外国人を雇用するときの注意点とは?【弁護士が解説】
外国人を雇用するとき、外国人が理解できる言語での雇用契約書を作成することをお勧めいたします。
また、技能実習生の場合、実習計画書も必要となります。
働き方改革の必要性、働き方改革関連法の内容、働き方改革のために取り組むべき施策等について、労働事件に精通した弁護士がわかりやすく解説します。
技能実習生以外の場合
採用活動を通じて、内定を出し、外国人労働者に実際に就労してもらうに当たっては、雇用契約書を作成します。
雇用契約書の作成
雇用契約書は、日本人を採用する場合でも非常に重要な書類になります。
そもそも労働契約法15条において、労働者に労働条件を通知しなければなりません。
また、外国人は日本人に比べると契約社会の文化で生活しており、契約書にはシビアなことが多いです。
勤務時間や手当の内容及び額についても細かくチェックし、疑問があれば修正を希望してくることもあります。
例えば、手当の額を「2万円 〜 5万円」などと就業規則と同様に範囲で記載しておくと、外国人は「自分はいくらもらえるのか」と尋ねてきます。
このとき、企業としてはまずは 2万円と考えているかもしれません。
ところが外国人は「自分は5万円をもらえると思っていた。そうでなければ契約しない。」などと、一度まとまっていたと考えていたところから破談に至るリスクもあります。
こうした傾向は留学生の新卒採用よりも中途採用や海外から日本に呼び寄せる場合に認められます。
したがって、きちんと雇用契約書を利用して、雇用条件を明確にしておきましょう。
雇用契約書のサンプルはこちらになります。
また、日本語の雇用契約書だけでは、あとで「日本語が理解できなかった。」などと主張されるリスクがあります。
したがって、当該外国人の母国語で雇用契約書を作成する方がよいでしょう。
母国語が難しければ少なくとも英語の雇用契約書を作成して、日本語のものと母国語・英語のものを両方提示して契約書を締結しておくことが大切です。
雇用契約書は、外国人との関係では、単に労働条件を明確にするという意味だけでなく、中途採用でビザの変更が必要ないケース以外では、ビザ取得に当たって、重要な審査書類の一つとなります。
したがって、実際に就労を開始するかなり前の段階で雇用契約書を作成することになります。
内定通知書の際と同様に、就労ビザの取得が停止条件となる旨を明記しておかなければなりません。
すなわち、万が一、就労ビザが取得できない場合には、そもそも適法に日本で労働することができないわけですから、労務提供が不能となるため、雇用契約の効力は生じないということをはっきりと示しておきましょう。
ハローワークへ届出
雇用対策法により、企業は外国人を新たに採用した場合には、当該外国人の氏名、在留資格、在留期間等についてハローワークに必ず届出をしなければなりません。
この届出を怠ると 30万円以下の罰金に処せられます。
この届出は全ての外国人労働者(特別永住者、在留資格が「外交」・「公用」の者を除きます。)が対象となっており、留学生アルバイトなど社会保険に加入する義務がない外国人についても届出が必要ですので、注意が必要です。
技能実習生を採用する場合
技能実習生を受け入れる場合には、実習計画書以外に、雇用契約書を作成しなければなりません。
雇用契約書の作成
技能実習生の雇用契約書については、こちらの書式をご活用ください。
ここでも、雇用契約の成立は技能実習の在留資格が得られた時点である旨を明記しています。
この雇用契約書には別紙として雇用条件書を添付します。
雇用条件書の書式はこちらからダウンロード可能です。
雇用条件書には、労働契約法15条で通知をすべき事項が記載されており、契約期間や就業場所、労働時間や休日、休暇、給与といった事情を順次記載します。
そして、賃金に関する項目については、賃金の支払いという書面で基本給の額、手当の種類、額、賃金から控除する項目について記載します。
これは技能実習生ならではの書類になります。
この雇用契約書も技能実習生の国に応じて母国語の記載がなされたものを用意しなければなりませんが、外国人技能実習機構のホームページには、ベトナム語、中国語、インドネシア語、タガログ語、英語、カンボジア語、モンゴル語、タイ語、ミャンマー語といった9か国語の言語での雇用契約書、雇用条件書が用意されています。
まとめ
以上、外国人を雇用するときに注意点について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
外国人を雇用するときは、日本人のとき以上に雇用契約書が重要な意味を持ちます。
また、労使トラブルを予防するためには、本人の母国語で記載された雇用契約書も準備すべきです。
技能実習生の場合は、在留資格の取得を条件とするなどの工夫も必要となります。
雇用契約書は従業員が日本人の場合でも、適切なものを作成するためには専門的知識やノウハウが必要となります。
相手が外国人の場合、外国語の知識も必要となるため、外国人雇用に精通した専門家の助言のもと採用を進めていかれることをお勧めいたします。
外国人を雇用していく中で、マネジメントの問題や労働問題への対応が必要不可欠になります。
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士
所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会
保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
専門領域 / 法人分野:労務問題、ベンチャー法務、海外進出 個人分野:離婚事件
実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所の代表弁護士。労働問題を中心に、多くの企業の顧問弁護士としてビジネスのサポートを行なっている。『働き方改革実現の労務管理』「Q&Aユニオン・合同労組への法的対応の実務」など執筆多数。