弁護士コラム

トラックドライバーの労働時間に関する法律の規定

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

ドライバートラックドライバーは、その労働の性質上、拘束時間が長時間化しがちです。

しかし、経営者としては、法律で定められた範囲内の労働時間に収まるように労務管理しなければなりません。

そこで、トラックドライバーの労働時間に関する法律の規定について、トラック運送業に特化して活動している弁護士が解説いたします。

一般的な労働者の場合

雇用形態労働基準法32条では、法定労働時間として1週40時間、1日8時間と定められています。

ただし、いわゆる36協定を締結している場合には、この時間を超えて働かせることができます。

もっとも、当然のことながら、延長できる労働時間にも限度があります。

例えば、1週間では15時間まで、1ヶ月間では45時間まで、1年間では360時間までという時間の限定があります。

 

 

トラックドライバーの場合

運送業トラックドライバーの場合には、上記のような36協定の延長時間の限度基準の適用がありません。

しかし、当然のことながら、不当に長時間労働させることは禁止されています。

トラックドライバーの労働時間に関しては、労働省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、「改善基準」)といいます。)により限度が定められています。

この改善基準では、拘束時間と休息期間という概念が登場します。

 

拘束時間とは

始業時間から終業時間までの時間で、労働時間と休憩時間の合計の時間のことです。

休息期間とは

拘束時間から次の拘束時間までの自由時間のことです。

まず、拘束時間の限度について、説明します。

1ヵ月あたりの拘束時間について

時計1ヶ月の拘束時間は原則として293時間です。

ただし、毎月の拘束時間の限度を定める書面による労使協定を締結した場合には、1年のうち6ヶ月までは、1年間の拘束時間が3516時間(293時間 × 12ヶ月)を超えない範囲内において、1ヶ月320時間まで延長することができます。

 

1日の拘束時間と休息期間について

休憩のイメージイラスト1日(始業時間から起算して24時間)の拘束時間は13時間以内が原則であり、延長する場合であっても16時間が限度です。

ただし、1日の休息期間として、継続8時間以上は必要です。

※1日の拘束時間が15時間を超えることができる回数は1週間につき2回が限度です。

 

2人乗務の特例

安全第一運転者が同時に1台の自動車に2人以上が乗務する場合においては、1日最大20時間まで拘束時間を延長することができます。

また、休息期間を4時間まで短縮することができます。

ただし、車両内に身体を伸ばして休息ができる設備があることが必要です。

次に、運転時間の限度についてご説明します。

  1. ① 1日の運転時間は2日(始業時刻から48時間)平均で9時間が限度です。
  2. ② 1週間の運転時間は2週間ごとの平均で44時間が限度です。
  3. ③ 連続運転時間は4時間が限度です。

 

 

働き方改革関連法の影響

裁判や弁護士2018年に成立した働き方改革関連法によって、労基法等の労働法令が改正されました。

すなわち、時間外労働について、基本的には限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間)を超えない時間に限ることとなります。

ただし、「限度時間」の例外規定として、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等によって臨時的に労働時間を延長しなければならない場合については、労働時間を延長して労働させる時間と休日労働させる時間を36協定において定めることができます。

ただし、この延長について、1カ月に100時間未満、1年について720時間未満であること、また、1カ月45時間を超える月数については1年で6ヶ月以内に収める必要があります。

さらに、以下の規定も追加されました(改正労基法36条6項)。

  1. ① 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日について労働時間を延長して労働させた時間が2時間を超えないこと(1号)。
  2. ② 1ヶ月について労働時間を延長した時間と休日労働の時間が100時間未満であること(2号)。
  3. ③ 労使協定で定められた対象期間の初日から1ヶ月ごとに区分した各期間の労働時間及び休日労働時間に、当該各期間の直前1ヶ月、2ヶ月、3カ月、4カ月、5ヶ月の時間外労働及び休日労働を加えたそれぞれの期間における労働時間が、1ヶ月平均で80時間を超えないこと(3号)。

 

 

自動車運転業務についての例外

ただし、自動車運転の業務に関しては、改正労基法が施行された(2019年4月1日)、5年後(2024年4月1日)から、上記労働時間の規制が適用されます。

また、2024年4月1日以降に関しては、適用を受けますが、1年について労働時間を延長して労働させることができる時間の制限は、上記の720時間ではなく、960時間(月平均80時間)を超えない範囲内となります(改正労基法140条)。

ただし、将来的には一般則(上記の年720時間)の適用を目指す旨の規定が設けられているので、今後も改正内容に注目していく必要があります。

さらに、改正労基法36条6項2号及び3号(100時間未満の制限及び複数月の制限)の規制については、適用除外とされ、さらに、労働時間を45時間延長させることができる月数の制限についても適用除外とされています。

運転手以上のようにトラックドライバーの労務管理は、一般の労働者の規制と大きく異なる部分があります。

トラックドライバーの労務管理にお困りの経営者の方は当事務所の弁護士にご相談ください。

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