団体交渉でやってはいけないこととは?弁護士がわかりやすく解説
ここでは、団体交渉を行う際の注意点をご紹介します。
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目次
団体交渉の開催は所定労働時間外で行うこと
労働組合が、所定労働時間内に団体交渉を開催するよう要求してくることがあります。これを認めてしまうと、仕事を中断して団体交渉を開催することとなりますし、後々、その間の賃金を支払うかどうかという問題が発生しかねません。そこで、団体交渉の日時については、就業時間後とすべきです。
また、時間については2時間程度を目処にするとよいでしょう。
団体交渉は労働組合事務所や社内では行わないこと
労働組合は、社内の施設や労働組合本部の事務所で団体交渉を行おうとします。しかしながら、団体交渉を会社の施設や労働組合の事務所で開催することは避けるべきです。
エンドレスになる可能性がありますし、団体交渉に出席する組合の交渉委員の素性もよくわからないからです。団体交渉は、公共の会議室等を指定すべきです。
上部団体役員の出席を拒否しないこと
会社と従業員の間の労働条件などに関して交渉する場合、会社とは何ら関係のない労働組合の上部団体の人間がなぜ出てくるのかと疑問に思う会社の担当者が多いようです。しかしながら、労働組合法上、使用者は上部団体の団体交渉の申し入れには応じなければなりませんし、上部団体の役員の参加を拒めないとされています。何も知らずに上部団体の役員の参加を拒んだりすると、労働組合は猛烈に抗議をしてきます。
その時点で初めて違法行為を行ったことを知る会社の担当者は少なくありません。
こうなると、労働組合から謝罪を求められ、会社にとって不利なペースで団体交渉が進められることになります。一見関係の薄い上部団体の役員であっても、団体交渉への参加を拒否することなく、
団体交渉を行いましょう。
組合員が特定できなくても団体交渉に応じること
会社によっては、どの従業員が労働組合に加入しているのかわかるまでは団体交渉に応じないという場合がありますが、労働組合には労働組合員を明示する義務がありません。
労働組合員が全員わかるまで団体交渉に応じないと、団体交渉拒否として不当労働行為となるおそれがあるため、まずは団体交渉に応じましょう。なお、はじめは労働組合員が誰であるかわからない場合でも、時間が経つと判明する場合が多いため、結成当初はそれほど気にかける必要はないでしょう。
しっかりと準備してから団体交渉に臨む
労働組合側からの団体交渉申入書には、組合にとって都合がいい団体交渉の日時が指定されています。
通常、団体交渉の申入書は労働組合から代表者である社長宛に郵送されてきます。突然の申入れに対し、社長が動揺し、準備もせず団体交渉を行ってしまうことがあります。
しかし、準備不十分なまま団体交渉を行うことは絶対に避けるべきです。もっとも、申し入れに対しては、きちんと回答しましょう。
その際、その日時に団体交渉ができない理由を記載し、時間の猶予を申し入れるべきです。
たとえば、「団体交渉申入の件については検討いたしますので、しばらくご猶予下さい」などの記載すればよいでしょう。
労働組合から提出された書類へは安易にサインしないこと
労働組合から団体交渉で作成した議事録と称して、書類へのサインを求められることがあります。
会社の担当者の中には、議事録だからといって安易にサインをしてしまうことがあります。
しかし、これにはサインをしないようにしましょう。文書の名称に関わらず、安易にサインをしてしまうと、労働組合に都合のよい部分を労働協約であると主張される可能性があるからです。
原則として、合意事項以外にサインすることは厳禁です。どのような文書であってもすぐにはサインに応じずに、一旦会社に持ち帰る旨を伝えて、中身をよく確認するようにしましょう。
受け入れ困難な労働組合の要求には安易に応じないこと
労働組合法は、使用者に対し、団体交渉に応じ、誠実に交渉する義務を課しています。
このことを勘違いし、労働組合の要求に応じないと不当労働行為になってしまうと思う方も少なくありません。もちろん、組合の要求に対して、会社の主張を裏付ける資料を提出したり、具体的な事実を説明したりする必要はありますが、会社が労働組合の要求をそのまま受け入れなければ不当労働行為になるというわけではありません。会社が受け入れることのできない労働組合の要求であれば、具体的な資料や論拠にもとづいて説明した上で、要求を拒否すべきです。
組合員の判断を尊重すること
労働組合が結成されると、会社側が一抹の不安から従業員に対して労働組合へ加入しないように働きかけたり、すでに労働組合に加入している組合員に労働組合をやめるように働きかけたりすることがあります。しかし、このような行為は労働組合の運営に不当に介入することになるため、支配介入行為として禁止されています。
組合員も様々な事情を勘案した上で労働組合に加入しているため、会社側からの働きかけに素直に応じるとは思えません。むしろ、このような行動は、労働組合に会社を攻撃する材料を与えることになりますので、十分に注意しましょう。
親会社が団体交渉に参加する
多数の関係会社を有している比較的規模の大きな会社の場合、関係会社の従業員が合同労組に駆け込むこともあります。このような場合、合同労組は従業員が勤務している関係会社だけではなく、親会社に対しても団体交渉を要求することがあります。会社によっては、これに応じてしまうところもあります。
しかし、一度団体交渉に応じてしまうと、その後も団体交渉に応じざるを得なくなります。法的には、関係会社と親会社が一定以上の密接な関係にあれば団体交渉に応じる義務があるといわれていますが、はじめから親会社が団体交渉に応じるべきではありません。
掲示板の貸与や就業時間中の組合活動を認めてしまう
複労働組合から便宜供与を求められることがあります。しかし、会社の施設や人員に余裕が無い場合は、そのことを具体的に説明して便宜供与を断っても不当労働行為にはあたりません。
そもそも、労働組合法第7条3号は、「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を不当労働行為として禁止しています(例外として必要最小限の広さの事務所の供与をすることは容認)。
また、会社は施設管理権を有しており、建物や設備を会社の裁量のもとに管理できるため、組合に掲示板を貸与するかどうかを決定することができます。
就業時間中の組合活動については、就業時間中は職務に専念する労働者の義務を履行するように会社が求めることで、就業時間中の組合活動を禁止することは原則として可能です。
専門家に相談しましょう
団体交渉で会社にとって不利益をもたらさないようにするためには、事前の対策が重要です。
弁護士などの専門家に相談して、十分な準備をしてから団体交渉に臨みましょう。