短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大
平成28年10月1日から、特定適用事業所に勤務する短時間労働者は、新たに厚生年金保険等の適用対象となります。
つまり、企業がパートタイマー等の非正規労働者に対しても厚生年金保険等の負担を負わなければならないケースが出てくることになります。
厚生年金保険等の適用対象が拡大された目的は、増加し続ける非正規労働者の処遇改善、すなわち正規労働者と非正規労働者間の社会保険における「格差」をなくすという点が挙げられます。
また、今後の人口減少社会に備え、特に女性の就業意欲を促進するという点も重要な目的とされています。
適用拡大の対象となるのは、「特定適用事業所」に勤務する「短時間労働者」となりますが、「特定適用事業所」及び「短時間労働者」といえるためにはいくつかの要件があります。
まず、「特定適用事業所」についてご説明します。
「特定適用事業所」とは、同一事業主の適用事業所の厚生年金保険の被保険者数の合計が、1年で6ヶ月以上、500人を超えることが見込まれる企業等になります。
簡単にいうと、適用拡大前の基準で被保険者となる従業員が501人以上の企業が対象となります。
次に、「短時間労働者」についてご説明します。
適用拡大の対象となる「短時間労働者」の要件は以下の4つとなります。
週の所定労働時間が20時間以上であること
「所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべき時間をいいます。
雇用期間が1年以上見込まれること
当該要件は、実際に雇用期間が1年以上の者だけではなく、期間の定めなく雇用される者、雇用期間は1年未満であるが、雇用契約書に契約が更新される旨、又は更新される可能性がある旨明示されている者や同様の雇用契約により雇用された者について更新等により1年以上雇用された実績がある者も含みます。
賃金の月額が8.8万円以上であること
月額8.8万円の算定対象は、基本給及び諸手当で判断しますが、臨時に支払われる賃金(結婚手当等)、1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)、時間外労働・休日労働・深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)、最低賃金法において算入しないことを定める賃金(通勤手当や家族手当等)は算定の対象とはなりません。
学生ではないこと
原則として学生は適用対象外となりますが、例外的に、休学中の者、夜間学部等の者、卒業見込証明書を有する者で、卒業前に就職し、卒業後も引続き同じ事務所に勤務する予定の者は適用対象となります。
以上の要件を充たす場合に、短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用が拡大されることになります。
とはいえ、配偶者の扶養の範囲内で働きたい等の理由により、必ずしも厚生年金保険等の適用拡大を望む短時間労働者ばかりではないことに注意が必要です。
今や短時間労働者も会社にとって重要な戦力となっていることが多く、円満な労使関係を築いていけるよう、まずは労働者に対する新制度の周知及び希望する働き方の再確認をされてみてはいかがでしょうか。