解雇無効の主張を断念させ、残業代請求も減額した事例
依頼者商社
相手方の主張 | 弁護士のサポートの結果 | |
---|---|---|
解雇無効を前提に職場復帰 | 解雇有効を前提に解決 | |
職場復帰を了承しない場合約250万円の支払請求 | 解雇有効前提で0円 | |
残業代として約50万円の請求 | 約40万円の支払い |
状況
T社は、半導体の原材料などを取り扱う商社です。
T社の業績は芳しくなく、経費削減することが経営改善のために必要不可欠な状況にありました。
そこで、ノルマを半分程度しか達成できていない営業の従業員Kを整理解雇しました。
解雇の通知を発してから、数週間後に本人から不当解雇である旨の連絡がありました。
これに対して、T社は正当な解雇であることを説明しましたが、Kは納得せず、そのさらに数週間後にKが依頼した弁護士から、T社に通知が届きました。
通知の内容は、Kの解雇は違法で無効であるのでKを職場復帰させること、職場復帰が無理なら1年間分の給与として約250万円を支払うこと、未払残業代として約50万円を支払うことを要求するものでした。
Kに弁護士がついたことから、T社もどのように対応してよいのか分からず、当事務所に相談に来られました。
弁護士の関わり
弁護士は、T社から整理解雇するに至るまでの経緯を詳細に聴き取りました。
そうしたところ、整理解雇の有効性について全く争えないということはなかったため、整理解雇は有効であることを前提に交渉するという方針で進めることとなりました。
また、残業代請求については、K側の主張が必ずしも明確ではなかったため、資料の追加を要求して、その資料を見た上で判断するということになりました。
以上の方針を前提に、弁護士において、以下のような内容の反論の書面を作成しました。
整理解雇について
整理解雇については、判断要素とされている4要素(下記の「補足」にて説明します。)がありますので、その4要素に沿って、具体的な事実とともに解雇が有効であることを主張する書面を作成しました。
残業代について
残業代については、K側の主張する残業の証拠がなかったため、追加で資料を提示するよう要求する書面を作成しました。
そうしたところ、K側からは一定期間にわたり回答はありませんでした。
一定期間経過した後に、K側からは、整理解雇については、特段に触れることなく残業代の追加の資料が送付されてきました。
その資料を確認したところ、仮に裁判になった場合には、一定額の残業代が認められる可能性がありました。
そこで、弁護士は、T社と相談して、整理解雇は有効であることを前提に、残業代は一定額認めるという方針で交渉することにしました。
この方針に基づき、弁護士がK側の弁護士と交渉したところ、最終的にはT社がKに約40万円を支払うことで全てを解決するということで合意に至りました。
補足
整理解雇の有効性は、①人員削減の必要性、②整理解雇という人員削減手段の選択の必要性、③被解雇者選定の妥当性、④手続の妥当性の4つ要素から総合的に判断されます。
「①人員削減の必要性」で主張する事情の例としては、経営の悪化が挙げられます。利益が減少していることについて、決算報告書などに基づき、具体的な数字を示して主張していくことが求められます。
「②整理解雇という人員削減手段の選択の必要性」で主張する事情の例としては、解雇を回避するために実施したことを主張することになります。
例えば、配置転換、出向、希望退職を募る、取締役の報酬を減額すると言ったことを実施して解雇を回避する努力をしたことを主張する必要があります。
「③被解雇者選定の妥当性」としては、整理解雇する対象者が客観的で合理的な基準によって選定されていること等を主張することになります。
「④手続の妥当性」で主張する事情の例としては、整理解雇をするにあたって、労働者に対して十分な説明を行ったこと等を主張することになります。
本事例では、弁護士において上記の事情について、1つ1つ詳細に聴き取りを行い書面にて、相手方の弁護士に主張を行いました。
その結果、整理解雇は有効であることを前提とした解決をすることができたのです。
本事例では、整理解雇が有効である前提の解決をすることができましたが、従業員を解雇することは、非常にリスクが高いです。
従業員を解雇するにあたっては、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
解雇の有効性などについて詳細を確認した方はこちらをご覧ください。