トラック運送業コラム~ドライバーの睡眠不足チェックの義務付け
点呼時にドライバーの睡眠不足のチェックが義務付けられることについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正
運行管理者は、運転者がその日初めて乗務しようとするとき及び、1日の乗務を終えたときに点呼を実施しなければなりません。
現状では、酒気帯の有無や疾病・疲労等の状況などを点呼時に確認する必要がありますが、これらに加えて、平成30年6月1日から、ドライバーが「睡眠不足」でないかどうかを確認しなければなりません。
居眠り運転に起因する事故を防止し、運転者の睡眠時間の確保についてバス・タクシー・トラック事業者(以下「事業者」という。)の意識を高めることを目的に旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則が改正され、ドライバーが「睡眠不足」出ないかどうかの確認を要求することとなったのです。
国土交通省の発表する改正の概要は以下のとおりです。
・事業者が乗務員の乗務前等に行う点呼において、報告を求め、確認を行う事項として、睡眠不足により安全な運転をすることができないおそれの有無が追加されます。
・運転者が遵守すべき事項として、睡眠不足により安全な運転をすることができない等のおそれがあるときは、その旨を事業者に申し出ることが追加されます。
こうした改正により、業務開始前の点呼において、ドライバーが睡眠不足で安全な運転ができない可能性を申告した場合には、会社としては、そのドライバーを乗務させることができなくなりました。
会社の対応
会社の対応としては、点呼記録簿を改定する必要があるでしょう。点呼記録簿に新たに睡眠不足のチェック欄を設けるか、疾病や疲労をチェックする欄に睡眠不足のチェックも加えるなどの改定が必要となります。
また、ドライバーが頻繁に睡眠不足で乗務できないのは業務に支障が出ますから、ドライバーに十分な睡眠時間を確保することの意識付けをする必要があります。
会社として、睡眠不足のドライバーは乗務させないこと説明して、それを徹底して運用していくことが大切です。
当然のことながら、十分な睡眠時間をとれないような労働時間になっている場合には、会社としても労務管理を見直し、睡眠時間が確保できるようにしなければなりません。
また、就業規則においても、遵守事項として十分な睡眠をとって職務に臨むこと、懲戒事由として睡眠不足での乗務は懲戒処分をすることなどを明記して、会社全体として意識付けしていくことが重要です。
ドライバーが睡眠不足であるかどうかを判断するのはなかなか容易ではありません。どの程度の睡眠時間を確保すれば十分といえるのかは人によって異なるからです。
したがって、明確な線引きをすることは難しいですが、会社としては、現場のドライバーの意見を聴きつつ、何時間は睡眠時間を確保するというように明確にした方が判断しやすくなるでしょう。
一般的には7~8時間の睡眠時間は確保する必要があると考えれます。