うつ病休職者の復職について
復職時期の判断基準
うつ病休職者が復職するためには、病状が「治癒」したといえることが必要になります。
「治癒」したと一言に言っても、誰がどのようにして判断するのか、あまりよく知られていません。
そこで、ここでは、「治癒」に関する知識について、ご紹介いたします。
「治癒」とは?
職務・職種が限定されている場合
職務、職種が限定されている場合、治癒とは、「原則として従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したときをいう」とされています。
職務、職種が限定されている場合には、決められた職務、職種を遂行できる程度に能力が回復していない場合には、治癒したとは認めがたいでしょう。
職務・職種が限定されていない場合
職務・職種が限定されていない場合、「従前の業務について完全な労務提供ができなくても、雇用契約における信義則からすれば、使用者はその企業の規模や社員の配置、移動の可能性、職務分担、変更の可能性から能力に応じた職務を分担させる工夫をすべき」であり、「現実に復職可能な勤務場所があり、本人が復職の意思を表明しているにもかかわらず、復職不可とした」判断は誤りであると判示した例があります。
職務・職種が限定されていない場合、休職前の職務・職種だけでなく、他のより軽易な業務への現実的な配置可能性も踏まえて、治癒したか否かは判断されることになります。
うつ病社員の復職に関するQ&Aはこちらをご覧ください。
休職者の復職時期の判断についての注意点
産業医、主治医の意見を聞こう
休職者の病状が治癒したかどうかの最終的な判断するのは使用者です。 しかし、復職時期の判断には「治癒」したかいなかの専門的知識が必要ですので、産業医、主治医の意見を聞くことが重要になります。
産業医、主治医の意見が異なる場合
主治医は、休職者の病状を長期的に見ているため、休職者の病状について詳しく知っていることが期待できる半面、休職者の業務内容や職場環境を必ずしも熟知しているわけではありません。
その点、産業医は、労働安全衛生法上、健康診断の実施、作業環境の維持管理、作業の管理、労働者の健康管理等の職務を行うものとされているため(労働安全衛生法13条、同規則14条)、職場環境を熟知していることが期待できます。しかし、産業医の大多数は外部の医師が委託を受けており、現実には十分活動されているとは言いがたい場面も少なくありません。
いずれの判断を優先させるかは、法律で決められてはいませんので、医師のかかわりあいの程度等、様々な事情を考慮して決定しましょう。
最終的な決定権は使用者にあります
復職時期の判断については、産業医や主治医の見解を参考にしますが、あくまで最終的に決定するのは使用者です。
そのことを前提に、産業医、主治医の意見を熟考したうえで、当該休職者の復職時期を慎重に検討しましょう。