雇用保険法・育児介護休業法の改正

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

雇用保険法・育児介護休業法改正

高齢者のイメージ画像現在、日本では、総人口に占める65歳以上の人口割合は26%(平成26年10月時点)となり、4人に1人以上が65歳以上という高齢化社会を迎えています。

それに伴い40~50代の働き盛りの方々が、自身の両親の介護が必要となり、やむを得ず離職するという、いわゆる介護離職が社会問題化しています。

政府は、介護と仕事を両立できるよう後押しし、介護を原因とする離職を防止するために、平成28年3月28日、雇用保険法、育児・介護休業法を改正し、介護休業制度等の拡充を図りました。

 

 

法改正のポイント

今回の法改正による主な変更事項は下記のとおりです。

①介護休業(通算93日間)を3回まで分割して取得することを可能にする。

②介護休業時の給付金額を休業前賃金の40%から67%へ引き上げる。

③雇用保険料率を1%から0.8%に引き下げる。

④雇用保険加入の年齢制限(現行64歳まで)を撤廃。

⑤同じ企業で1年以上働く非正規労働者の育児休業の取得要件を緩和。

⑥研修など上司や同僚によるマタハラ防止策を事業主に義務付ける。

①、②の変更点は、まさに介護離職の防止を目的としたものです。

これまでも家族1人につき93日間の介護休業を取得することができましたが、原則1回の取得に限られ、分割して取得することができませんでした。このため、介護施設やケアマネージャーとの打合せ等、不定期に単発で休みが必要になるような場合は、有給を使用して対応せざるを得ない状況でした。分割取得を可能にすることで、介護休業を柔軟に取得しやすくし、こうした状況を打破することが狙いです。

また、介護休業中の給付金を引き上げることで労働者が安心して介護休業を取得できるよう改正されました。

 

 

企業としての対応

介護のイメージ画像日本の高齢化は、今後も進行する見通しであり、介護離職問題はさらに顕在化することが予想されます。40~50代の管理職ポストの社員が、介護離職することは企業にとって大きな損失です。

したがって、企業としては、介護休業制度等の公的な支援制度を周知し、かつ、制度を利用しやすい環境を整えるべく相談窓口を設けるなどして、社員の仕事と介護の両立を支援していくことが求められます。

 

 





  

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