社内でセクハラ、パワハラ問題が生じたときの留意点
昨今、セクシャル・ハラスメント(セクハラ)、パワー・ハラスメント(パワハラ)の問題が世間を賑わしています。
そこで、今回は、社内で、セクハラ・パワハラ問題が生じたときに、経営者としていかに対処すべきかという点について解説いたします。
基本的には、セクハラもパワハラも会社側が対処すべき内容は共通しているので、ここではセクシャル・ハラスメントが社内で起きた場合を前提にさせていただきます。
被害の申告があった場合の対応
セクシャル・ハラスメントの被害を受けたという申告がハラスメント相談窓口や人事部等によせられたと仮定します。
この際の対応については、厚労省のセクハラ防止指針で定められている「職場におけるセクシャル・ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」によります。
(セクハラ防止指針は、正確には「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」といいます。)
このセクハラ防止指針によると、セクハラの被害申告がなされた場合には、申告内容について迅速かつ正確に事実の調査を行う必要があります。
セクハラの被害者が女性の場合には、女性担当者を同席させる等の配慮を行うことが望ましいとされています。
なお、事案の性質上、被害調査は難しいものがあります。というのも、多くの場合、加害者の言い分と被害者の言い分が異なるためです。
そのような場合にも、安易に、「事実は確認できなかった。」と結論付けるのではなく、それぞれの説明の具体性、一貫性等を吟味し、その信用性について経営者として判断を行うことが求められています。(紛争化してしまった場合に備えて、調査や判断の過程については、必ず、議事録等で記録化しておきましょう。)
また、事実の認識について被害者側、加害者側の乖離が大きい場合には、弁護士を調査担当者として関係者へのヒアリングを行うということも有益とされています。
さらに、二次被害を防止するという視点も重要です。ヒアリングを行う範囲については慎重に決定し、情報の拡散を防ぎましょう。
同時に、被害者と加害者を引き離しを試みましょう。
確かに、被害申告があったにすぎない段階で、加害行為の有無の判断はできませんが、少なくとも申告者と加害者とされている者との間でトラブルが生じていることは確実です。
そこで、当面の措置として、①座席を移動させる、②一方を自宅勤務にする等の措置が行えないかを検討しましょう。
このような初動を怠ると、被害事実があった場合には、被害者から使用者の安全配慮義務違反を問われ、損害賠償請求がなされることがありえます。
調査にはどうしても時間がかかるため、両者の引き離しを試みるという初動は非常に大切であると覚えておいてください。
被害が認められた場合の対応
調査の結果、セクハラに該当する行為があった場合には、経営者としては、セクハラ行為を止めさせ職場環境を改善することが必要になります。
加害者に対しては、懲戒処分を含めた処分を実施します。
また、職場においてセクハラに関する研修会を設けるなど社員の啓発に努め、再発防止を図りましょう。
被害の申告があった場合の初動で記載した被害者と加害者の引き離しが実施できていない場合には、被害者の意向を汲みつつ実施を検討する必要があります。
この点で、しばしばみられるのが、加害者ではなく被害者を別部署に配転することです。
しかし、セクハラ被害の申告をきっかけとした不当な配転と認定されてしまうと雇用機会均等法違反ともなりえます。
被害者の希望であれば別ですが、そうでない場合には、理由を説明したうえで、同意書を得ておく等で争いを未然に防ぎましょう。
被害が認められなかった場合の対応
調査の結果、セクハラに該当しうる行為が認められなかった場合、使用者としては調査の結果、申告された内容によるセクハラの事実は認められなかったことを説明します。
また、申告者は、少なくとも、加害者と指摘した者や職場に対して不満をもっていると思われるため、不満の原因と解決策について真摯に話し合いの機会をもつようにすべきです。
紛争化してしまった場合の対応
セクハラが紛争化してしまった場合、使用者側としては、①事実の有無、②法的評価(不法行為に該当する程度のものか)、③因果関係、④損害額について争うことになります。
一般的には、突然の訴訟ではなく、事前の被害申告がありますので、被害の申告があった場合及び被害が認められた場合の初動を誤ることなく実施し、紛争が深化しないように努めましょう。
セクシャル・ハラスメント(セクハラ)、パワー・ハラスメント(パワハラ)の問題について、詳しくはこちらからどうぞ。