲戒処分の中では軽い処分であるため、戒告処分を行っても秩序維持の目的を達成し難い場合があります。
例えば、会社内での横領や悪質なセクハラな事案の場合に懲戒解雇ではなく戒告処分で済ませると、他の従業員から見て「軽すぎるのでは?」という疑念を抱かれるでしょう。
戒告は比較的軽微な処分とはいっても、従業員に対する不利益処分であることには違いありません。
そのため、戒告処分を行う際には労働法令に関する情報を集めて適切に行わければなりません。
従業員へのメリットとデメリット
戒告の従業員へのメリットとデメリットをまとめると次のようになります。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
従業員へのメリット
職を失う「懲戒解雇」や給与が減ってしまう「減給」や「停職」などと比べると、戒告そのものの悪影響は少ないと考えられます。
戒告処分は通常、会社が従業員に対し、良くなかった点は反省してもらい、今後頑張ってほしいという願いで課される処分です。
もし、問題があったのであればその原因を振り返り、今後同じことを繰り返さないように注意して仕事に励むべきです。
そうすることで、汚名を挽回できるでしょう。
従業員へのデメリット
昇級とは、会社ごとに定められている給与テーブルの等級が上がることです。
昇級することで、給与が上がる(昇給)のが通常です。
戒告処分を受けた場合、昇級・昇給にどのような影響が生じるでしょうか。
一般的に、会社は、処分を受けた場合の人事評価の方法をあらかじめ社内ルールなどで定めていることが多いです。
また、昇級の判断は人事部門による総合的な判断によってなされますので、ルールで明確になっていない場合でも、戒告処分を受けたことが影響して昇級が遅れることが考えられます。
特に上の役職になるほど、戒告などの懲戒処分を受けていない従業員の方が、処分を受けた従業員よりも優先的に出世することになるのが通常です。
戒告処分が軽い処分であるとしても、従業員自身にはわからないところで昇級に大きく悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、厚生労働省が定めるモデル就業規則では、昇給について以下のように定めています。
ここでも、昇給は、「労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定」されることが記載されていますので、戒告処分が昇給に影響することがうかがわれます。
(昇給)
第47条 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年 月 日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。
2 顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。
3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。
引用元:モデル就業規則|厚生労働省
賞与(ボーナス)についての考え方は会社によって異なりますが、会社の業績や人事評価によって賞与を支給しないことも一般に認められます。
戒告処分が賞与の減額につながります。
戒告などの懲戒処分を受けている従業員に対しては、賞与査定において賞与を減額することの合理性が認められることになります。
特に、戒告処分後、直近の賞与査定においてはほとんどの場合マイナスの影響があると考えるべきでしょう。
ただ、会社としては、一定の社内基準に基づいて公平に賞与を支給する必要があります。
したがって、軽い処分にすぎない戒告処分を受けただけで、他の従業員と比較して不当に賞与が大幅減額されることは会社側の裁量の範囲を超えたものと判断されるリスクがあります。
そのため、具体的にどのような金額にするかについては、慎重に検討することが必要です。
戒告処分を受けたことを、転職希望先に知られてしまうことは稀ですが、履歴書を通じて知られてしまう場合や、転職希望先との面接を通じて知られてしまう場合などが考えられます。
仮に、転職希望先に戒告処分等の懲戒処分のことが知られた場合には、転職希望先の会社にて採用時の判断で考慮されます。
軽い処分とは言っても、戒告は懲戒処分ですので、この事実を知られた場合、転職希望先から警戒される可能性が高いといえます。
履歴書に懲戒処分、特に戒告処分について記載する義務はないと考えます。
履歴書に賞罰欄がある場合であっても、犯罪を犯して有罪が確定したものを書けば十分で、会社内部の処分にすぎない懲戒処分について書く法的な義務はないと思われます。
面接官によっては、懲戒処分の有無を尋ねられることがあります。
もっとも、面接官に対しては必ず正直に説明するように心がけましょう。
仮に、入社後に、面接時に嘘をついていたことが判明した場合、トラブルになる可能性が高いので注意が必要です。
場合によっては、経歴詐称として解雇されてしまうことにもつながります。
