管理監督者の元店長から請求された未払い残業代を減額した事例
依頼者:飲食業
解決までの期間:2か月
弁護士に依頼した結果
項目 | 労働者側の請求額 | 弁護士介入による結果 | 減額利益 |
---|---|---|---|
未払い残業代 | 800万円 | 200万円 | -600万円 |
付加金 | 800万円 | 0円 | -800万円 |
状況
V社は、5店舗の飲食店を営む飲食業の会社でした。
そのうちの1店舗で店長を務めていたDさんは、退職後間もなく、V社に対して内容証明郵便を送付して未払い残業代があるとして800万円を請求してきました。
V社は、この通知に対して、支払義務はないと考えて対応していたところ、Dさんより労働審判を申し立てられました。
労働審判の申立書には、それまでDさんが請求していた800万円に加え、付加金として800万円の支払いを求めるとの内容が記載されており、社長自ら対応することは困難と考え、労働審判への対応を弁護士に依頼しました。
弁護士の関わり
労働審判の期日が間近に迫っていたので、裁判所に対して、期日変更の申立てをしました。
このケースでは、幸い期日を1週間ほど延長することができたので、そこから打ち合わせを蜜に行い、勤務状況を示すタイムカードといった資料はもちろん、店長の職務内容やDさんの仕事ぶりについて他の従業員やアルバイトの証言について聴取しました。
事情を聴取したところ、Dさんはタイムカードを手書きで一度にまとめて記載していた可能性が高いことがわかりました。
そこで、第1回期日前に、①Dさんが管理監督者に当たるということ、②店長に支払われる役職手当などの手当てが時間外労働の対価であること、③Dさんが主張する時間外労働はそもそも発生し得ないことを内容とする答弁書を作成し、答弁書と合わせてタイムカードや社長の陳述書といった証拠を準備して提出しました。
その結果、①と②については、認められませんでしたが、タイムカードという客観的な証拠からDさんの主張する時間外労働は認められないという③の主張を審判委員会が取り入れてくれ、それに沿った和解案を提示されました。
和解金は200万円とDさんの請求から80%の減額に成功しました。
補足
会社側は労働審判を申し立てられる立場になりますが、労働審判は通常の訴訟と異なり第1回目が非常に重要です。
労働審判は申立てから第1回の審判まで40日以内に開催されるというルールと相まって、会社側にとっては、非常に準備期間が短くかなりの労力を要します。
審判を申し立てられた場合には、すぐに弁護士に相談すべきです。
労働審判についてはこちらをご覧ください。
また、V社では認められませんでしたが、定額残業代を採用する場合には、いくつか注意点があります。
これを押さえておかなければ、定額残業代としてしはってきた部分も残業代を計算する際の基礎賃金に含まれることになり、かえって会社を苦しめることになります。
定額残業代については、こちらをご確認ください。