固定残業制の従業員から未払い残業代を請求されて減額に成功した事例

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

弁護士に依頼した結果

 

項目 労働者側の請求額 弁護士介入による結果 減額利益
未払い残業代 約700万円 約200万円 500万円

 

状況

E社は警備業を営む会社で、社員が50名以上在籍している会社でした。

ある日、通常どおり仕事をしていたE社のもとに突然弁護士からの書類が届きました。

弁護士からの書類を確認してみると、そこには、1年ほど前に退職した従業員の名前が記載されており、勤務していた頃の未払残業代があるはずだとして未払残業代を請求する旨が書かれていました。

E社としては、警備を行う中で一定の残業が日々生じることを念頭に、固定残業制を採用していました。

そのため、E社は毎月従業員に対して、当該固定残業代を支給しており、元従業員が主張するような未払残業代はないと考えていました。

そこで、E社は当初、相手方の弁護士と面談をするなどして交渉していました。

ところが、急に相手方の弁護士から交渉打ち切りを告げられ、その後まもなく訴訟提起をされました。

届いた訴状に記載されていたのは、未払残業代として約700万円を請求するというもので、驚いたE社は当事務所にご相談に来られました。

 

弁護士の関わり

解説する弁護士のイメージイラスト弁護士が訴状を確認したところ、相手方が残業をしていたとして提出していた証拠は、元従業員が自ら作成していたと主張するメモが中心でした。

そこで、弁護士は争点として2つの点を軸に主張していく方針を立てました。

まず一つが、元従業員がそもそも残業を行っていたのかどうかという点、もう一つが、仮に一定の残業を行っていたとしてE社が支払っていた固定残業代により残業代は精算されているという点です。

方針にしたがって、残業の有無に関しては、そもそもメモが自ら都合のいいように作成できる性質のもので、証拠価値が低いということ、そのメモと他の書類(業務日報)との矛盾している点や具体的な1日の業務内容を説明して、相手方の主張するような残業が発生しえないことを証拠も交えて主張しました。

また、固定残業代については、E社が給与規定において、残業代の対価として手当を支給していること、手当の趣旨と支給額から当該手当が固定残業代として有効なものであるという旨も主張しました。

数回の審理が裁判所においてなされましたが、弁護士がすべて参加し、E社の役員の方には裁判には出席してもらうことなく、弁護士との打ち合わせのみで進めました。

争点整理がひととおり終了したタイミングで裁判所から和解の打診があり、元従業員の請求のうち大半が減額され、最終的に500万円以上減額された約200万円で和解を成立させ、解決に導きました。

 

補足

ビル街退職した従業員からの未払い残業代が認められた場合、利息が年14.6%認められています。

これは昨今の銀行金利からすると、とても高く軽視できません。

つまり、100万円の未払い残業代があると裁判所に判断されれば、利息だけで年間で14万円にも上ります。

したがって、こうしたケースでは、いかに紛争を長期化させないかということもポイントになります。

 





  

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