退職金は、昇級・昇給や賞与とは異なり、会社で働いていた勤続期間の長さや退職理由(自己都合の退職か否か)によって算定されるのが一般的です。
したがって、昇級・昇給や賞与と比べると、戒告処分によって、退職金の額が大きく減額されることは少ないです。
懲戒処分の中でも、解雇を伴う懲戒解雇などの場合には退職金が不支給や減額になることはありますが、戒告処分は退職金額にまで影響しないことが一般的です。
もっとも、退職金は、在職中の役職や等級などによってもらえる金額が変動する会社もあります(役職に応じてポイントが蓄積されて退職時の退職金額が決定される「ポイント方式」を採用している会社など)。
上でご説明した通り、戒告処分によって昇級・昇給が悪影響を受けることは珍しくありませんので、その結果として、退職金の額も減額されることは考えられます。
退職金に関する各会社の制度は、会社ごとに定められている就業規則に記載されています。
なお、上で解説した厚生労働省のモデル就業規則では、「懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある」と定めていますが、戒告処分によって減額になるとの定めはありません。
戒告の手続の流れ
会社が、戒告などの懲戒処分を検討する場合、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。
ここでは、具体的に、素行の悪い従業員などに対して、会社が戒告処分をしたい場合に踏むべき手順をみていきます。
戒告などの懲戒処分は、後日従業員が訴え出ることで、無効・取消しとなってしまうリスクがあります。
そこで、会社としては、必要な手順を踏んで、懲戒処分が合理的なものになるよう注意して進めることが重要です。
①事前準備
会社は、戒告などの懲戒処分をするためには、あらかじめ「就業規則」に懲戒処分の理由や懲戒処分の種類を定めておく必要があります。
従業員が10人未満の会社の場合、就業規則の作成義務はありませんが(労働基準法第89条)、懲戒処分を行うためにはそのような会社でも就業規則を作成して、懲戒処分の定めを置く必要があります。
そして、就業規則には懲戒処分の定めを置く場合、曖昧な規定を置くだけでは不十分です。
具体的な懲戒処分の種類とその程度などについてできるだけ具体的に定める必要があります(労働基準法第89条9号)。
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
~~省略~~
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
~~省略~~
②事実関係の調査
従業員が社内ルールや法律などに違反している、或いは、素行が不良だと疑われた場合にも、すぐに戒告などの懲戒処分を検討する前に、慎重に調査を行う必要があります。
単なる噂や勘違いに基づいて懲戒処分をしてしまうと、その処分はそもそも根拠を欠くことになります。
その結果、従業員からの訴えがあれば処分が無効又は取消しになってしまいます。
また、完全な勘違いではない場合でも、新たな事情が後になって判明してしまうと、戒告処分の合理性や相当性が事後に否定されてしまう原因になる可能性があります。
戒告などの懲戒処分は、法律上「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当である」ことが必要とされています(労働契約法第15条)。
これが否定されてしまうと、懲戒権利の乱用となり、懲戒処分が無効になってしまうので慎重な調査が必要です。
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
そのため、懲戒処分に該当すると思われる従業員の行動について、電子メールや写真など、できるだけ客観的な証拠を収集しましょう。
もちろん、都合よく客観的な証拠が集まらない場合も考えられます。
そのような場合、他の従業員からの証言を聞き取って証拠とすることもできます。
ただし、他の従業員からの証言を証拠とする場合には、できるだけ複数の従業員の証言を確認しましょう。
また、その従業員が後日同様の証言をしてくれる保証はありませんので、その証言を録音しておくなども重要です。
③就業規則に定めている懲戒事由の確認
事実関係の調査が完了したら、続いて就業規則を確認しましょう。
対象の従業員の行動が、就業規則の懲戒事由に当てはまっているか、どの懲戒処分が可能であるかを確認しましょう。
④過去の戒告処分事例などの調査
就業規則上、戒告処分ができると思われる場合でも、注意が必要です。
就業規則上は、どうしても懲戒事由が曖昧な書きぶりになっていることも多いです。
社内における過去の処分事例や裁判例など、同様の事例でどの程度の懲戒処分を行っているのか、必ず確認するようにしましょう。
他の従業員と比べて不公平に懲戒処分をしてしまうと、その処分が無効・取消しになってしまう可能性が高まります。
