橋本聖子氏と高橋選手のセクハラ騒動を受けて~職場のセクハラ問題
橋本聖子氏の行為はセクハラに当たるか?
先日、日本スケート連盟会長の橋本聖子氏が、冬季オリンピックのフィギュアスケートに出場した高橋大輔選手にキスをしている写真が出回り、セクハラ問題として取り沙汰されました。この件については、高橋選手が「セクハラやパワハラという感じはなかった」というメッセージを出したことで、事態の鎮静化が図られました。
これまで、セクハラというと男性から女性へ行われるものとしてとらえられることが多かったように思います。
しかし、そもそも「セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)」とは「性的嫌がらせ」のことをいいます。
そして、性的嫌がらせは決して男性から女性に対して行われるものだけではないため、女性から男性へのセクハラももちろんあり得ますし、同性間でのセクハラも存在するのです。
橋本氏によるキス写真は、このように女性から男性へのセクハラ問題を考えさせられる一つのきっかけとなりました。
今回、高橋選手はセクハラの存在を否定しましたが、それではその行為を受けた者がセクハラでないとの認識であれば、セクハラは法的に違法とはならないのでしょうか。
そもそも、セクハラかどうかは当該行為を受けた人の主観で決定されるものではなく、原則として一般通常人の女性又は男性を基準に判断されます。
したがって、今回の場合も、高橋選手がセクハラではないと認識していても、一般通常人を基準にするとセクハラであると認められる場合には、セクハラが法的に違法となる可能性があるのです。
職場におけるセクハラの種類
それでは、今回のようなセクハラ問題が職場で起きた場合、事業主にどのような責任が生じるのでしょうか。
まず、セクハラには、①環境型のものと、②対価型のものの、大きく2つに分類することができます。
①環境型
職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けることをいいます。
たとえば、使用者が労働者に対し性的関係を迫り、これを拒んだ労働者を解雇した場合は、環境型のセクハラに当たることになります。
②対価型
職場において行われる性的な言動により労働者の就業環境が害されることをいいます。
たとえば、使用者が労働者の胸や体全体を触る等して労働者に不快感を与え、当該労働者の労働意欲が低下してしまった場合、対価型のセクハラに当たることになります。
このようなセクハラ行為が職場で生じた場合、そのセクハラ行為をした本人だけでなく、会社も使用者責任を問われる可能性があるのです。
セクハラ防止のため、事業主が負っている義務
男女雇用機会均等法は、職場におけるセクハラを防止するため、事業主は労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の「セクハラに関し雇用管理上講ずべき措置」を講ずべき義務を課しています。
この義務に違反した場合、厚生労働大臣は、一定の勧告をした場合において、その勧告を受けた事業者がこれに従わなかったときは事業者の名称とともにその旨を公表することができます。
また、今年7月に施行された男女雇用機会均等法施行規則においても、職場におけるセクハラ問題は重視され、セクハラの予防・事後対応の徹底についても定められています。
セクハラ問題は決して軽視することはできません
今回、橋本氏と高橋選手は、五輪閉会式後の打ち上げにおいて、羽目を外してしまい、キスするに至ったと説明しています。
しかし、どのような環境であれ、一般通常人を基準に性的嫌がらせだと判断される場合にはセクハラが成立する可能性があります。
また、最近でも東京都議会で女性議員に対するセクハラヤジ問題が注目を浴びるなど、セクハラ問題に対する国民の関心は高まっているといえます。
一度職場におけるセクハラ問題が生じると、被害にあった労働者の精神的なダメージはもちろんのこと、その会社のイメージは損なわれ、外部からの信用も低下し、会社の成長を阻害しかねません。
職場におけるセクハラ問題については、今後もより一層ご注意ください。
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セクハラ問題を未然に防止するためには、とりわけ外部の相談窓口を設けることが効果的です。
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