ブラックバイトの実体と会社の法的責任
「しゃぶしゃぶ温野菜」のブラックバイト問題
9月10日、飲食チェーン「しゃぶしゃぶ温野菜」でアルバイトとして働いていた大学2年の男性と労働組合「ブラックバイトユニオン」が、フランチャイズ本部と店舗運営会社に対して、未払賃金の支払いや職場環境の改善などを求めて団体交渉を申し入れました。
この男性は、2014年5月から「しゃぶしゃぶ温野菜」でアルバイトとして働いていましたが、2014年秋以降、人手不足により職場環境が悪化しました。
男性が辞めたいと申し出ても、店長から「懲戒免職にする」と脅されたり、多額の損害賠償請求を示唆されたりして、やめるにやめれないとの状況に追い込まれました。
男性は1日12時間労働で、今年4月中旬からの4ヶ月間は1日の休みもなく、大学に通うこともできなくなりました。そのうえ、男性は、電話で店長から「殺してやっから。」「今からお前んち行くぞ。」などと脅されていた事実が、男性が録音した音声で明らかになりました。
しかし、男性は支払われるべき賃金もその半分以下しか支払わず、また食べ放題の客を時間通りに帰らせることができなかったことなどを理由に合計10万円以上の「自腹購入」までさせられました。
このような状態で、男性は不安障害とうつ状態になり、バイト先には勤務できないとの診断書が出るほどの状態に陥りました。
ブラックバイトと使用者の責任
未払賃金請求
会社が、支払うべき賃金を支払っていない場合、当然に未払賃金を支払わなければなりません。
労働基準法上の罰則
今回のケースだと、使用者は、労働時間や休日、賃金に関する対応で、労働基準法に違反している可能性があります。
その場合、使用者は、労働基準法に基づき、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
刑法上の脅迫罪が成立する可能性
今回のケースでは、店長が「殺してやる」「殺してやっから。」など、男性の生命、身体に対し危険を加える趣旨の発言をしていたことが明らかとなっています。これには刑法上の脅迫罪が成立する可能性がありますので、店長は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
会社の信用性の低下
ブラックバイトの実体が明らかになると、会社の信用性は確実に低下します。優秀な人材の確保が困難となるうえ、客からの信頼も無くし、会社の存続自体が危ぶまれる事態となることもあります。
従業員の労務管理に注意しましょう!
ブラックバイトが横行する背景には、サービス業特有の問題(正社員は1人しかおらず、あとはアルバイト社員で店舗を回すなど、慢性的な人材不足問題)のほか、若年層の貧困があるといわれています。大学の学費も数年前に比べて値上がりしており、それを補うためにアルバイトせざるを得ない学生も多数います。その弱みに付け込み、使用者が過酷な労働条件の下でアルバイトを酷使してしまうのです。
しかし、ブラックバイトを行ったことにより、最終的に不利益を受けるのは、ほかならぬ使用者なのです。
当然のことではありますが、労働基準法に基づいた労務管理をきちんと行うことが使用者には求められます。