開始まで半年!無期転換ルールへの対策は大丈夫?
無期労働契約への申込権が本格的に発生する平成30年4月まで、いよいよ残り半年となりました。
対策や事前準備はお済みでしょうか?今回のコラムでは、当事務所の弁護士が改正法の内容、対策等を解説します。
改正法の内容を押さえましょう
厚労省は、改正法の認知度を調査するために、常用労働者10人以上を雇用している全国の民間企業3万社に対してアンケートを実施しました。
調査結果よると、9割弱の企業が労働契約法の改正については知っているものの、無期転換ルールの内容については、約半分の企業が知らないという結果でした。
無期転換ルール対策の前提として、まずは改正法の内容を押さえる必要があります。
無期転換ルールとは
有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるというルールです。
これまで半年間、1年間などの契約期間の定めがあった、いわゆる契約社員であっても、契約期間が5年を超えると、申込みによって、契約期間に定めがなくなります。
結果として、正社員と同様、基本的に終身雇用となりますので、労使関係に与える影響は大です。
労働者側としては、いつ雇い止めされるかわからないという不安定な身分から、終身雇用になる安心感が生まれるでしょう。
反対に、企業の方では、業績が悪化した場合の調整弁として機能させていた契約社員の終身雇用化は、固定費の圧迫を招き、大きな負担となる可能性があります。
留意点
制度のポイントとして押さえる点は3つです。
①5年のカウント
まず、この通算5年のカウントは平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象となります。
したがって、例えば、平成25年4月1日に1年間の有期労働契約として雇入れられ、毎年4月1日に更新を繰り返した場合、平成30年4月1日から無期転換申込権が発生します。
②対象労働者
次に、対象となるのは、契約期間に定めがある「有期労働契約」を締結したすべての労働者です。
すなわち、契約社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員などの名称は問いません。
③行使要件
無期転換申込権を労働者の方でいつでも行使することができるわけではありません。それでは、使用者の側も労務管理を行いえないからです。
したがって、法律上は、無期転換申込権が発生することとなる有期労働契約の期間満了時までに申込みをすることを要求しています。
なお、申込みは、口頭で行っても法律上は有効です。
しかし、口頭での申込みは、後日、申込みをしたかどうかの争いが生じやすいという問題がありますので、労働者、使用者双方とも、できるだけ書面で残しておくことをお勧めします。
対策について
有期契約労働者の就労実態を調べる
まず、自社の有期契約労働者、契約期間、更新回数等から無期転換申込権の発生時期や人数などを把握しましょう。
人材戦略の立案
企業が発展していくためには、場当たり的な対策ではなく、中長期的な視点を持って人材戦略を立案することが重要です。
具体的には、自社にとって必要な人財はどのようなものか、そのための採用、育成、評価、報酬をどうすべきか、を経営チームは常に意識しておくべきです。
その上で、契約社員の要否、役割、雇い止めに関するポリシー、無期転換後の活用や待遇などを検討すると良いでしょう。
就業規則の整備
契約社員の役割を明確にした上で、無期転換後の労働条件などの制度設計を行い、それに従って、就業規則を整備(既存の就業規則の改定、新規作成等)しましょう。
なお、無期転換者用の就業規則を作成した場合には、これらの規定の対象となる社員を、正社員の就業規則の対象から除外しておく必要があります。
そのため、正社員の就業規則の見直しも併せて検討しましょう。
運用と改善
契約社員から無期労働契約への転換時には、勤務地の限定がなくなったり、時間外労働が発生するなど、働き方に変化が生じる場合があります。
このため、転換後も、円滑に無期転換が行われているかを把握し、必要に応じて改善を行う必要があります。
5年経過していない場合も注意
無期転換ルールの内容を知っている方は、5年を超えなければ雇止めは問題ないと誤解している方が多くいます。
無期転換ルールは、5年を超える場合の規定です。5年未満については、一定の場合、雇止めが無効となるリスクがあるので注意が必要です(労契法19条)。
当事務所のサポート
当事務所の企業法務チームは、顧問先企業、顧問先社労士等に対して、労務問題のサポートを行っています。
無期転換ルール、雇止めの有効性等について、お気軽にご相談ください。