これらの調査を踏まえて、今回の事例に戒告処分が相当なのか否か、確認するようにしましょう。
なお、仮に、戒告処分が重すぎると思われる場合には、懲戒処分に至らない範囲で、上司から注意を行って厳しく指導を行うなどの対応をまずは検討しましょう。
⑤弁明の機会を従業員に与える
戒告などの懲戒処分を行う場合には、必ず、事前に従業員に弁明の機会を与えるようにしましょう。
後日、従業員側のやむを得ない事情や経緯などが主張される可能性を下げることができますし、弁明の機会を与えたこと自体が処分の相当性を高めるからです。
また、会社側の一方的な判断で懲戒処分をしてしまうと、従業員とのもめごとに発展しやすく、懲戒処分の有効性が争われる懸念が高まってしまいます。
弁明の機会を与えるときは、単に形式的に機会を設けるだけではなく、できるだけ従業員が弁明しやすい環境を整えてあげることも重要です。
⑥戒告処分の通知
戒告処分をする場合には、その処分内容を対象の従業員に伝えることになります。
単に処分の結果を伝えるだけではなく、従業員のどのような行為が懲戒処分の原因となったのか、なぜそのような行為が懲戒処分になるのか、といった処分の理由を同時に伝えるようにしましょう。
通知方法は、各社の就業規則の定めによることになります。
就業規則上、懲戒処分について書面による通知することを必須としている場合には、懲戒処分通知書を作成して、従業員へ交付する必要があります。
特に通知方法を定めていない場合であれば、法的には口頭や電子メールなどでの通知も認められることにはなります。
実際に、口頭のみで戒告処分を行って、人事部で作成する社内記録に残す運用をする会社もあります。
しかし、仮に通知方法の定めがないとしても、書面の形で通知するのが望ましいです。
特に、戒告処分は、失敗について注意して将来を戒めることが処分内容になりますので、従業員がその処分を厳粛に受け止めてもらう必要があります。
そのために、懲戒処分通知書による通知を選択するべきです。
また、単に口頭での通知で終わらせてしまうと、処分理由等を説明したことの記録が残らないことになり、後日紛争になった場合にトラブルの種になることも考えられます。
口頭での通知は特に避けましょう。
物理的に書面の交付がどうしても難しい場合には、電子ファイルの通知書を作成の上、電子メールなどの記録に残る方式で通知するようにしましょう。
こちらに「戒告処分通知書」のサンプル書式を掲載していますので、ぜひご活用ください。
戒告の相談窓口
労働問題を相談できる窓口にはいろいろとあります。
結論としては、戒告などの懲戒処分については、無料相談が可能な法律事務所にご相談されるのが一番だと思われます。
ただし、従業員の方で、あまり会社と紛争に発展しそうにない場合は、総合労働相談コーナーを活用するとよいでしょう。
また、従業員の方で、会社のさまざまな問題点を改善したいという方については、ユニオン(労働組合)への相談を検討してもよいでしょう。
下表は、戒告についての相談の可否、有料無料の別、特徴をまとめたものです。
相談窓口 | 相談可否 | 有料無料 | 特徴 |
---|---|---|---|
法律事務所:労働問題に注力する事務所 | ◯ | 事務所で異なる | 代理人としてサポートできる 専門知識や経験に期待できる 正式に依頼すると費用がかかる |
労働基準監督署 | ✕ | 無料 | 戒告などの懲戒処分は相談の対象外 |
ユニオン | 従業員 | 通常は無料 | 団体交渉などの強力な手段で解決を目指してくれる |
弁護士会の法律相談 | ◯ | 会によって異なる | 様々な弁護士が相談を担当するため選ぶことができない |
市役所の法律相談 | ◯ | 通常は初回無料 | 様々な弁護士が相談を担当するため選ぶことができない |
公的窓口:総合労働相談コーナー等 | ◯ | 無料 | 様々な情報提供を行う 交渉や裁判などを代理しない |
法律事務所
労働問題に注力している法律事務所に相談すると、豊富な知識と経験を踏まえた専門性が高い助言を受けることができるでしょう。
ただし、労働問題を専門とする弁護士は決して多くはありません。
また、労働問題に注力する法律事務所の場合、会社側のみ相談を受ける、または、労働者側のみ相談を受けるという場合が多いです。
さらに、法律相談の料金がかかる事務所もあるため、費用面を気にされる方はご予約時に確認なさってください。
労働基準監督署
労働基準監督署は、労働基準法その他の労働関係法令に基づき、会社に対する監督及び労災保険の給付等を行う厚生労働省の第一線機関です。
労基署に相談できるのは、差別的な解雇、残業代の不払いなどの法令違反であり、戒告などの懲戒処分の適否については本来相談の対象とはなりません(厚生労働省組織規則第790条)。
相談なさっても、おそらく門前払いはないかもしれませんが、相談窓口として適切とは考えられません。
ユニオン
ユニオンとは、労働者が一人でも加盟できる会社の外の労働組合のことをいいます。
