弁護士コラム

トラック運送業者コラム~改善基準について労働問題弁護士が解説

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

弁護士鈴木啓太トラック運送業者であれば、絶対に知っておかなければならない自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、いわゆる改善基準について、労働問題に強い弁護士が解説します。

改善基準は、トラック運転巣の労働条件の改善を図るために、厚生労働大臣告示によって策定されているものです。

改善基準に違反していることが発覚した場合には、是正勧告など行政指導が入ります。

 

拘束時間の規制

時計拘束時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計時間をいいます。

 

1カ月の拘束時間

拘束時間は原則として、1カ月293時間が限度です。

労使協定を締結した場合に限り、320時間まで延長が可能です。

ただし、延長できるのは、1年の内6カ月までで、1年間の拘束時間が3516時間を超えてはいけません。

この労使協定においては、以下の事項を定める必要があります。

労使協定で定める必要がある事項
  • 協定の対象者
  • 1年間について毎月の拘束時間
  • 当該協定の有効期間
  • 協定変更続等

 

1日の拘束時間

1日の拘束時間は、原則として13時間以内です。

延長する場合であっても16時間が限度です。

延長する場合であっても、15時間を超える回数は1週間につき2回が限度となっています。

 

休息期間の規制

くつろぐ休息期間とは、勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいいます。

1日の休息期間は継続8時時間以上が必要です。

すなわち、午後9時に終業した場合であれば、翌朝5時以降でなければ始業することはできません。

 

 

改善基準に違反していないかのチェック方法

監督

 

1カ月の拘束時間

1カ月の拘束時間が改善基準に違反していないかは、1カ月間の各勤務の拘束時間を合計して、293時間(労使協定がある場合は320時間)を超えていないかをチェックします。

 

1日の拘束時間

1日の拘束時間が改善基準に違反していないかの判断は、始業時刻から起算した24時間以内の拘束時間によりチェックしなければなりません。

具体例

月曜日:7時(始業)~ 20時(終業)
火曜日:4時(始業)~ 16時(終業)


上記の場合、月曜日の13時間の拘束時間に加えて、火曜日の4時~7時についても、1日の拘束時間にカウントされるので、拘束時間は16時間となります。

このように、休息期間が短い場合には、翌日の労働時間も前日の拘束時間としてカウントされることから注意しなければなりません。

 

 

休日の取扱いについて

休日休日は、休息期間 + 24時間の連続した時間をいいます。

ただし、この時間が30時間を下回ってはいけません。

そもそも、休息期間を8時間以上取らなければなりませんので、休日といえるには、少なくとも32時間以上連続した時間でなければなりません。

これに達していない場合には、休日として認められません。

 

 

運転時間の限度

1日の運転時間

運転1日の運転時間は、2日(始業から48時間)平均で9時間が限度です。

改善基準違反となる場合

ある日を特定日として、

(特定日の前日の運転時間)+(特定日の運転時間)÷ 2
(特定日の運転時間)+(特定日の翌日の運転時間)÷ 2

上記のいずれもが超える場合に、改善基準違反となります。

具体例

特定日の前日の運転時間:9時間

特定日の運転時間:9時間

特定日の翌日の運転時間:10時間


この場合、特定日と特定日の翌日は、合計19時間運転しており、平均9時間30分ですが、特定日の前日と特定日の平均が9時間に収まっていることから、この特定日は改善基準には違反していないのです。

 

1週間の運転時間

1週間の運転時間は、2週間ごとの平均で44時間が限度です。

 

連続運転時間

連続運転時間は4時間が限度です。

運転開始から4時間以内又は4時間経過直後に運転を中断して、30分以上の休憩を確保しなければなりません。

 

 

特例措置について

分割休息期間

業務上の必要性があり、勤務の終了後継続した8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合は、当分の間、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができるとされています。

一定期間(原則として2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数が限度です。

この場合、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上でなければなりません。

 

2人乗りの特例

運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合においては、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、また、休息期間を4時間まで短縮できます。

ただし、車内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限られます。

 

隔日勤務の特例

業務の必要上やむを得ない場合には、当分の間、以下の条件の下に隔日勤務に就かせることができるとされています。

条件12暦日における拘束時間は21時間を超えないこと

ただし、事業場内仮眠施設または使用者が確保した同種の施設において、夜間に4時間以上の仮眠時間を与える場合には、2週間について3回を限度に、この2暦日における拘束時間を24時間まで延長することができる。

この場合においても、2週間における総拘束時間は126時間を超えることはできない。

条件2勤務時間終了後に継続20時間以上の休息期間を与えること

フェリーに乗船する場合の特例

運転者が勤務の途中でフェリーに乗船する場合があるかと思います。

その場合のフェリー乗船時間については、原則として、休息期間として取り扱うことができます。

これにより、休息期間とされた時間を休息期間8時間(2人乗務の場合4時間、隔日勤務の場合20時間)から減算することができます。

ただし、その場合においても、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ることはできません。

弁護士鈴木啓太以上、改善基準の概要を説明しました。

改善基準の違反が発覚すれば、労働基準監督署から是正勧告を受けることになります。

改善基準に関する相談や労基署対応のご相談は当事務所の労働問題に強い弁護士までご相談ください。

 

 




  

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