ユニオンは、従業員保護のための重要な役割を担っており、一定の条件を満たせばその活動は法律(憲法や労働組合法)で保障されています。
具体的には団体交渉という強力な交渉方法で、会社と対等に労働条件や不当な処分について、交渉していくことができます。
その性質上、従業員からの相談のみ対応しており、企業の相談は対象外と考えられます。
弁護士会の法律相談
各都道府県には弁護士会があり、会として法律相談を提供しています。
会(都道府県)によっては、法律相談料が有料の場合があるため注意が必要です。
例えば、東京弁護士会の場合、労働者側の労働相談は初回30分間無料となっています。
また、基本的に多くの弁護士が相談担当として登録しているため、労働問題に精通した弁護士が対応していない可能性があります。
市役所の法律相談
各自治体において、無料の法律相談を提供しています。
弁護士会から登録弁護士を派遣しているため、弁護士からの助言が期待できます。
しかし、相談時間が30分など短いのが特徴です。
また、弁護士会の相談と同様に、多くの弁護士が相談担当として登録しているため、労働問題に精通した弁護士が対応していない可能性があります。
公的窓口:総合労働相談コーナー等
総合労働相談コーナーは、厚生労働省が運用しており、職場のトラブルに関する相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っています。
弁護士と異なり、代理人となって交渉したり、裁判対応などは行っていません。
しかし、戒告問題のように、紛争性が低い事案では、相談窓口の選択肢として検討に値するでしょう。
総合労働相談コーナーについてはこちらをご覧ください。
参考:総合労働相談コーナー
戒告処分をする会社側が気をつけたいポイント
戒告する前に弁護士に相談する
戒告処分を出す場合、従業員が戒告処分の無効や取消を求めて弁護士などに相談することも念頭に置く必要があります。
特に相手が問題行動を繰り返すモンスター社員の場合、従業員との間で紛争が生じることをある程度想定して、できるだけ事前に弁護士へ相談し、取りうる手立てを個別に検討して講じておくのが望ましいです。
戒告処分を出してしまう前に、事前に弁護士に相談いただければ、その会社の置かれた状況や対象の従業員の状況に応じて適切な紛争予防のアドバイスを受けられます。
戒告などの懲戒処分をする前段階を視野に入れて、問題社員・モンスター社員への対応方法を以下のページで詳しく解説しています。
トラブルを防止するための書式を活用する
戒告された従業員から訴えられた場合、会社は処分の適法性を主張・立証しなければならなくなります。
万一のことを想定し、トラブルを防止するために適切な書類を作成して、保存しておくことが重要となります。
当事務所は問題社員に対応するための書式の雛形・サンプルをホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。
問題社員対応にお困りの方はぜひご活用ください。
不当な戒告をされた従業員の対処法
身に覚えのない理由で戒告されてしまった従業員の方は、以下を参考になさってください。
- 戒告の理由について書面を求める
会社がいかなる理由で戒告処分をしたのかを明らかにするために、戒告の理由について書面で回答するように会社に求めます。 - 言い分を書面で提出する
上記の書面を確認し、事実が異なる場合は、ご自身の言い分を書面で提出しましょう。
会社が再調査し、戒告処分を取り消してくれるかもしれません。 - 労働者側の弁護士等に相談する
会社が戒告処分を取り消してくれない場合、労働者側の弁護士等に相談すると良いでしょう。
労働問題を扱う法律事務所の中には、「会社側しか相談を受けない事務所」と「労働者側しか相談を受けない事務所」があるので注意してください。
公務員や教員の戒告について
以上、会社の場合を念頭に戒告処分の説明をしてまいりました。
ここでは、公務員や教員における戒告処分についても触れておきます。
公務員
公務員の場合、戒告は法律を根拠とする懲戒処分の一つになります。
①国家公務員
国家公務員については、国家公務員法で定められている懲戒処分の一つになります。
(懲戒の場合)
第八十二条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
具体的には、人事院が以下のとおり、懲戒処分の指針を公表しています。
国家公務員に対して、どのような場合に戒告などの懲戒処分がなされるか定められています。
以下で引用したものは全体の一部を抜粋しているのみです。
全文についてはぜひ引用元をご確認ください。
1 一般服務関係
(1) 欠勤
ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。
(2) 遅刻・早退
勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
(3) 休暇の虚偽申請
病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。
(4) 勤務態度不良
勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
(5) 職場内秩序を乱す行為
ア 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする。
イ 他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。
(6) 虚偽報告
事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。
~~以下省略~~
②地方公務員
地方公務員についても、戒告は地方公務員法で定められている懲戒処分の一つです。
第二十九条 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
③戒告処分が公務員に与える影響
戒告処分の与える影響については、企業の場合と大きな違いはありません。
公務員は公共的で社会的な信頼の高い職種ですので、戒告処分を受けることが世間に特に重く受け止められる傾向があります。
戒告処分であっても、処分理由によってはマスコミに注目され、ニュースとして報道されることもありますので特に注意が必要です。
また、警察官など特に公共性の高い職種においては、軽い戒告処分であっても、それと同時に自主退職を促すケースもあるようです。
なお、人事院は戒告などの懲戒処分の件数を毎年公表しています(ただし個人を識別できるような情報は公表されません)。
【参考資料】
1 公表対象
次のいずれかに該当する懲戒処分は、公表するものとする。
(1) 職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分
(2) 職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち、免職又は停職である懲戒処分
2 公表内容
事案の概要、処分量定及び処分年月日並びに所属、役職段階等の被処分者の属性に関する情報を、個人が識別されない内容のものとすることを基本として公表するものとする。
教員
①教員
教員については、国公立校の教員と、私立校の教員とで立場が異なります。
私立の教員の場合、一般企業に所属する従業員と同様の立場になります。
そのため、冒頭から説明している通り、それぞれの私立学校法人が定めている就業規則に基づいて戒告などの懲戒処分がなされることになります。
国公立校の教員の場合、公務員と同様の立場になります。
②具体例
各都道府県の教育委員会では、教員に関する懲戒処分の具体例を公表しています。
非行の種類 | 処分の量定 | |
---|---|---|
体罰等 |
|
免職 |
|
停職 減給 |
|
|
戒告 | |
|
停職 減給 戒告 |
|
児童・生徒へのいじめ |
|
免職 停職 |
|
減給 戒告 |
~~省略~~
一例として、東京都教育委員会が公表しているものを抜粋しています。
このように、児童・生徒と接する教員の職務に独自の観点で、懲戒処分の基準が定められています。
③戒告処分が与える影響
戒告処分が教員へ与える影響は、上でご説明した一般企業や公務員の場合と基本的に同様です。
ただ、教員は社会的信用が特に高い職種です。
そのため、戒告処分を受けた事実が世間で注目されやすく、影響が大きくなりがちです。
なお、一般企業や公務員と異なり、教員は教員免許を保有しており、これを失ってしまうと教職に就けません。
懲戒免職・懲戒解雇などの重たい懲戒処分の場合には教員免許が取り上げられる場合もありますが、戒告という軽い懲戒処分で教員免許が取り消されることは比較的少ないです。
まとめ
以上、懲戒処分の一つである戒告について、詳しく説明いたしました。
懲戒処分については、会社ごとに定められている就業規則や、会社が置かれた状況によって対応方針が変わってきます。
戒告は、軽い処分に分類されていますが、懲戒処分という重大な処分であることには変わりありません。
戒告を受けた従業員にとっては、昇級・昇給、賞与、転職などに影響する重大事です。
そのため、訴訟において戒告処分の有効性が争われることも珍しくありません。
そこで、会社が戒告処分を検討する場合には、このような懲戒処分としての戒告の位置づけを十分に理解して、慎重な対応が必要になることを意識しましょう。
そして、後日紛争に発展する可能性が高いため、必要な手続きや手順が踏まれていることを慎重に確認し、できるだけ早い段階に労働問題に詳しい弁護士へ相談しておくことをお勧めいたします。
デイライト法律事務所の企業法務チームは、懲戒処分の対応に関して、多くの解決実績を有しています。
まずは当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。
ご相談の流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。